先日、電子申請した「健康保険被扶養者異動届」が返戻された。
この手続きは、家族分の健康保険証を発行するためのもの。家族の氏名や生年月日、マイナンバー等を入力することで、被扶養者としての審査が行われ、認められれば保険証が発行される仕組みとなっている。
そして今回、なぜ返戻されたのかというと、どうやら被保険者と被扶養者が別居しているらしいのだ。しかし会社から受け取った連絡票には、その事実は記されていなかった。
もしかすると、別居していることを会社へは伝えていなかったのかもしれない。あるいは、同居だが住居を複数所持しており、住民票が別になっているのかもしれない。はたまた住宅ローンの関係で住民票を動かせない、などの理由があるのかもしれない。
いずれにせよ、扶養するくらいだから本人と家族との関係性は悪くはないだろう。
そして、別居の被扶養者異動届を申請する際には、同居の場合とは異なり特別な書類を添付する必要がある。それが「仕送りの事実と仕送り額が確認できる書類」だ。
たとえば「預金通帳の写し」や「現金書留の控え」などを添付することで、別居でもちゃんと扶養しているということを証明するのである。
「公職に就いている関係で住民票は別ですが、近所に住んでいるし普通に毎日会っています。その時に現金を手渡ししています」
このような場合は難しい。客観的に証明する必要があるので、健保組合によっては被扶養者であることを認めない場合もある。
ちなみに協会けんぽの場合は、仕送り額を口座から引き出したことの確認ができれば、現金手交であっても審査を進めてくれる。
とはいえ、実際に多いのは「クレジットカードの家族カード」を使用しているケースだ。
キャッシュレス化が進む現在、生活費を送金するよりもクレカを一枚渡しておくだけで、ほとんどの用事は済ませられるし利用明細も確認できるため便利。
さらにポイントも溜まるとあれば、使わない手はないだろう。
そのうち、PayPayや楽天ペイなどへの送金やポイントの譲渡で、生計維持ができてしまう未来が訪れるかもしれない。そうなると、
「送金先のアカウント名がニックネームだと、被扶養者かどうか確認ができない」
などといったケースも出てきそうだが、キャッシュレス決済が利用できるようになれば、さらに便利な世の中になるのは間違いない。
ちなみに今回の場合、家族カードで生計維持の確認ができそうなため、添付書類に手こずることはなさそう。
しかし被保険者にしてみれば、超プライベートな買い物内容を提出しなければならないわけで、あまり気分のいいものではないだろう。
無論、生活費としていくら使用しているのかが確認できればいいため、その他のショッピングについてはマスキングしてもらって構わない。
とはいえ、そんな手間暇かけてまで、仕送り額を確定させなければならないのか…と、うんざりする気持ちもよくわかるので、なんとも心苦しいのだが。
なお、健康保険協会の被扶養者の収入基準として、別居の被扶養者は「年収130万円未満で、かつ、被保険者からの援助による収入額よりも少ない年収であること」という基準がある。
仮に無収入であれば、仕送りのみで生活しているので問題ない。だが様々なケースを想定して、仕送り額≒家族カードの明細を確認しなければならないのだ。
なぜこのような面倒くさい確認が必要なのかというと、あくまで「被保険者に生計維持されていること」が被扶養者の要件となるからだ。
そのため、もしも自身で収入を得て生活を送ることができるのであれば、あえて被扶養者とならないことは言うまでもない。
いずれにせよ、保険料負担のない「被扶養者」になるためには、水面下で厳しい審査が行われているということを、この機会に知っておいてもらいたい。
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マイナンバーにより税情報と社会保険関係の手続きが紐づけば、いずれ添付書類が不要となる日が来るだろう。
だが、とりあえずの現状における要望として、役所サイドで確認ができる内容については、是非ともそれらを優先してもらいたい。
「申請いただいた性別と、住民票の性別とが異なるので返戻します」
それは明らかに誤記である。
人間を介して連絡票が送られてくるわけで、どこかのタイミングで男が女になってしまったのだろう。あるいは、企業の事務担当者が、名前から女性だと思い込んでしまったのかもしれない。
いずれにせよ、そちらで公的な性別の確認ができるのならば、その内容を「正」として審査してくれればいいじゃないか。
明らかな誤記であっても、修正されることなく返戻するのであれば、いったい何のためのマイナンバー導入だったんだ。
――役所と企業の間で、このような理不尽な仕打ちに耐えながら、毎日ストレスフルに仕事をこなすのが、社労士という仕事の実態なのである。
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