動物に例えるとゴリラとしか言われない私。特に否定する理由もないし、カピバラに似てると言われても微妙ゆえ、霊長類の仲間であるゴリラでよかったと思う。
ゴリラに似てると言われるからといって、その生態まで似るわけではないが、好きな食べ物の上位に「バナナ」がくる。
感動したのは、柔術の試合会場で見ず知らずの外国人から、房でバナナを与えられたこと。――あれはなぜだろう。計量前で体重を増やせなかったため、試合後のご褒美としてありがたくいただいたが、なぜ急に私にバナナを房で渡してきたのか疑問は残る。
先日もお節介な友人から、
「ほらバナナ食べなさいよ」
と、頼んでもいないのにバナナを押し付けられた。ありがた迷惑と言いたいところだが、まったく迷惑ではないのでありがたいで終わった。
*
昨日、スーパーでバナナを購入した。私の食の好みは変わっており、なんでも未熟な状態がベスト。たとえばステーキならばレア、モチも焦げ目のつかないやや硬め、米や麺も芯のあるアルデンテ、となると果物だって熟れていない状態がいいに決まっている。
そして目の前にあるバナナは美しい緑色をしている。これこそ、私が最も好む歯ごたえのある未熟なバナナではないか。早速バナナを抱えてレジに並ぶ。
「これ、やばくないですか?今朝届いたんだけど」
顔なじみの店員が話しかける。
「なんで?いい感じの色じゃない?」
ヤバいの意味が分からない。
「だってこんなのまだ食べられないでしょ」
(あぁ、キミみたいな凡人にはちょっと早いかもしれないね)
そう心の中で嘲笑しながらバナナを大切に持ち帰る。帰宅するや否や、さっそくバナナを引きちぎる。
(ん?うまく折れないな)
普通ならギコギコしてると房からちぎれるはずだが、こいつは一向にちぎれない。イライラするのでフンッと引っ張ってちぎる。いよいよ皮を剥きバナナとご対面、となるはずが皮も剥きにくい。
(まだ青いからな、瑞々しさが裏目に出たか)
冷静さを保ちながらも強引に皮をひん剥く。青いバナナの皮というものは、すんなり割けない。繊維に沿ってきれいに割ける皮は、ある程度死んだ状態でないとそうならないのかもしれない。
そしてなんとか顔を出したバナナにかじりつく。
――シャクッ
(なんだこの歯ごたえは、バナナとは思えない食感!)
これぞ私が求める、歯ごたえのあるバナナ。感動しながらバナナをよく噛む。
(・・・・)
無味というだけでなく苦みがある。バナナが苦い。
(これはハズレを引いたのかもしれない、別のヤツを試してみよう)
私は再び、バナナを房から引きちぎり皮を剥ぎかじりつく。
(・・・・・)
――ニガイ。
バナナが苦いというのは、ちょっと想定していなかった。そこで冷蔵庫からヨーグルトを取り出し、口の中で苦いバナナとミックスしてみる。多少はまろやかで苦みが緩和されると思ったが、予想以上に苦みが際立ち、決して豊かなハーモニーを生み出すことはなかった。
舌に苦み成分がまとわりついて膜をはるような感覚、わかるだろうか。甘党の私は今日、バナナにも苦いヤツがいるということを知った。硬くて無味までは許せるが、苦いのは受け入れ難い。もう少し黄色くなるまで寝かせておこう。
*
未熟な食べ物が好きな私にとって、オススメ未熟料理はパンケーキ。
パンケーキの最もうまい食べ方は、パンケーキミックスをボールでかき混ぜトロトロになったあの状態を、スプーンですくう方法だ。
「焼かずに食べるの?!」
そうだ。
「お腹壊すじゃん!」
壊したことなどない。舌の肥えた私ならではの食べ方とでも言おうか、焼く前のホットケーキミックスが一番うまいと断言する。ゆえに、あんこは嫌いだが粉ものが好きな私はたい焼き屋で、
「あんこ無しで焼いてください」
と、皮だけのたい焼きをオーダーする。しかしたい焼きは、真ん中にあんこが入っているからこそ、中まで火が通らなくても完成する作りになっているのだ。あんこがない分、中央の深部まで火が通らず何度も焼き直す店員。
「あの、中は生でいいから」
たまらず声をかける私。
「え、それはダメです」
否定する店員。
「いいから、失敗作も全部ちょうだい」
イライラしながら皮だけのたい焼きを買い取る私。「失敗作も全部」と言ったが、結果的にすべて失敗作になるわけで、焼けば焼くほど失敗作が増える、準ネズミ講方式。
「お金は1つ分で結構です・・」
不安げな表情で店員が告げる。ラッキーとばかりに130円を払い、皮だけのたい焼きを4つほおばる。
(んー、うまい)
中はとろっと生焼け。できれば外も生焼けがいいくらいだ。
Thumbnailed by オリカ
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