初期アイコンが次々とイラストに置き換わっていくフォロワー欄が壮観 URABE/著

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俺は親が金持ちのボンボンだ。これといってすることもないから、毎日ネットゲームで暇をつぶしている。もうじき37歳になるが、さすがにこのままではつまらない人生なので、世間をあおって扇動するような、そんな楽しいことを企ているところだ。

 

人々を洗脳するにはSNSが手っ取り早いだろう。そういえばこないだFacebookとInstagramがシステム障害で落ちてたな。ならばツイッターで種まきするか――。

 

こうして俺はツイッターを始めた。だが現実的に友達の少ない俺は、SNSでどうやってフォロワーを増やせばいいのかわからない。そこでネット検索したところ、どうやらフォロワーは金で買うものらしい。

(そんな簡単なやり方だったのか…)

それにしてもフォロワー販売業者がやたらと多くて、どこで買ったらいいのか迷う。同じ人数を買ったとしても金額にものすごい開きがある。

たとえばあるサイトで外国人フォロワーを一万人買うと4万円で済む。だが別のサイトで日本人フォロワーを一万人買うと、なんと55万円もする。

 

冷静に考えると、こんな方法でフォロワーを増やしたところで、その先になにがあるというんだ。見栄を張ったとて、ビジネスにもつながらず収益化できないのなら、こんな贅沢な散財は金持ちの道楽でしかないだろう。

 

――そうか!俺のような上級国民をターゲットとしたビジネスか

 

ピンときた俺は、金に物を言わせて一気に100万人の日本人フォロワーを購入してやった。総額5,500万円の出費だが、親の金だし痛くも痒くもない。

 

さてと、何を投稿しようかな。

 

 

木亥

火暴

弓単

 

…よし、まずはこんなところだろう。ツイッターなんてやったことないから、なにをツイートすればいいのかわからない。とりあえずはクサチュー文字でお手並み拝見としよう。

なんせ俺には100万人のフォロワーがいるからな。追加で「いいね」と「リツイート」も購入したから、どんなくだらないツイートでもめちゃくちゃ反応があるはず。

人生は本当に金なんだとつくづく思うよ。

 

 

大地震が関東を直撃する日が近い。

好奇心旺盛な若者よ、いまこそ集え!

きみからのDMを、待ってるぞ。

 

…うん、いいだろう。不安を煽るようなオカルトチックな内容も交えてツイートしていこう。

嘘でもデマでもなんでもいいんだ。なんせ俺には100万人のフォロワーがいて、いいねとリツイートが自動で行われるんだからな。いわば無敵だ!

 

 

俺は陰謀論者ではない。システムの開発研究をしな

がら重大な秘密を知ってしまっただけだ。千葉県

君津市にある国立研究所で、国防にかかわるDB

を構築中に、海外のテロ組織から攻撃を受けた。

守秘義務があるので詳細は言えないが、中東のあ

る組織に、極秘情報を引き出されてしまったのだ。

 

…よしよし。臨場感あふれるリークになった。国立研究所の職員がリークしたとなれば、単純な日本人はすぐに扇動されるだろう。

さぁ100万人のフォロワーたちよ、今こそ内部告発を世界中へばらまくのだ!

 

 

最近、私のツイッターがおかしな動きをする。ツイッターといっても捨て垢だからどうでもいいんだけど、多分、フォロワー販売業者に勝手に売られたんだと思う。

周りの友達に聞いたところ、私が使ってる海外製のSNS管理ソフトの規約に、「あなたのアカウントをフォロワーとして提供することがある」とか書いてあるらしい。日本語じゃないから読まなかったんだけど、ソフトの使い勝手もいいし、捨て垢が売られていることは黙認してる感じ。

 

いくつかのアカウントを勝手にフォローしてるけど、どれもダミーのフォロワーばかり。まるで本物のように見えるアカウントも、ツイートの内容がすべてリツイートだったり、投稿している画像が使い回しだったり、よく見れば架空アカだとすぐにわかる。

そのうちの一つに、私の捨て垢が紛れ込んでるってわけ。

 

それで最近、勝手にフォローし始めた変なアカウントがあるんだけど、こいつのツイートが思いのほか秀逸で驚いてる。フォロワー100万人ってまずありえない人数なんだけど、そのうちの一人が私であるのも事実なので、たまにチェックしてたの。

たとえば昨日の投稿はこんな感じ。

 

仕事と割り切って作業を進めるがさすがにキツイ。

事務員のありがたさを身をもって知る。こんな仕事

を文句も言わずに黙々とこなしてくれた〇〇さん、

楽な仕事でいいな!とバカにしてすまなかった。忙

しい時期も丁寧に記帳を教えてくれたのに、それら

も忘れて俺は、〇〇さんをひどく邪険に扱った。も

う退職してしまったが、申し訳なさでいっぱいだ。

 

そして今日はこれだった。

 

明け方まで働いた俺は、会社の不正を発見した。

日曜にもかかわらず会食をした領収書がある。しか

も経理部長の××の領収書だ。だがこの日××は

生牡蠣の食べ放題に行き食中毒になった。それをい

きなり「取引先との会食」とは。国税に通報してや

ろう。これで××もこの会社も終わりだ。

 

このアカウントの主がツイッターを始めて2か月ほど経つけど、もしこれがわざとじゃないならば、超人的な天然、いや天才としか思えない。

私はこいつが誰なのか、どんな奴なのか興味を持ったわ。そして何の目的でこういうツイートを続けるのか、この先どこを目指しているのか、ぜひとも尋ねてみたい衝動に駆られたのよね。

 

そして今日、私の本アカでもこいつをフォローしたの。そのついでにフォロワーの確認をして驚いたわ。こいつが金で買った捨て垢よりも、金で買ってない「生きたアカウント」の方が増えていたのよ!

画面をスクロールすると、先月まではほとんどが初期アイコンだったのに、今日はカラフルなイラストやリアルなアイコンで埋めつくされていてビックリ。

 

他のフォロワーがどういう理由でこいつをフォローしたのかは知らないけど、虚構の存在(フォロワー)を大枚はたいて買い集めた「カスツイッター」だったのが、今では血の通う生きたフォロワーがズラリと並ぶまでに進化したわけで、興味をそそられないはずがない。

そんな非現実的な面白さを、リアルタイムで見せてもらったのよね。

 

あ、こいつのツイートのどこが秀逸なのかって?

それは、一文字目を縦読みすれば分かるわよ。

 

 

(了)

 

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