白いダウンジャケットは、スキー客でも田舎のヤンキーでもなかった

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わたしは今日、いい買い物をした。それは何かというと、日本が誇るファストファッションブランド・ユニクロにて白いダウンジャケットを購入したのである。

個人的には、汚れが目立たない黒色のほうがよかったが、友人に「白が似合ってる」と言われたので、つい調子に乗って白を買ってしまったわけだが、鏡に写るわたしは"オシャレなオネエサン"ではなく、一歩間違えるとスキー場の客に見えなくもなかった。

(いや、きっと気のせいだろう。友人は"似合っている"と言ってくれたのだから、スキーウェアのはずがない・・)

金髪のショートカットでモコモコの白いダウンジャケットを着ていれば、それは田舎のヤンキーかスキー客の確率が高い——。それでもわたしは友人の言葉を信じて、白いダウンを抱えてレジの列へと向かった。

 

冒頭でも触れたが、白いジャケットが厄介なのは汚れが目立ちやすいこと。たった一滴のコーヒーや醤油のシミでも、それだけですべてが台無しになるわけで、そんなことなら返り血を浴びたほうがまだマシである——などと、汚れることに対して微妙に神経質なわたしは、店内を歩きながらふと同じ色合いのダウンジャケットを発見した。——あれ?こっちにも同じものが置いてあるのか?

手に取ってみると、どことなく違うような気もするが、実際には同じ商品である模様。それでもどこか納得がいかないわたしは、二つを並べるとタグに記された商品番号を比較してみた。

(ほとんど同じだが、ここの番号が大きく異なるな・・・え、え、えええ~!!!)

その時、わたしはまさかの"間違い探し"に気づいてしまった。なんと、製品原産地が違ったのだ。最初のダウンジャケットは中国製、そして後から見つけたほうはインドネシア製。これはプリントミスなのか——。

念のため、色違いのジャケットのタグも確認したところ、驚くことに今度は「ベトナム」と記載されているではないか。つまり、このダウンジャケットの製品原産地は中国、インドネシア、ベトナムの三か国なのだ。

 

その後ユニクロのサイトでダウンジャケットについて確認すると、「製品原産地(縫製・編立・組立): 中国、 インドネシア、 ベトナム」と、しっかり紹介されてあった。なるほど、同じ製品だが縫製工場が三か国に分かれているのか。

こうなるとあとは好みの問題である。三つの白いダウンジャケットを見比べるも、寸分違わぬサイズと膨らみをしており、シャッフルされたら確実に分からなくなるレベル。ならば"おやつ大好きインドネシア"を推すしかないだろう——。

 

インドネシアは、男女問わずお菓子が大好きな国民性で有名。会議中は必ずと言っていいほどお菓子が配られたり、近所の人々がパンケーキを分け合ったりと、とにかく間食としてのお菓子が大人気なのだ。そんな素敵な風習に惹かれたわたしは、海外へ移住するならばインドネシアを候補地に挙げよう・・と密かに狙っているのであった。

というようなご縁(?)もあり、わたしはインドネシアで作られた白いダウンジャケットを購入した。あぁ、これでわたしもお菓子仲間——。

 

その後、友人とランチをするべく店を選んでいる最中、ちょっとした不穏な気配を感じたわたしは、最大限の厳戒態勢で構えた。なんせ、カレーやラーメンといった"飛び散ったらとんでもないシミができるジャンル"を選ぼうとしているので、それだけは断固拒否する必要があるからだ。

さらには、火鍋やしゃぶしゃぶといった"汁が跳ねやすい料理"も避けなければならないので、そうなると選ばれる料理の種類が限られてしまう。とはいえ、買ったばかりの真っ白なダウンが、たったの数時間で傷物にされたのではたまったもんじゃないわけで。

 

・・あれこれ候補は挙がったが、最終的には"鶏肉がメインの店"におさまり、なんとか無事に食事をとることができたのである。

 

 

ランチ後の帰り道、わたしは「オシャレな白いダウンジャケットを着ているオネエサン」を演じながら堂々と闊歩していたところ、まさかの"友人の本音"を知ることとなった。

確かに「似合っている」とは言われたものの「かわいい」とは一言も聞いていない。おまけに、「スキーウェアには見えない」と言ってくれたが、だからといって女らしさが際立つとは限らない。そんな友人の一言は「(白いダウンジャケットを着ている人は)ベイマックスみたい」だった。要するに、わたしが「似合っている」のは「ベイマックスみたいに似合っている」の略だったのだ。

 

さらに悲劇は続いた。"白い丸い物体に似ている"と言われてショックを隠せないわたしに向かって、友人はさらなる追い打ちをかけたのだ。

「URABEはどちらかというと、ガンダムに似てるかな」

もはや生き物でもない——いや、ベイマックスも生き物ではないが、それでもロボットというかモビルスーツにまで成り下がってしまったのだ。

そういえば昔、デニム生地のミニスカートを履いていたところ、「実写版のドムだ!」と指をさされたことがある。つまり、あの頃も今も変わらず"モビルスーツ系のフォルム"である・・ということを、正直者の友人によって思い知らされたのである。

 

(まぁいいさ、そういうガッチリしたオンナがいい・・っていう変わり者も、この世にはいるはず)

 

とにもかくにも、一日でも長くこの白さを保つべく「食べ物や食べ方には、細心の注意を払う」と誓ったのであった。

 

Illustrated by 希鳳

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