心が乱れているときは、アニメに限る。なぜなら、どの話も現実離れしているため、アニメを見ている間は二次元の世界にのめり込み、楽しいひと時を過ごすことができるからだ。
「アニメではなく、漫画ではダメなのか?」
無論、ダメである。なぜなら、漫画というのは能動的な側面を持つからだ。イラストを見ながら吹き出しのセリフを読み、コマを進めてページをめくる・・。この作業を延々と繰り返さなければならず、集中すると同時に相当な労力を要するため、読み手側の心身が充実していなければ耐えきれないからだ。
つまり、己の心が乱れているときには、漫画を読むことはできないのである。
それに比べてアニメは、受動的に非現実社会へと誘(いざな)ってくれる点が重宝されている。仕事をしながら、メールを打ちながら、何かをしながらでもアニメを流しておくだけで、勝手にキャラクターが動き、勝手にストーリーを伝えてくれるのだから最高に便利なのだ。
よって、アニメならば画面に集中する必要もなく、ただボーっと聞き流すだけでもある程度の内容は入ってくるため、心ここにあらずでもそれなりに楽しめるから素晴らしいのである。
・・もう少し深掘りすると、ただなんとなく流すならばギャグアニメがいい。ギャグアニメというのは、そのほとんどが一話完結のため、仮に記憶に残らなくとも支障はないからだ。
そしてそのくだらなさからも、しっかり視聴する必要がないというメリットがある。さらに付け加えるならば、長編ギャグアニメがオススメである。なんせ12話程度で終わってしまうと、物足りなさというか寂しさというか、消化不良感を残してしまうからだ。
というわけで、心が乱れているときに流すアニメの代表作といえば、「銀魂(ぎんたま)」である。
江戸の町が舞台であるにもかかわらず、ケータイや宇宙船が登場する珍設定。おまけに主人公は白髪の三白眼で、たまにイケメンの瞬間があるも、そのほとんどを三枚目に費やす無駄遣い。さらに、白米の上に小豆餡をどっさりのせた"宇治銀時丼"を喰らうなど、極度の甘党。極めつけは移動手段が"Vespa(ベスパ)"という、時代背景がめちゃくちゃなところが面白い。
ちなみに、ギャグパートではかなりの確率で下ネタが連発されるので、家族団らんの最中にはあまりオススメできないが、とにかく安定感抜群の面白さ、あるいはくだらなさは、どんな精神状態の人間にも適応する代物といえる。
元はといえば、少年ジャンプで長期連載されていた人気作品。ジャンプ時代に銀魂を読んだことはないが、たまたまNETFLIXに勧められたので、BGM代わりに流してみたのが運の尽き。何日、いや、何週間経っても終わりが見えない泥沼アニメだったわけで。
そんな"SF時代劇コメディーアニメ"を見続ける中で、何度か「しまった!!」と悔いる瞬間があった。
先にも述べたとおり、わたしがギャグアニメを選ぶ理由は「真剣にみる必要がない」「心ここにあらずでもそこそこ楽しめる」「見逃し・聞き逃しがあっても気にならない」などなど、気楽に暇つぶしができる点である。
にもかかわらず、たまーに泣ける回が挟まれると大いに困るのだ。いわゆる"ギャップ"というやつが、なおさら涙を誘うからタチが悪い。なんせ銀魂の登場人物らは、間延びしたギャグ顔と二枚目ビンビンのシリアス顔とを使い分けるため、やろうと思えばいつでもシリアスパートを演じられるのだ。
そして、一風変わった趣味嗜好を持つわたしは、動物やからくりロボットが主人公となる話にめっぽう弱い。くだらない二次元のおとぎ話だとわかっていても、ついつい感情移入してしまい、気が付くとわたしの顔は涙でぐしゃぐしゃになっているのである。
(し、しまった。首が痛い・・・)
いやほんと、ギャグアニメはギャグアニメに徹してもらいたい。こんなにも顔を固定され、これほどまでに心をかき乱されるとは、想像だにしなかった。
わたしはただ、廃れた気持ちを和らげるべく、軽快な笑いで心に潤いを与えようと思っただけだ。そしてその通り、テンポよく笑いの階段をトントンと駆け上がっていたところ、突如、日本海の荒波に突き落とされるかのごとく泣ける話を突きつけられたのでは、さすがに割に合わないではないか——。
*
こうして今日も夜が更け、いつの間にか朝を迎えるのである。
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