アマゾンの犬

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長年、定額制音楽配信サービス「Apple Music」を愛用してきたわたしだが、昨年11月に100円値上がりし、月額1,080円となったことで若干のモヤモヤを感じていた。

値上げの理由は、アーティストへのフィーを上げるためらしい。それは素晴らしいアイディアだし、そうするべきだ。

 

しかし貧乏人にとって、わずか100円の値上げとはいえダメージは大きい。

さらに最近ではYouTubeで音楽を聴くことも多く、わざわざApple Musicを開かなくても事足りるのではないか、と思い始めたのである。

 

Apple Musicのいいところは、ダウンロードした楽曲はオフライン状態で聴くことができる点だ。さらに、スマホで他のアプリを使いながらも、バックグラウンド再生ができる点も魅力である。

たとえばYouTube(無料)の場合、他のアプリを開いたり画面がスリープ状態になると、動画も停止してしまう。そのため、スマホをポケットに入れたまま歩くと、ディスプレイに触れて勝手に操作されてしまうこともあり、危険である上に使いにくいのだ。

 

その点、Apple Musicならばスリープ状態でも楽曲再生ができるので、いつどんな時でも音楽と一緒に行動できるのである。

 

こういったメリットがあるにせよ、ピンポイントで聴きたい曲がApple Musicのラインナップにない場合もある。というか、わたしの好みが特殊なだけかもしれないが、わりと拾えないことが多いのだ。

そうなるとYouTubeしかない。あの手この手でYouTubeを検索すると、高確率でお目当ての楽曲と巡り合うことができる。

ということは、むしろYouTubeプレミアムに課金するべきなのではなかろうか・・・。

 

そんなこんなで本日、わたしは長い付き合いだったApple Musicに別れを告げると同時に、Amazon Musicへと乗り換えたのである。

 

そもそもわたしはAmazonプライム会員のため、Amazonで商品を購入すれば翌日届くし、プライムビデオでアニメや映画も見放題である。

年会費4,900円でこんなお得なサービスが利用できるとは、さすがAmazonといったところ。

 

そしてわたしは、スマホのホーム画面にAmazon Musicのアイコンがあることに気がついたのである。

こんなアプリが存在していたことすら気がつかなかったが、Amazon Musicがあるならば使わない手はない。

サービスの説明を読んでみると、プライム会員ならば無料で利用できると書いてある。ここまで至れり尽くせりでは、Amazon社に足を向けて寝られないではないか。

 

こうしてわたしは、Amazon Musicで楽曲を検索し再生してみた。

 

(プライム会員だから、こういうのも無料で聴けてラッキーだぜ・・)

 

ところが、イントロから曲の後半へスキップしようとした時に異変が起きた。

早送りをしようと、再生中の場所から後半へと丸いマークを引っ張ったにもかかわらず、曲が飛ばないのだ。

不思議に思い、2曲目へ飛ぼうとスキップのマークをタップしてみる。するとこちらは普通に次の曲へと飛んだ。

 

どういう仕組みなのか分からずに、わたしは何度もスキップを繰り返した。するとある時、「スキップの上限を超えました」という通知が現れた。

 

(いったいどういうことだ・・・?)

 

不審に思いネット検索したところ、どうやらプライム会員というだけでは利用制限があるらしい。

たとえば聞き放題の曲数は、Amazon Musicの有料会員ならば9,000万曲であるのに対し、プライム会員の無料利用の場合は200万曲しか聞けない。

さらに曲の早送りはできず、再生に関してもランダム再生のみとのこと。そして曲をスキップする回数も6回/時間までと決まっているようだ。

 

(Apple Musicならば聴けたあの曲が、今はもう聴くことができないなんて・・・)

 

――しまった。本当にしまった。もう少しよく調べてから解約するんだった。

言ってしまえばたかが1,080円じゃないか。それでストレスフリーに好きな曲が自由に聴けるのならば、なにも文句はなかったじゃないか。

わたしは目先の利益に囚われて、大きな損をしてしまったのだ――。

 

しかし、転んでもただでは起きないわたしは、Amazon Music Unlimitedの文字を見逃さなかった。

こちらはなんと9,000万曲のストックがあり、オフライン再生もスキップも無制限に利用できるらしい。つまり、Apple Musicと同じサービスということだ。

しかも料金は、プライム会員ならば月額880円ということで、Apple Musicより200円も安いではないか!!

 

(・・・勝った)

 

わたしは、えもいわれぬ多幸感と勝利に打ちひしがれた。

当初は、ケチった結果が大損失と思われたが、そこからの大どんでん返しで見事な勝利を手にしたのである。

 

こうしてわたしは深夜に一人、いそいそと曲をダウンロードするのであった。

 

Illustrated by 希鳳

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