白金のダブル守護神、佐藤先生×2

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わたしのかかりつけ医というか、体調不良を感じたら真っ先に向かうクリニックがある。その名は白金三光クリニック

そこでは、夫婦なのか姉弟なのか、はたまた偶然同姓なのかは分からないが、佐藤先生というイケメン&イケ女のコンビが待ち構えている。

 

さらに、白金地区を代表するクリニックだけあり、モノトーンのシャレた内装は確実にカフェと勘違いするレベル。

そして診察時は、一人掛けのソファにどっかりと腰掛けた状態で問診を受けるため、患者ではなくオーナーにでもなったかのような優越感に浸ることができる。

むしろ、先生のほうが背筋を伸ばしてきちんと話を聞いてくれるわけで、

「オマエは何しに来たんだ!」

と、己に喝を入れつつこちらも姿勢を正すわけだ。

 

どちらの佐藤先生も白衣は着ていない。鮮やかなカラーのシャツと細身のパンツというカジュアルな服装で、いわゆる病院臭はゼロ。そして電子カルテを入力するキーボードも、マットな質感のオシャレなものを使用している。

そんな、完全に「イマドキ」を網羅している診察室は、もはやリラクゼーションルームといっても過言ではない。

 

患者のわたしは深々とソファにもたれかかると、毎年恒例の咳喘息が始まったことと、周囲の人間から「顔が黄色い」という指摘を受けていることを説明した。

「いえ、顔は黄色くないです。まったく普通です」

話し終わるか終わらないかのタイミングで、真顔の佐藤先生(男)は強く否定した。それほど真っ白な白目を持ちながら、黄疸のわけがありません、と。

そりゃそうだ、わたしだってそんなことは分かっている。だがせっかくの機会だから、健康診断代わりに血液検査のフルコースを実施するのも悪くないと考えたのだ。肝臓だけでなく、腎臓や血糖値、貧血などについてもチェックできたら一石二鳥である。

 

「肝臓が悪いということはないだろうけど、それでも血液検査をしますか?」

と、検査費用を気にする先生に何度も確認されるが、「顔が黄色いこと」と「血液中のクレアチニン濃度が高いと指摘され続けていること」を利用して、内臓の様子をのぞき見しておきたい旨を伝える。

「クレアチニンは、筋肉質な人はどうしても血中濃度が高くなるんですよね」

そう呟きながら、頭のてっぺんからつま先までをまじまじと眺めつつ、先生が静かに諭す。それでも食いつくわたしを見て、やむなく新たな検査項目の提案をしてくれた。

「では、筋肉量の影響を受けないシスタチンを測定しましょう」

(・・おぉ、そんな値があるのか。ぜひともお願いしたい!)

 

先生がカルテを入力する間、場つなぎ的に日頃の食生活について語るわたし。

「暴飲暴食が過ぎるので、糖尿病も心配なんですよね」

するとまた間髪入れずに、

「糖尿病ではないですよ。運動してる人、というか、見た目で分かります」

と、せっせと入力しながら先生は答える。

 

(そういえば、糖尿病患者の病棟看護師にも同じこと言われたな・・)

 

その後わたしは、無事に採血を迎えることとなった。奥の部屋では注射器片手に、ベテラン看護師が待ち構えている。

「素晴らしい血管ですね。あら、こっちの血管でもいいわね」

看護師はウキウキしながら、見事に隆起した極太の血管にブスっと針を刺した。血管径が十分にあるわたしは、仮に経験の浅い看護師であっても、すんなりと刺すことができるのだ。

「もう慣れたけど、怒鳴りつけてくる患者さんは困るわよね」

血を吸い上げる間に、迷惑な患者の話で盛り上がる。患者側が無知な場合、というか自分の体を把握していない場合、己の血管が細かったり硬化していたりするのを棚に上げて、うまく針が刺せない看護師を怒鳴りつけるのだそう。

細くて硬い血管内に注射針を置かなければならないわけで、それが簡単なはずはない。そんなこと、少しイメージすればわかるだろう。それでも「お客さま気取り」の患者さまは、血管を探る看護師を罵倒するのだ。

 

看護師が未熟なため、穿刺が下手である可能性も十分ある。だが採血や注射が毎回うまくいかない人の場合、自分自身の血管に問題(特徴)がないかを知る必要もあるだろう。

やみくもに看護師を責めるのではなく、自らの体について理解することで、より快適な処置を受けられるのだから。

 

 

こうして本日の受診は終了した。やはり、身近なところに信頼できるかかりつけ医がいるというのは、日々の生活の質を安定・向上させる。

「休みなんて要りません。むしろ、患者さんが来なくて暇なときのほうが苦痛ですよ」

まるでワーカホリックのような発言を、屈託のない笑顔でサラッと語る佐藤先生(男)は、紛れもなく白金の守護神といえるだろう。

・・おっと、佐藤先生(女)もいるから、ダブル守護神だ。

 

Illustrated by 希鳳

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