クリスマスの翌日

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クリスマスが終わった。

わたしの行動範囲が特殊なのかもしれないが、これといってクリスマスの装いに触れることもなかったここ数日。

コンビニの店員がサンタの格好をさせられているくらいで、ひと昔前のクリスマスイベントに比べると、ずいぶんと大人しくなったものである。

 

そして25日が終わった瞬間に、国内のあらゆる店舗は正月モードへと切り替わる。

この、完全なる洋風から純然たる和風へと早変わりする手際の良さは、ある種のお家芸とでもいおうか。たった一日でこうも見事に切り替わるものかと、毎年驚かされている。

 

しかし、何を隠そうわたしの狙いは、値下げされたクリスマスケーキ一択。

ほとんどの生クリームケーキは製造当日が消費期限となっているため、25日で廃棄処分となる。そのため、夜21時を過ぎたあたりから半額セールが始まるわけだ。

 

だが本日、夜間に外出することのなかったわたしは、値引きされたケーキを購入することができなかった。

クリスマスの唯一の楽しみといえば、これしかないにもかかわらず、半額ケーキを購入する努力を惜しんだことが悔やまれる。

 

もはや26日を迎えてしまったため、コンビニでは残ったケーキを回収し終わっているだろう。いや、そもそも残っていなかったかもしれない。

日本人ならば誰もが、クリスマス当日の夜にケーキが値下がりすることを知っている。そのため、夜な夜なコンビニへ出向いては、たたき売りされているケーキをこぞって買い漁るからだ。

 

ということは、望みはウーバーイーツしかない――。

 

さっそくアプリを開くと、ケーキを売っている店を探す。だが案の定、どこもやっていない。

そりゃそうだ、こんな夜中に営業しているケーキ店など、あるはずもない。

とはいえ、せめてクリスマスから日をまたいだ数時間くらい、廃棄予定のケーキをウーバーイーツで売りさばけばいいじゃないか。少なくともわたしは、4ホールくらいは責任を持って処分するつもりでいるのだから。

 

そんなことを考えながら、この時間でも営業している餃子店を発見し、餃子12個と大盛り炒飯を注文したのであった。

 

 

そういえば、近所にあるマルイチベーグルが、なかなか面白い試みにチャレンジしていた。

その名も「しめベーグル」。

 

食事の〆(シメ)に食べる、デザートベーグルのようなものか?だが見た目からは、そのような要素は感じない。

 

「しめ縄みたいに、ねじってあるベーグルです!」

 

なるほど、その「しめ」か!たしかに、編み込まれたベーグルで丸い輪っかができている。

 

「リースにもなるかなぁ、と思って」

 

・・・これは妙案である。クリスマスまでは葉っぱやベル、リボンの代わりとなる食材をくっ付けておけば、リースとして食卓を彩ることができる。

そして正月に向けては、そこへミカンや紅白水引の代用品を載せておけば、しめ縄として同様のビジュアル効果をもたらす。

 

ベーグルは小麦や全粒粉でできており、色は薄いブラウン。つまり、しめ縄ならばドンピシャなのだ。

だが料理というのは、様々な工夫やアレンジが可能なところに魅力がある。そのため、必ずしも生木や草花のイメージでなくとも、素敵なリースを生み出すことができるのだ。

 

同じ材料を使っていても、季節のイベントにフィットさせれば顧客の手も伸びる。

しかも25日を境に、一瞬で無駄になるクリスマスケーキと比べると、この「しめベーグル」はユニークでエコなアイデアといえる。

 

(人間たるもの、頭をつかわなければな!)

 

そんなことを思いながら、しめベーグルを購入したのであった。

 

Illustrated by 希鳳

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