顔認証システムが本人だと認めてくれない件

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スマホの便利機能の一つとして"顔認証システム"が挙げられる。

「他人にスマホを奪われる」などの万が一の事態に備えて、6桁のパスコードを設定しているのだが、それを毎回入力するのは非常に面倒くさい。そこへきて、顔認証によるロック解除は手軽で確実で便利である。なんせ、画面に顔をかざすだけでパッとホーム画面が開くわけで、そのスムーズさはむしろ快感に近いものがある。

 

たとえ、この機能を利用するために己の顔面情報をApple社へ献上することとなったとしても、わたし如き小市民が与える影響力などゼロに等しいわけで、危惧する必要はない・・というわけで、スマホを使うたびに顔認証によりロック解除を行うわたしだが、ここ最近どうもうまくいかないのである。

 

 

(・・・なんでだよ)

iPhoneにはFace IDなる顔認証システムが搭載されている。自身の顔面を様々な角度から撮影し、デバイスに記憶させることで利用できるのだ。

おまけに、現代人の生活習慣をよく理解しているな・・と感心するのは、メガネ着用時の顔を登録できる点である。日中はコンタクトで過ごし、帰宅したらメガネに変えるわたしにとって、しかもメガネの度数が二桁を超える強度近視の人間にとって、普段の顔とメガネの顔との差は凄まじい。近所のスタバの店員ですら「似ている人が来たな・・と思ったら!」と、あっさり勘違いされるほど。

だからこそ、このメガネ顔を登録できる機能は非常にありがたいのだ。おまけに、何本もメガネを追加登録することができるため、奇抜なフレームのラインナップであるわたしは殊に助かっているのである。

 

それなのに、牛乳瓶の底のようなレンズがずり落ちていると、iPhoneはわたしをわたしだと認めてくれない。そりゃ確かに、分厚いレンズのせいで目玉は小さくこじんまりとしており、顔の幅もドット絵のようにグンと削られている。普通にとらえればこんな人間は存在しないが、これこそが強度近視のありのままの姿なわけで——。

そこで仕方なくメガネを持ち上げると、再度、顔認証に挑む・・・今度は解除できた。

 

さらに、メガネのまま横になりながらロック解除を試みると、これもかなりの確率で拒否されるのだ。どこをどう見たって"怠惰で無精なわたし"に違いないのだが、iPhoneはそんなわたしを許さない。

加えて面倒なのは、消灯した状態でスマホを開こうとすると、暗さのせいか顔面の確認ができないことだ。時間を見るだけならばロック解除の必要はないが、スマホをいじるならばパスコードを入力しなければならず、「暗視カメラの機能はないんか!」と、突っ込みたくなるわけで。

 

そして今日、新たな「拒否」のパターンを発見した。それは、鼻にティッシュを突っ込んだまま、顔認証を受けることだった。

 

辛い料理を食べた後、ヒトは鼻水が出やすくなる。そんなわけで、ピリ辛のタイ料理を食べたわたしは、汗をかきながら鼻水を垂らしていた。ズルズルとすするのもアレなので、手っ取り早く止水するべく右の鼻の穴にティッシュを突っ込んだ状態で、調べ物をしようとスマホを手に取った。ところが——

(なんで認めてくれないんだよ・・)

たかが片方の鼻の穴にティッシュを突っ込んでいるだけなのに、そんなことすら判断できないのか!・・とツッコみ(ダジャレではない)たくなるほど、iPhoneはわたしを拒否し続けた。あげくの果てには、Face IDは使用できないのでパスコードで解除しろ・・と一蹴さる始末。

 

ということは、サンタクロースのような立派な髭を蓄えた人がそれを剃ったり、顔面を負傷してガーゼを貼りつけていたりすれば、iPhoneは本人だと認めてくれないのだろうか。それはそれで不便というか——。

念のため、アップル社のサポートページを開いたところ、

「顔いっぱいに生えていた髭を剃ったなど、外見が大幅に変わった場合は、パスコードで本人確認をしてから顔のデータを更新します。」

「さらに、屋内でも屋外でも、たとえ真っ暗な中でも使えます。」

と書かれているではないか。鼻に突っ込んだティッシュの件は置いておいて、度の強いメガネで目が小さくなったせいで認証されなかったり、真っ暗なところで顔認証されなかったりした、アレはいったいどういうことなんだ?!

 

 

日常生活におけるわたしの顔面の変化について、なぜかiPhoneがデータ更新をしてくれない謎は、解決の糸口を見つけられぬままなのである。

 

Illustrated by 希鳳

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