わたしはもうじき死ぬのかもしれない——。そう悩むほどの贈り物をもらった。しかも、ほぼ同時期に3人から前触れもなく。
「死ぬだなんて、おおげさな!」と冷笑されるかもしれないが、「悔いのない最期だった」と胸を張って言えるであろう、そのくらいわたしにとっては嬉しい出来事だったのだ。
*
(ん?なんだこの膨らみは)
ポストを開けると、「速達」と印字された封筒が入っている。送り主は顧問先からだ。いや、顧問先の事務担当者が個人的に送ってきたものだった。
会社からの郵送物で、明らかに書類ではないものが入っているということは・・・いったいなんだ?まったく想像がつかない。
恐る恐る開封すると、そこには手紙と一緒に飴が入っていた。
プロポリスキャンディ——。飴を舐める習慣のないわたしにとって、なぜこのような飴が送られてきたのか見当もつかないが、手紙を読んで納得した。
「暑中お見舞い申し上げます。(中略)そんな強靭無敵なURABEさんのノドがやられるなんて、一大事じゃ!ってことで、私の超オススメ商品:プロポリスのど飴を送ります。かつてインフルエンザにかかった時、止まらない咳と切れそうな喉の痛みで全然眠れなくて泣きそうだったんですが、不思議とこの飴にめちゃめちゃ救われました。それ以来、私が絶大な信用を寄せる『喉用リーサルウェポン』でございます。」
事務担当の彼女は、「咳が止まらない」と愚痴をこぼすわたしを気遣って、プロポリスエキス入りののど飴を送ってくれたのだ。そんな「まさかのギフト」に、わたしは感謝とともに驚きを隠せなかった。
なぜなら、普段は完全に仕事のやり取りのみなのに、このようにコッソリと「リーサルウェポン」を届けてくれるなどとは、予想だにしないからだ。
——アレルゲンに致命傷を負わせる武器。
(とりあえず、舐めてみるか・・)
*
「駅の隣りの和菓子屋に預けとくから、受け取ってね~」
そう言いながらジムを後にした友人。なにを預けたんだろう?とりあえず、帰りに寄るとしよう。
「あの、友達がなにか預けているみたいなんですが・・・」
そう言いながら「和菓子処・赤坂青野」ののれんをくぐると、控え目に店員に会釈をするわたし。すると一人の女性が、「あ、URABEさんですね」と言いながら、奥から単行本サイズほどの箱を手にして戻って来た。
——冷やしみたらし。なんと、冷たい「みたらし団子」らしい。あんこは嫌いだが、みたらしだんご(厳密には、白いだんご)は大好物であるわたしは、初めてお目にかかる「冷たいだんご」に驚かされた。
「冷蔵庫に入れても硬くならないから、冷やして食べてー!」
どこかで見張っていたかのように、店を出てすぐに食べようとしたわたしの元へ、友人からメッセージが届いた。どうやらタピオカ粉で作られているため、冷やしても硬くはならないらしい。
「URABEといったら餅かだんごか米」といわれるほど、これらの白い粒(粉)を愛してやまないわたし。そんなわたしの好みを覚えていた友人は、夏季限定の冷やしみたらしを、わざわざ店頭に取り置きしてくれたのだ。
——餌付け上手とはまさにこのことか。
(ていうか、老舗和菓子屋が店頭取り置きをしてくれるとは、むしろそれが驚きだ・・)
*
「これ、よかったら食べてー」
ビニール袋に入った何かを手渡された。中を覗くと、なんと果物じゃないか。
バナナ、ネクタリン、ブドウ——。旬八青果店と書かれた袋にゴロゴロと放り込まれた果物たちは、まさに「いま近所の八百屋で買ってきた」かのような様相を呈している。
そしてこれは、なんというかまるで、そう、まるでゴリラのエサだ!
「果物が好きなんだよね?」
その通りである。わたしは毎日、なんらかの果物を食べて生きている。むしろ、カラダの9割は果実でできているといっても過言ではないくらい、大量の果物を摂取しているのである。
しかもこのチョイスときたら、これは絶対に「ゴリラの好物」をイメージしたに違いない。なんせ、大きくて立派なバナナが3本横たわっている時点で、なんとなくゴリラが連想される。
おまけに、受け取る人間がゴリラっぽいのだから、どう考えても恣意的にゴリラに寄せたとしか思えない。
そして案の定、わたしはウホウホと大喜びでバナナを貪り、ピオーネをむしり取り、ネクタリンにかぶりついた。
要するに、手土産に「エサ」を持ってくる友人、それこそが本当にわたしを理解している人間なのである。
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