24時間いつでも美味しい、冷凍自販機

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顧問先が歴史的快挙を遂げた。

 

オーナーシェフのロべちゃん(オッサン)は、調理師専門学校を出たわけでも、イタリアで修業を積んだわけでもない。

しかし「食べること」と「美味いものを作ること」にかけては、その辺の料理人よりもよっぽど肥えた舌と探求心、そして再現力を持っている。

 

そんな「食べること大好きおデブちゃん」が、日本初となる自動販売機による冷凍ピッツァの販売を開始した

 

 

冷凍ピッツァは昔からあり、とくに珍しいものではない。

だが街中の自動販売機で冷凍ピッツァが売られているのは、さすがに見たことがないだろう。

 

食べ物の自販機といえば、ニチレイフーズの「ホットメニュー」が記憶に残る。

たこ焼きや焼きおにぎり、フライドポテトが温かい状態でポトンと落ちてくる自販機は、ド田舎のパーキングエリアや深夜の病院など、食うものに困る環境では救世主の輝きを放っていた。

 

だがあの自販機はすでに生産中止となり、次々と撤退しているらしい。美味さよりチープさがウリでよかったのに、非常に残念だ。

 

そんなニチレイフーズに代わり、我が顧問先のピッツェリア(もはやイタリアンレストランといったほうが正しいか)は、冷凍ピッツァ、冷凍パスタ、冷凍豚のピリ辛モツ煮など、10種類のごちそうを自販機で売り始めた。

 

そこで購入した冷凍料理を、自宅でおよそ7分湯煎(ゆせん)することで、出来たてのホヤホヤを味わうことができる。

ピッツァに関しては解凍後、フライパンで軽く炙ると焼きたての香りと歯ごたえがよみがえる。

 

過去の話だが、今回の自販機設置以前に、冷凍の「お試しイタリアン」がいくつか送られてきたことがある。

「料理しなくても、お湯くらい沸かせるでしょ?」

わたしの性格は顧問先にも見破られている。

 

そして届いた料理(豚肉のソテー、トリッパ、イイダコのトマト煮、唐揚げなどなど)を湯煎した結果、パサつきや固さのない、まさに「出来たての状態」が再現された。

 

これには驚いた。

食べ物をレンジで温めると、蒸気で水っぽくなったり、温めすぎると固くなったり、料理の状態としては「最高」とは言い難い場合もある。

 

ところが湯煎した唐揚げの衣は、サクッと歯ごたえが残っている。肉も芯まで熱が届き、ジューシーさが健在。

豚肉のソテーも同じく、店で食べるのと同じクオリティーで肉とソースが絡んでいる。

 

ーーこの時初めて、わたしは「湯煎」という魔法を知ったのだ。

 

とにかくピッツァもイタリアン料理も、レンジを使わずに温めることで、出来たてそのものが再現できる。

とくにピッツァは「必ず」フライパンで熱を加えること。そうすることで、再び小麦に命を吹き込むことができる。

 

嘘だと思うなら、ぜひ試してみてほしい。

 

 

当時、料理人ではなかったロべちゃんが一念発起、ピッツェリアを開きたいと考え始めたのは10年以上前のこと。

 

たまたま実家が精肉店であることから、良質で新鮮な肉をリーズナブルな価格で仕入れられるメリットがあった。

だが、それしか手持ちのカードはなかった。

 

前職の大手イタリアンレストランを退職後、知り合いのピッツェリアなどで修業を積み、地元・川崎で自らの店をオープン。

しかし川崎といっても都会と田舎があり、ロべちゃんの店はいわゆる田舎にある。最寄り駅からバスで30分ほど奥地へ向かわなければならず、わざわざ出向くには不便な場所。

 

そのため、まずは地元に愛される店づくりを心掛けた。とはいうものの、都会と違い田舎は外食文化が盛んではない。

そんな、好条件とは言えない環境下でも色々な取り組みに挑戦し、試行錯誤を繰り返しながら今日までやってきた。

 

もちろんコロナの打撃もモロに受けた。

だがコロナがあったからこそ、日本初の冷凍ピッツァの自販機へとたどり着いた節もある。

 

コロナによる自粛期間中、思い切って店内の改修工事を行った際、業者からこう言われたのだそう。

「冷凍ピッツァが作れるのなら、それを自動販売機で売るのはどうですか?」

自販機メーカ曰く、冷凍ピッツァの自販機は日本初とのこと。

 

内装業者と自販機メーカーの後押しもあり、今回の流れに至ったのだ。

 

ーー日本初というのは価値がある。

 

日本最古の時計台として有名な「札幌時計台」が時を刻み始めたのは、1881年(明治14年)8月12日のこと。

時を同じくして、兵庫県豊岡市にある「辰鼓楼(しんころう)」も、「札幌時計台とともに日本最古の時計台」という謳い文句で観光地として愛されてきた。

 

だが時計設置から140年目の節目の年、時計が動き出した「日にち」を知りたい、と思い立った蕎麦屋の店主がいた。彼は地元の歴史や文化に興味があり、早速調査を開始。

 

その結果、辰鼓楼が動き出したのは、札幌時計台の27日後であることを突き止めてしまったのだ。

 

これにより、辰鼓楼は「日本初」という冠を手放すこととなった。

 

わたし自身、「一位以外は順位としては同じ」と考える派なので、やはり「日本初」というネームバリューは貴重に感じる。

 

 

日本初の「冷凍ピッツァ自販機」を設置したロべちゃん。そこで働くスタッフから喜びの声が届いた。

「今日は朝の7時から、休憩なしで仕込みしてたよー!」

自販機があまりの人気で、仕込みが間に合わないのだそう。それでもコロナ禍でこの忙しさは、働く側にとって嬉しい悲鳴に違いない。

 

社労士のわたしは嬉しさ半分、「休憩時間が確保できないのはまずいからね」と、水を差すような小言を伝える。

ーーまぁ、言葉の綾だろうが。

 

冷凍自販機への今後の期待としては、

「人件費がかからない、それでいて美味しい料理を提供できる」

そんな起爆剤となってくれることを願う。

 

 

PIZZERIA ROBERTINO(ピッツェリア ロベルティーノ)

 

 

Thumbnailed by オリカ

 

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