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「ハローワークの知られざる利用方法、みたいなのってある?」
と聞かれ、
「(待ち時間が長いから)建物内で堂々と昼寝ができる」
と答えたが、言った手前ほんとうにできるのか試してみた。
ハローワーク品川は空いていた。
職探しの端末もガラガラ。
(あれ?失業者って思ってるほどいないのかな)
とりあえず、失業給付エリア近くにある平らなソファに座った。
そして、バッグを枕に軽く横になってみた。
すると、
「こんにちは、どちらにご用ですか?」
とすかさず声をかけられた。
失業者が少ないのはいいことだが、人が少なすぎるため、ソファで横になればともてよく目立つ。
よって「ハローワークで昼寝ができる」は、嘘だった。
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私は一応社労士なのだが、勉強不足もあり、職業訓練というものへの知見がなかった。
ただ、職業柄知らないのもマズイだろうと思い、どんな制度か探ることにした。
とりあえず手っ取り早い手段として、失業者のフリをして職業訓練について説明を受けた。
いや、失業者のフリをしなくても、ここには「給付の窓口」か「職業訓練の窓口」しかないため、選択の余地はなかった。
まず職業訓練について、いまどきは「ハロートレーニング」と呼ぶらしい。
ハロートレーニングは、職業能力開発促進法第1条にある、
「(中略)職業に必要な労働者の能力を開発し、及び向上させることを促進し、もつて、職業の安定と労働者の地位の向上を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。」
というところから生まれた制度だ。
このトレーニングは2種類ある。
一つは「公共職業訓練」という、昔からある訓練。
もう一つは「求職者支援訓練」という、新しい訓練。
公共職業訓練は、おもに失業給付を受給している求職者を対象とする訓練だ。
そのため、学校に通いながら失業給付がもらえる、お得な訓練といえる。
東京であれば東京都が実施する訓練を指し、ものづくり系の科目が充実している。
期間も最長2年と長期間にわたって訓練を受けるため、しっかりと技術を習得できるカリキュラムだ。
科目内容を見ると、自動車車体整備、金型加工、インテリア設計施工、グリーンエクステリア、電気工事など職人系のラインナップ。
東京都で人気のある科目だと、和装技術、製くつなどはすぐに満員になるらしい。
(たしかに、靴なんてどうやって作るのか気になる・・)
もう一つの訓練である求職者支援訓練は、国が実施する訓練を指し、公共職業訓練に比べると期間も短く、社会人として必要なスキルや、基礎的なパソコンスキルを学べる科目が中心となっている。
こちらは、おもに失業給付の受給ができない人、または失業給付の受給期間が終わってしまった人を対象にしている。
例を挙げると、ワードエクエルパワポの使い方、Webデザイン、ゲームアプリクリエイター養成など。
ネイリストやエステティシャン養成講座もある。
(就職支援にこんな至れり尽くせりな制度があるとは、知らなかった)
いずれの訓練も、求職者や転職希望者が対象のため、雇用保険被保険者(週20時間以上働いている人)は入校できない。
授業時間も午前9時5分から午後4時45分まで、土日祝日以外は通学しなければならない。
つまり、普通に学校に通うのと同じだ(当たり前)。
とはいうものの、ハローワークの職員はこう言う。
「どれも就職支援の訓練なので、趣味の延長や起業のためではありません。
訓練終了前に就職が決まれば、その時点で退学となります」
そりゃそうだ。
さらに、
「お金をもらいながら学校に通えてラッキー、と思う人は、訓練が終了しても就職できない人がほとんどです。
目的もなく訓練に参加しても、将来にはつながらないでしょうね」
と、厳しくも正しいコメントをいただいた。
これら職業訓練の財源は、雇用保険料(能力開発事業)が充てられている。
訓練を受ける権利は、当然、失業者(求職活動者)にはある。
しかし、そのスキルを使ってどのように就職へとつなげるのかは、本人次第というところ。
もっと言うと、職業訓練など受けなくても就職できることが望ましいわけで。
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「どうですか?興味のある訓練はありますか?」
ニコニコしながら職員が尋ねる。
失業者としてここにいる私は、
「そうですねぇ、板金溶接ですかね」
と答えると、そっと席を離れた。
自営業や会社役員は失業者には当たらないため、職業訓練は残念ながら受講できない。
いつか廃業する日が来たら、板金溶接のコースを受講してみよう。
Illustrated by 希鳳
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