家政婦は見た目!

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本日はVIOのお手入れをした。施術者は友人・鹿の子(かのこ、仮名)。

鹿の子はポーカーフェイスゆえ、どんな気持ちでわたしのVIOと向き合っているのかを知るのは難しい。ただ毎回黙々と、毛穴に向かって光を当て続けている。

 

わたしが思う鹿の子の持ち味というか、ここが売り!という点がある。それは、「見るからに口が堅そうな顔」をしていることだ。

その顔のどこが売りなんだ!と侮(あなど)るなかれ。瞬間的に「この人は信用できる」と思わせる顔つきは、持って生まれた才能といえる。

よって、普段見せびらかすことのない股間ですら、惜しげもなく開放できるのだ。

 

しかし、よくよく考えると「口が堅そうな顔」や「口が軽そうな顔」というのは、ナイとは言わないが表現としては馴染みが薄い。実際に会話をしてみると、

「こいつ口軽いな」

と感じることはあるが、見た目だけでの判断は難しい。そして、

「口が軽そうな顔だけど、実際は口が堅い」

という人が居たとすると、濡れ衣というか冤罪というか、必要以上に損な役回りでかわいそうだ。

 

鹿の子はいくつかの仕事を持っている。脱毛の施術のほかにハンドメイドアクセサリーの販売、オフィス用品の企業配送、最近では家事代行サービスもこなす、リアルキャリアウーマン。

10代で出産・育児を経験した彼女は、主婦業のスペシャリストでもある。その息子も成人を迎え、今は人生の第二ラウンドをスタートさせたところ。

 

そんな彼女を見ていてふと思うことがある。

一流大学を出て大手企業に就職し、順調に昇進する男性陣がいたとする。そんな彼らが鹿の子と入れ替わったら、それぞれの結果は果たしてどうなるかーー。

 

鹿の子は企業の仕事もそつなくこなすはず。むしろ男性陣のほうが、鹿の子の代わりは務まらないだろう。

上司がいるわけでもない、予算を増額補正されることもない、それでいて仕事(家事・育児)の締め切りは毎日、という過酷な条件下で孤軍奮闘するシングルマザー。

この任務に対して、出身大学だの勤務先の規模だのは、まったく影響しないからだ。

 

鹿の子は言う。

「アタシは大学も出てないし、頭もよくないから」

それは大きな誤りだし、彼女にそう思わせてしまう社会の仕組みや教育制度が間違っている。

 

ある時は股間の毛胞めがけて光を照射し、またある時は小さな体を駆使して40キロの荷物を運び、帰宅すれば食事に洗濯にペットのお世話。朝が来れば契約先の家を掃除・片付け、食事を用意して去る。空いた時間を見つけてはアクセサリーを作成し、SNSで発信。

ーーこれほどの多岐にわたる業務を、日々こなす人の頭が悪いはずがない。

 

ちなみにこのマルチタスクな処理方法は、主婦が持つ特殊能力ともいえる。なぜなら、家事に育児に追われる主婦は、短時間で成果を生み出す能力に長けているからだ。

 

さらにはママ友にはじまり保育園、小学校、塾といった社会生活における他人との付き合いも、人見知りだのなんだの言ってられない。

そんな未踏の境地へ突き飛ばされたあげく、すぐさま順応を求められるママたち。しかしこの試練を乗り越えなければ子どもが置いていかれるわけで、避けては通れない。

お受験、PTA、生活費の工面、各種ハラスメント、育児ノイローゼ・・・。それでも主婦は子どものため、家庭のために歩き続ける。

 

このたくましさ、学校教育で培えるものだろうか?

 

大学を出ていないことで引け目を感じることなどないし、人の価値をそんなものでしか量れない社会や文化だとしたら、それこそがクソだ。

 

これからの時代に必要なことは「わたしは何ができる」という、明確な自分=商品価値のプレゼン(提示)。どこの有名大学を出ようがどこの大企業で役職に就こうが、そんなものは一ミリの価値もない。

「人の褌(ふんどし)で相撲を取る」とまでは言わないが、誰かや何かにぶら下がって生きるのではなく、自らの能力で稼ぐ時代はもう目の前に来ている。そんなとき、鹿の子の「能力」には高い商品価値があると睨む。

 

一括りに日本というと語弊があるが、

「一つのことを続けた人こそが素晴らしい」

という固定観念に近い文化を、この国にいると感じる。もちろん長く続けることに価値はあるし、それこそが才能だと思う。

しかし、人の能力は一つではない。

アスリートが競技だけでしか能力を発揮できないとは限らないし、主婦や学生だから経営者に向かないなんてこともない。

 

よって、既存の型に押し込んだり、学歴という隠れ蓑に左右されない眼識が備わることを期待する。

 

 

「口が堅そうな顔」の鹿の子は、他人のプライベートに入り込む仕事が向いていると思う。

情報漏洩が騒がれる世の中だからこそ、彼女のような「セキュリティー対策万全顔」こそが信頼されるのでは、と勝手に想像する。

 

家政婦のミタ的な。

 

 

サムネイル by 希鳳

 

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