被疑者

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昨夜、自宅から1分の距離にある、地下鉄・白金高輪駅で「硫酸ぶっかけ事件」が起きた。

 

今現在犯人は逃走中。そのため、ターゲットを特定した計画的な犯行なのか、はたまた無差別テロ的なものなのかはハッキリしない。

だが防犯カメラの様子から、被害者男性の後ろをマークする映像があり、もしかすると男性は狙われていたのかもしれない。

 

全治6か月のやけどを負った男性は救急搬送される際に、

「目が見えない」

と訴えていた様子。想像するだけで背筋が寒くなり、恐怖と怒りが込み上げる。

 

このショッキングな事件は、大げさに言えば「テロ」、控えめに言っても「凶悪な傷害事件」に分類されるのではなかろうか。

 

犯人は右手にゴム手袋のようなものをはめており、用意周到に犯行に及んだことがうかがえる。

だがニュースはコロナとパラリンピックが中心で、関東圏外の人などこの事件を知る由もない。ウチの両親もこのことを知らない様子。

(これについては余計な心配をされずに済んでよかったのだが)

 

犯人は未だに捕まっていない。もし犯人のカバンに大量の硫酸が潜んでいたら、再び同様の事件を起こす可能性だって否定できない。

 

そんな緊迫した状況にもかかわらず、近所の公園からは子どもたちのはしゃぐ声が聞こえる。

 

(あれ?これって、わりと危険な状況じゃないの?)

 

とはいえSNS上では、

「フジロック参加者、コロナ陽性者なし」

「創価学会に激震、公明党議員事務所へ家宅捜索の先は、小池百合子か?」

「尾身茂・新型コロナウイルス感染症対策分科会会長の発言」

などなど、硫酸事件は「りゅ」の字も出てこない。

 

もちろん、トレンドに上がっているこれらのニュースが重要ではないとは言わない。

だがもしこの硫酸事件がテロだとしたら、国家を震撼させる事件につながらないとも言い切れない。さらには模倣犯が現れたりすれば、とてもじゃないが平穏な日常は保たれない。

 

自宅からわずか数百メートルで起きたこの事件、地域の安全のためにもわたしが一肌脱ぐしかないーー。

 

アシッドアタック対策を練っていたところ、複数の友人からLINEが届いた。

 

「30代から50代の男性って言われてるよ」

「小太りの男性って、小柄って書こうとして間違えたんかね?」

「振り向くな!真っすぐ走れ」

「性別、ウソついてたの?」

 

事件を茶化すわけではないが、友人らは犯人をどうやら勘違いしている様子。

まぁそれでも事件を知り、気にかけてくれる姿には感謝するしかない。

 

そんな友人らの期待に応えるべく、わたしは返信をした。

 

「いま、必死に逃げてる」

 

 

最近の気になる出来事といえば、新宿区と文京区の一部でガスの供給が停止しており、日常生活に支障が出ているというニュース。

同区内に住む友人は風呂に困り、毎日ジムへやって来る。

 

女子たるもの、身を守るためには強くなければならないし、モテるためには清潔を保たなければならない。

毎日格闘技の練習をし、練習後にシャワーを浴びてサッパリする。

ーーどうやら最高のルーティンが出来上がったようだ。

 

地域住民だけでなく、飲食店などもガスが使えないことで影響を受けている。そのため東京ガスは、ガスコンロの貸し出しやカップラーメンの配給を実施しているとのこと。

 

わたしはたまたま、ガス停止のせいで影響を受けている友人がいるため、それらの情報を詳しく知ることができた。

だがもし彼女がいなければ、新宿区と文京区がここまで大変なことになっているとは、気がつかなかったかもしれない。

 

もはや「情報」というものは、自ら探しに行き、手に入れる時代なのだ。

 

流れてくるニュースを眺めているだけでは、リアルな世界で何が起きているのかを知ることはできない。

いよいよ重い腰を上げて、自らの意思で動く時代の到来だ。

 

 

「アタシはねぇ、逆かなーって思った」

突如、友人が話し出す。

「硫酸かけなきゃ(URABEに)やられる!って思った相手に硫酸をかけられる側だから、犯人は(URABEとは)別にいると思ったんだよね」

 

なんの話かといえば、冒頭の硫酸事件の犯人の話だ。

この友人は、「硫酸の犯人はわたしではない」と感じていた。なぜなら、わたしは硫酸をかけるよりも力でどうにかするタイプだから、やられた相手がその復讐として硫酸をかけたのならば納得できる、と分析したらしい。

 

まぁどんなシチュエーションでも、わたしを思い出してくれたことには感謝だ。

 

何はともあれ、早期の犯人逮捕を願う。

 

 

サムネイル by 希鳳

 

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