コロナ観戦記  URABE/著

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目が覚めると体がダルイ。

若干熱っぽい気もする。

 

昨日朝と夜と2部練したせいかな、とか思いながら、ベッドから起き上がった私はウーバーイーツでコーヒーを注文する。

 

それにしてもエアコンが効きすぎているのか、半袖でも肌寒さを感じる。つま先など保冷剤ばりに冷えている。

 

末端冷え性の傾向にある私は、指先やつま先、鼻の先や尻の先まで冷たくなる。

だが冷たい方が絶好調で、冷たいからといって困ることもない。

 

そういえば、大学受験でピアノ科を受験した際に、待合室で出番を待っていた時のこと。

 

5人の受験者と一つの部屋で待たされるのだが、全員が使い捨てカイロを持参していた。

一月後半の厳しい寒さの中、少しでも指を温めておこうという気遣いは当然。

 

だが私はカイロなど持参していない。

なぜなら、使い捨てカイロは私の手の冷たさで、すぐさま温度を奪われ硬くなるからだ。

 

ポケットに入れておくと熱くなるカイロだが、それを指で挟むとみるみる冷たくなっていく。

4つも5つも持って行ったこともあるが、どうせすぐに冷たい塊になるから、そのうちカイロを持たなくなった。

 

ちなみに、手が冷たいからといって演奏に影響はない。

真冬の土曜日の午後、手袋もせずに自転車を飛ばしてレッスンに向かい、ギリギリ遅刻で滑り込むとすぐさま弾き始めるーー。

こんなこと、日常茶飯事だったからだ。

 

つまり指が冷たかろうが温かかろうが、私にとっては大した問題ではない。

 

ということで、キンキンに冷えた室内でブルブル震えながら、エアコンの温度を0.5度上げた。さすがに寒いからだ。

と同時に、なんとなく体調が良くないのではないか、と疑い始めた。

 

どことなく怠くてぼんやりしている。脈拍も速い。これは健康体ではないことくらい、すぐにわかる。

届いた4杯のコーヒーを交互に飲みながら、体温計を探し出し熱を測る。

ーー37.9度。

 

微熱というより、熱があるといってもいい温度だ。熱が出るということは、私の免疫細胞が侵入してきたウイルスと戦っている証拠。

発熱することで病原体の増殖を抑制し、白血球の機能が促進される。白血球の動きが活発になると、侵入してきたウイルスへの攻撃力が増し、勝利を収めることができる。

さらにウイルスは低温で増殖しやすいため、発熱することでそれを抑えているのだ。

 

一通りコーヒーを飲み終わった後、少し横になろうとベッドに戻る。

30分ほどすると、耳鳴りとともに呼吸が苦しくなってきた。

 

ーーやばい、過呼吸か?

 

かつて過呼吸に苦しめられた経験のある私は、精神を強く持ち、深く長い呼吸を意識することで過呼吸の未然防止を心がけている。

 

過呼吸は体内の二酸化炭素濃度が不足することで起きる症状。つまり、二酸化炭素を送り込めば一発で収まる。

そのため、ビニール袋を口に当て吐き出す息=二酸化炭素を吸わせて症状を落ち着かせる、という光景を見たことがある人もいるだろう。今どきこのやり方はもう古いが。

 

とはいえ過呼吸を恐れることはない。

じっと時計を見ながら2分、つまり120秒を数えれば終わりだ。その間、呼吸をすることに集中しさえすれば、体内の二酸化炭素濃度も正常になり、過呼吸は終わる。

 

しかし今回はちょっと違う。肩を大きく上げ下げしながら必死に呼吸をする自分がいる。

これは過呼吸なんかじゃないーー。

 

その瞬間、私の脳裏に「死」の文字が過った。

もしかすると呼吸困難により死ぬのかもしれない。今はまだ自力で呼吸ができるが、それでも肺だけの力ではもう無理な状況だ。全力疾走した後のように、肩や肺あたりを派手に揺らして息をしている。

もしこれで呼吸ができなくなったとしたらーー。

 

私はふと気づいた。これこそが今はやりの「新型コロナウイルス感染症」ってやつではないか?と。

 

基礎疾患のある人や高齢者でない限り、必要以上に恐れるウイルスではないという自論を展開していた私だが、実際に自分がこのような呼吸困難に陥ると、その考えは一瞬で否定された。

ーーコロナは恐ろしい疾患だ!

 

すぐさま救急車を呼ぼうとスマホに手を伸ばす。

そもそも今日は何月何日だ?そして今はいったい何時だ?

 

 

というところで目が覚めた。

 

ーーあぁなるほど。呼吸困難という恐ろしさこそが、コロナの恐怖の神髄なのかもしれない。

 

 

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