デジタルが推進される今、訂正が紙でなければならない理由とは?

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社労士という仕事の中で、10年以上前から思っていることがある。それは「電子申請できる手続きと、できない手続きとの違いについて納得がいかない」ということだ。

単純な申請、たとえば資格取得や喪失などは、早い時期から電子申請の利用ができた。手続きの利用頻度が高いものほど優先されたのだろう。

だがなにげに不便なのは、申請内容の訂正についてだ。

 

社会保険や雇用保険の資格を取得する際に、諸々の必要情報を入力して電子申請事務センターへ送信する。そこで職員らが申請内容をチェックし、処理を進めるというのが一連の流れ。

ここ数年はマイナンバーを入力することで、氏名や生年月日、性別の誤記入や住所の相違など、マイナンバーに登録されている情報と異なる場合は返戻される仕組みになっている。これはこれで飛躍的に進歩したといえる。

 

かつては、クライアントから受け取った情報を元に申請を行うため、その情報に誤りがあったとしても、私にも役所にもわからなかった。そのため、それを信じて申請した結果、

「先生すみません、本人から名前の漢字が違うと言われてしまいまして・・・」

などという残念な連絡をもらうことが度々あった。それが今ではマイナンバーのおかげで、誤った申請内容ならば返戻することで食い止められるようになったのだ。

 

とはいえ私としては、

「申請内容とマイナンバー情報とで齟齬があるならば、マイナンバーに合わせて訂正してくれればいいのに」

などとも思っている。結局、再申請する際にはマイナンバーの内容に合わせるだけ。であればわざわざこちらがそれを直さなくとも、そちらでマイナンバーに合わせてくれればいいのではないか、と思うわけだ。

まぁ役所には役所の考えや方針があるのだろうから、外野がとやかく言っても仕方のないことだが。

 

そして、申請内容に何らかの訂正がある場合には「訂正願」というものを提出しなければならない。一般的には、正誤を入力して送信することで完了しそうなイメージだが、電子申請にその機能は付いていない。

10年以上前からこのことについて疑問視してきた私にとって、その謎はいまだに解けないというわけだ。

 

ではどうやって訂正するのかというと、紙に記入して提出することで訂正される

社会保険の場合、誤った情報を赤字で、正しい情報を黒字で記入して確認資料とともに郵送することで訂正される。

雇用保険の場合、「訂正・取消願」という専用の書式があり、そこに正誤を記入し、確認資料とともに郵送するのだ。

 

雇用保険のように「訂正・取消願」なる様式が存在するのならば、それこそ電子申請できない理由が分からない。お上の都合上、

「新たなフォーマットを作るのが面倒だから」

としか考えられないのだ。

 

さらに社会保険に関しては、もういい加減にアタマを切り替えてもらいたい。資格取得の申請用紙に、赤字で誤った情報を、黒字で正しい情報を記入して提出するなど、何十年前のやり方だろうか。

そんな無駄でカネのかかる方法を何十年も続ける費用を考えたら、電子申請に組み込む予算を付けるほうがよっぽど建設的で価値のある使い方といえる。

ペーパレスだのデジタル化だの言うわりに、思いっきり紙を重視しているのはいったいなぜなのだろうか。

 

「私にもわかりません。私も、このやり方はおかしいなと思っているんで」

 

電話でやり取りをした電子申請事務センターの職員すらも、こう漏らしていた。現場の人間は、これはおかしいし無駄だと気づいているのだ。しかもずいぶん前から!

 

と声を荒げたところで何が変わるわけでもないので、いったん落ち着こう。なぜ私がここまで「訂正や取消」について、電子申請の利用可能を求めるのかというと理由がある。

そもそも訂正や取消をするということは、事実と異なっているということだ。事実と異なるということは、何らかの不都合が発生する可能性があるゆえ、早急に訂正または取消が必要となる。

 

例えば、社会保険の取得の際に報酬額を記入するのだが、その額が間違っていた場合、請求される保険料が違ってくる。本人の賃金あるいは役員報酬から控除される保険料額が違うのだから、やはり早急に訂正する必要があるだろう。

また、資格取得をしたはいいが、その後に取り消したい場合なども急ぐ必要がある。保険料の心配もあるが、それよりも健康保険証の発行や別会社での資格取得との兼ね合いなど、トラブルを回避するためにもすぐさま対応しなければならない。

 

このような申請業務に限らず、世の中で起きる揉め事やトラブルというのは、早急に対処する必要があるのは言うまでもない。

ところがなぜか社会保険や雇用保険の訂正・取消については、郵送や直接窓口へ書類を持参するという、時間もカネもかかる方法しか与えられていないのだ。

重要性から鑑みる優先順位としては、ミスを訂正することは上位にくるはず。それがなぜ、少なくとも10年経っても電子申請できないのか理解に苦しむ。

 

・・・などとぶつくさ文句を垂れながら、月曜日の朝一で年金事務所へ出向く私なのである。

 

サムネイル by 希鳳

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