履歴書など詐称が前提

Pocket

 

「履歴書なんて、いくらでも詐称できるよね」

 

ヘッドハンターの友人との会話。彼女は外資系企業へバイリンガル人材の紹介を行っている。

 

外資系企業のように、

「その人に何ができるのか、これまで何をしてきたのか」

が重要視される土壌では、リファレンスチェックは一般的。

 

優秀な人材を確保したい外資系企業にとって、やりようによっては簡単に詐称できてしまう「履歴書」よりも、共に仕事をしてきた同僚や上司のリアルな言葉こそ、知る意味があり期待する価値がある。

 

だが日本企業でコレをやると、

「疑われているようで心外だ!」

と感じる採用候補者が多く、あまり受け入れられない。

 

ましてやリファレンスチェックは無料ではない。費用をかけてまでその人の過去を探ることに抵抗があるのは、仕方のないことかもしれない。

 

逆に考えると、そのくらい「誰でもいい」とも取れる。

「どうしてもこの人が欲しい!」

というように「個」に惚れたわけではなく、とりあえず大学を出ていて、こういう資格を持っていて、前職が有名企業であれば大丈夫だろう、というなんとも「曖昧な安心感」を抱く日本企業は実際のところ多い。

 

その点、「個」を重視する外資系企業だからこそ、人物像の誤解によるミスマッチがないよう、事前にリファレンスチェックを行う。

 

たしかに、出社するとオフィスのロックが解除されず、おかしいなと思っているところへメールが届き、

「あなたの席はもうありません」

と言われるシビアさは、日本企業にはない。

ないどころか、不当解雇による訴訟の扉が開かれるわけで、絶対にそんなことはできない。

 

外資系企業は人間性を重要視する企業文化といえる。

シビアな反面、人間味あふれる関係性があるからこそ、このような大胆な対応が可能となるのだ。

 

 

しかし経歴というものは、調べないかぎり確かめようがない。

出身校など、卒業証書や卒業証明書がなければ言ったもん勝ち。むしろ、証明書すら捏造してしまえば何とでもなる。

 

さらに裏口入学の場合だと、その大学へ入学できる学力すら証明できないわけで、どこの大学を卒業したのかなど何の意味も持たない。

 

これなら、

「甲子園出場」

「インターハイ、インカレ優勝」

「国体○位」

のほうが客観的に確認ができるし、正当な実力が証明されるだろう。

 

ーーそうだ。これからは学力というくだらないものさしではなく、大会やコンクールの成績、趣味や特技の成果物を提出することで人物評価をするべきだ。

そのほうがよっぽど、正確で偽りのない「その人」が見えるだろう。

 

どうせ仕事でなど、授業で学んだ教科が生きることはない。

言っちゃ悪いが「古文の季語」が、仕事でどう生きるというのか。

 

古文といえば高校の頃、全国模試を受験した際にこのような問題があった。

 

「作者はどちらの方角を向いていたか答えよ」

 

カギとなるのは、「雁(かり)の群が飛んで行った」という記述だ

これは、冬を越した雁が北方のシベリアへ帰っていく習性から、この作者は「北を向いていた」と答えさせたい問題。

 

ところが、わたしは別のヒントに気が付いた。

文中には、「夕日に向かって飛んでいく」「燃えるようなまぶしい夕日」というような記述があった

つまり作者は、西へ沈む夕日を見ながらこの歌を詠んだともとれる。

 

選択肢は東西南北の4択。

明らかに「北」と答えさせたい目論見は理解できる。だが、「夕日がまぶしい」ということは、夕日を直視しているわけで、その夕日に向かって飛んで行ったのならば北を向いていない。

 

わたしは「西」を選択し、マークシートを塗りつぶした。

 

解答速報は当然のごとく「北」となっている。そして予想通り、納得のいかないわたしは猛烈に抗議した。

その結果、この解答に疑義を抱く受験生も多かったようで、最終的には「北」と「西」の2つが正解となった。

 

季語を理解できているかどうかのテストだったようだが、夕日がまぶしいのならば西を向いているし、夕日に向かって飛んで行ったのならば、西と考えるのが妥当。

 

こんなところで2点を左右されるようなテストで、その人の何がわかるというのか。

 

 

というわけで、履歴書だの職務経歴書だの、そんな詐称可能な書類にこだわる意味がわからない。

 

そんな物より自分の直感を信じろ。

己の嗅覚で正解を引きずり出せ。

 

自社の社員というものは、人間で例えれば内臓や手足と同じ存在。それを、履歴書と一瞬の面接のみでどうにかしようとするなど、怠惰と呼ばずしてなんと呼ぶ。

 

「自分ごと」として捉えるならば、もっと動物的本能に頼るべきだ。

 

ということで、そろそろオリンピックの中継に戻るとしよう。

 

 

Illustrated by 希鳳

 

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です