友人が「手作りの布製品をネット販売している」と聞き、早速サイトを覗いてみた。「手作りの布製品」じゃダサいが、「ハンドメイドのベビー・キッズアイテム」というと、急にシャレた感じがするから不思議だ。友人のためにも後者でいこう。
ショップの名前は「HUGMEPLUS(ハグミープラス)。このかわいらしい名前の由来は、
「赤ちゃんの頃に抱っこされた温もりを、また思い出してもらえるようなアイテムを届けたい。そこへプラスして、毎日にちょっとしたワクワクが加わればいいな、っていう願いを込めて」
という、素晴らしい想いの詰まったネーミングセンスだ。
サイトでは、赤ちゃんや子ども向けのハンドメイドグッズを販売しているが、なかでも着目すべきは「通園グッズ」というカテゴリー。幼稚園バッグや上履き袋、お着替え袋などを豊富なラインナップで取り揃えている。
バッグを作る暇がなかったり、裁縫が苦手だったり、あるいはミシンを持っていなかったりと、現代を生きる多忙なママたちにとったら、「神のご加護」といっても過言ではないほどのありがたさだろう。
さらにオリジナル商品として「手ピカジェルホルダー」なるものも販売している。これは友人が試行錯誤を繰り返して完成した、手ピカジェルだけが入る専用ホルダー。コロナ禍だからこそ、のアイデア商品かもしれない。
彼女のサイトで販売しているものは、ほとんどがベビーやキッズのためのアイテム。子ども用のちっちゃなマスクにおむつポーチなど、小さな子どもを抱えるママにとったらどれも魅力的な商品ばかり。
そんな、ある意味「ニッチ」な分野に目をつけて、全国のママ・マーケットを開拓してきた友人は本当にスゴいと思う。
その時わたしは、ふと自分の中学時代を思い出したのだった。
*
中学何年生かの頃。
家庭科の授業で「ミシンを使ってエプロンを縫う」という授業があった。わたしはできれば男子が受けている技術系の授業がよかったが、その当時は選択の余地などなく、女子は裁縫や料理を強制された。
もちろん、そんなものを作るはずもないわたしは隣りのクラスの友達に金を払い、わたしの分のエプロンを縫ってもらった。
友達は、自宅にある高度な技術が組み込まれたミシンを使い、それはそれは立派なエプロンを作りあげた。その出来栄えに満足したわたしは、意気揚々と家庭科の先生にエプロンを提出したのだった。
するとその日の放課後、家庭科のババァ、いや先生に呼び出された。ーーまさか、友達に頼んだのがバレたのか?
「URABEさん。あ、あなた・・・」
そう言うと、ババァは言葉に詰まった。心臓発作か?と心配したとき、
「あなた、やればできるじゃないの!こんなにも素晴らしい作品が作れるなんて、先生、あなたのこと不真面目でやる気のない生徒だと勘違いしていたわ。心の底から謝るから、どうか許してちょうだい!」
そう言うと、オイオイと泣き始めた。
ーーまぁまぁ先生、そんなに泣かないで。誰にでも勘違いはあるんだから、許してあげるから気にしないで。さぁ、涙をお拭きなさいよ。
*
高校2年生の頃。
これまた家庭科の授業で、今度はキュロットパンツ(ふわっとした短パン)を作らされるハメに。いつものごとく誰かを買収しようと試みたが、いかんせん時期が悪かった。提出期限は明日なのに、徹夜でキュロットパンツを作ってくれる殊勝な友などいない。
そこで部活の先輩に相談したところ、
「あ、じゃあアタシが作ったやつ貸してあげるよ」
という、なんともナイスな提案があった。さすがだ。持つべき友は機転の利く先輩に限る。
翌日。先輩から受け取ったパンツは実に見事な出来だった。
(あの人、見た目によらず縫い物とか得意だったんだ・・)
そしてわたしは、提出期限ギリギリで課題をクリアした。
その日の放課後、家庭科の先生に呼び出された。ーーそういえば、こんなこと過去にもあったな。などと思いながらも職員室へ入ると、
「あなた、これ3年の××さんの作品でしょう」
なんと、見事にその先輩の名前を言い当てたのだ。ーーどういうことだ?名前でも書いてあったのか??
「彼女の作品ね、あまりに素晴らしかったからよ~く覚えていたのよ。こんなにキチンと作れる生徒は、ここ数年見たことなかったからね」
ーーしまった。もっと無難な先輩を選ぶべきだった。
*
あの頃、冒頭の友人のショップがあれば、わたしは先生に怒られずに済んだだろう。時代に翻弄された、というわけだ。
サムネイル by 希鳳
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