時計好きのわたしとしては、スマートウォッチなどを腕時計とは認めない。あれはCPU搭載のウェアラブルデバイスであり、リストバンド型コンピューターというべきだからだ。
その機能の一つとして「時計」があるだけで、あんなものは腕時計ではない。
そもそも腕時計というのは奥が深い。
わたしの中では、機械式ムーブメントに内臓されたローターの回転により、自動的にゼンマイを巻き上げる「自動巻き腕時計」こそが、腕時計中の腕時計でありキングオブ腕時計である。
しかし最近、街を歩く老いも若いも手首にスマートウォッチを装着しているではないか。
「時間に縛られたくない」などとカッコいいセリフを吐いていた友人までもが、気付けばアップルウォッチを巻いていた。
(なにがそんなに魅力的なんだ――)
値段が高額でわたしには買えないため、アップルウォッチに興味はない。しかしどんな使い方ができるのか気になる部分ではある。
そこで、アップルウォッチを着けている後輩に尋ねたところ、
「スマホで写真を撮るときに便利ですよ」
と教えてくれた。
たとえば友人らと集合写真を撮影する際に、スマホをセットしてから整列する。そしてアップルウォッチに映し出される自分たちを見ながら、フレームに収まっているかを確認してシャッターを押すのだ。
これならば見切れることもなく、安全かつ効率的な写真撮影ができる。
――なるほど、これは便利かもしれない。
アップルウォッチを含む「スマートウォッチ」には、電子決済や電話・LINEの受信通知、音楽再生、GPSなど様々な機能が搭載されている。
その他にも、睡眠状態を計測したり心拍数の変化を捉えて通知してくれたりと、われわれ人間の健康維持に一役買ってくれるらしい。
しかし睡眠中かどうかなど、どうやって判断するのだろうか?
調べてみると、スマートウォッチには「光学式センサー」と「3軸加速度センサー」が搭載されており、これらのセンサーが動きを感知することで、睡眠時か覚醒時かを判断するのだそう。
光学式センサーは、スマートウォッチから発する光を血管に当てて、返ってくる脈波を計測することで心拍数を把握する。一般的に、就寝中の心拍数はゆっくりになるため、体の動きの検出と合わせて睡眠状態かどうかを判断するわけだ。
そしてこの「体の動き」の計測に使われるのが、3軸加速度センサーである。縦・横・高さの3次元の動きを検出することで、運動や睡眠など人間の行動を把握する。
よって、心拍数が安静時よりも低く、かつ、一定時間運動が検出されない場合に「睡眠状態である」と判断されるのだ。
(もはや医療機器レベルの機能じゃないか。こんなにもコンピューターに管理されて、人間の未来は大丈夫なのだろうか・・)
そんな心配はさておき、弁護士でアップルウォッチユーザーの友人が面白い話を聞かせてくれた。
「裁判での尋問中に、アップルウォッチがブルルと振動したんだ。なんだろうと思って画面を見ると『高心拍数の通知』が届いていたんだ。おぉ、熱くなってしまったかと、気持ちを改めたよ」
なるほど――。
仕事熱心な友人は、ついつい尋問で力が入ってしまったのだろう。それを察知したアップルウォッチが、「おい、落ち着けよ」と宥めてくれたのだ。
そういえばTwitterで、
「仕事でミスをして上司に鬼詰めされたとき、心拍数がどんどん上がり、アップルウォッチに『深呼吸してください』という通知が現れ、それを見た上司が叱責を止めた」
という呟きを見たことがある。
このツイートはネタかもしれないが、それでも現実的にありえる状況で面白い。
心拍数の上昇を根拠に「パワハラ」を立証できる時代が来るかもしれないし、何にせよ自分の体に起きている現象を可視化できるのは興味深いことである。
*
かつてピストル射撃の選手だった頃、日本代表の某先輩は心拍数をコントロールできると聞いたことがある。
ということは、彼が競技中にスマートウォッチを装着していても、なんの通知も届かないわけだ。
ところがわたしが同じことをしたら、ブルブル振動しまくりで競技どころの話ではないだろう。あぁ、気になる。試してみたい。
(・・・・スマートウォッチ、ほしいな)
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