傭兵×金太郎

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プロ格闘家の友人から、わたし好みのタンクトップをもらった。彼女は身体が立派なため、過去に買った衣服のサイズが合わなくなってしまったのだそう。

「何着ものタンクトップを捨てることになった」と嘆く彼女のSNSを見たわたしが、よかったら譲ってほしいと願い出たことにより、その中から3着のタンクトップを手に入れることができたのだ。

 

友人とわたしは、身長も体重もほぼ同じ。そのため、衣服のシェアは理論上可能である。

とはいえ、彼女のフォルムは常人の(女性の)域を超えているため、わたしの衣服が入らなくても、彼女のものならば着ることができるという、一方通行になりかねない懸念はあるのだが。

 

「オレンジのは小さいから、インナーでしか着られないかも」

 

そう言いながら、紙袋に入ったタンクトップを手渡してくれる友人。だがそのとき、内心、「わたしならアウターとして着れるだろう」と高をくくっていた。

 

そして更衣室へ向かうと、さっそく、もらいたてのお古に袖を通してみた。まずはやはり、お気に入りの模様である迷彩柄のタンクトップだ。

はじめからコレ狙いだったので、いの一番に袋から引っ張り出した。

 

体が汗ばんでいるせいか、タンクトップがきつく感じる。いや、これはタイトなフォルムのタンクトップだから、着るときに丸まってしまうのだ。誰が試したってこうなるはず。

両腕を通したら、最後に裾を引っ張って完成。鏡に映る姿を確認する。

 

(・・・・)

 

思いのほかにわたしは巨乳だったのだろうか。腕を上げると脇が引きつる感じがする。

さらに腕を前後に振ると、脇の部分が皮膚に食い込む感触がある。

 

(着ているうちにフィットしてくるのかもしれない)

 

そうに違いない、と思いながらタンクトップに目を落とすと、どこをどう見てもいい感じに着古してある様子。つまり、これ以上伸びたりフィットしたりすることは、あまり期待できないと思われる。

 

そしてこのタンクトップ、屈強な兵士をイメージするかのような本格的な迷彩柄ではあるが、胸元が大きく開いてセクシーなカットのデザインとなっている。

さらに肩の部分も、一般的なタンクトップよりも細くできており、可愛らしい華奢な女性が着たら「カッコイイ!」「オシャレ!」となるであろう逸品。

そんな、女性らしさを維持するフォルムでできたタンクトップは、なおさら、わたしの肩や脇、背中に食い込むデザインだったのだ。

 

(リュックを背負ったらどうだろう?)

 

露出が多いから逞しく見えるのかもしれない。リュックを背負うことで、肩が大幅に隠れて女性らしさが増すかもしれない。

そう考えたわたしは、パンツ一丁にタンクトップ姿でGREGORYのリュックを背負ってみた。

 

(・・・・)

 

えっと、どこかで見たことがある。誰だっけ誰だっけ…。あ、思い出したぞ!ランボーだ!いや、シルベスター・スタローンか!

 

戦場へ向かう傭兵さながらのわたしが、鏡に映っていたのだ。

ちなみに、装着しているショーツはセクシーなTバックである。自分のパンイチ姿などあまり見ることもないので、電気で煌々と照らされたTバック姿の自分を見て、わたしはものすごい衝撃を受けた。

 

(・・・金太郎?)

 

布面積の少ないセクシーなショーツは、履く人によっては金太郎に見えなくもないということを、身をもって知ったのである。

 

そもそも、更衣室において目にする光景というのは、自分自身の裸や下着姿ではない。むしろ他人のそれらなのである。

故に、自分もああいったフォルムなのだろうと、勝手に脳内変換されていたのだ。

ところが現実は大きく異なっていた。

 

違う、ぜんぜん違う。こんなはずじゃないのに――。

 

とそこへ顔見知りの女子が入って来た。そして、ピタピタのタンクトップを着た金太郎を見るなり、真面目な表情で忌憚のない一言を放った。

 

「それ、サイズ間違ってない?」

 

 

他人になんと言われようが、わたしはわたしのファッションを貫く。それだけである。

 

サムネイル by 希鳳

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2件のコメント

朝から笑わせてくれてありがとうございます🤣🤣その迷彩柄のタンクトップ姿、見たことないのになんかすごい想像できますーしかも銃を構えたりかさんが(笑)

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