コーデュロイパンツの変

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一般的な女子とは異なるフォルムのわたしにとって、衣服のサイズ選びというのは必要以上に慎重でなければならない。なぜなら、身長と体重だけで選ぶと、ほとんどの場合が失敗に終わるからだ。

とくに、下半身の凹凸というか厚みに定評があることから、優先すべきは「尻周りのサイズ」となる。そして大概の場合、尻周りに合わせて購入したパンツは、丈が長すぎたりウエストが緩すぎたりするのがオチ——。

 

このように、薄っぺらさがウリの日本人としては異質のわたしなのだが、アメリカへ行った際に下着を含む衣服をすべて現地調達したことがある。すると、裾や丈は合わないものもあるが、ヒップとウエストのサイズ感がピッタリだったのだ。

(この国はケツデカ族の楽園だ!!)

ちなみに”その店”というのはH&M。よって、帰国してからも好んで利用するようになったのである。

 

 

H&Mのいいところは、オンラインでの購入がしやすいことだ。出不精のわたしからすると、わざわざ店舗まで出向く手間こそが最大の難関であり、「いつか行こう」と思いつつ一年が過ぎることなどざら。

そして、オンラインで警戒すべきは「サイズ」だろう。日本のH&Mの商品は欧米サイズよりもやや小さめにできているため、S・M・Lを参考にすることもできなくはないが、やはりここは失敗を避けるべくサイズガイドを参考に実寸で選ぶことにしている。

 

そんなわたしは、冬に備えてH&Mオンラインにてズボンを買うことにした。今までもボトムアイテムは何着も購入しているため、およそのサイズ感は把握しているし、迷ったときは「少し大きめを選んでおけば間違いない」というのが、カジュアルウェアの鉄則でもある。

そこでさっそく、サイズガイドを参考に「42」というサイズのコーデュロイパンツをクリック——これで、洒落た冬を過ごすことができる。

 

注文した翌々日にはちゃんと届くのがH&Mのいいところだが、加えて「包装が簡易であること」が圧倒的な高評価ポイントといえる。外装は紙袋のみで、中には商品と納品書兼返品フォーム・・たったこれだけなのだ。

あくまで個人的な話だが、なぜか立派な箱に入っていたり要らぬチラシが同封されていたりすると、もうそれだけで「二度と注文するものか!」という気持ちになる。高級な衣服であればまだしも、たかが普段着ごときに厳戒態勢をとることに違和感を覚えるからだ。

 

そんなわけで、ポストに投函されていたコーデュロイパンツを引っ張り出すと、部屋に入るなり試着してみた——というか、試着する前に明らかな”異変”に見舞われた。

(なんだこの暖簾みたいなデカい布は・・・)

手に取っただけで分かるウエスト部分の太さは、まるでギャグのよう。さらに目の前で広げてみると、それはそれは立派な暖簾(のれん)なわけで。

 

それにしても不思議である。実際に身体のサイズを測った上で選んだにもかかわらず、ここまでデカいものが届くとはどういう誤差なのか。過去にも、42というサイズのパンツを購入した記憶があるが、それにしてもこれはデカすぎる——。

というわけで、すぐさま同封されていた返品フォームに記入をすると、宅配業者によって集荷されたコーデュロイパンツはH&Mの倉庫へと戻って行った。それと同時に、改めて「40」のパンツをクリックしたのである。

 

その翌々日、再びH&Mの紙袋が届いた——今度こそ、冬のオシャレさんになれる!

だが、またもやその夢は打ち砕かれた。前回の暖簾ほどではないが、取り出した時点で若干のデカさを感じたわたしは、その疑念を払拭するべくズボンへ足を通してみた——ダメだ、幅が広いし丈も長い。

 

この現実が受け入れられないわたしは、衣装ケースからH&Mのパンツを探し出すと、そのサイズを確認してみた。

(やっぱり40・・いや、42もあるじゃないか)

過去にも同じサイズのパンツを買っているし、それでちょうどよかったはず。それなのになぜ、今回は40ですらサイズオーバーなんだ・・?

 

そのとき、わたしはとある事実に気が付いた。これまで購入したH&Mのパンツは、いずれも短パンかスパッツだった——要するに、裾や丈を気にする必要のないアイテムだったため、純粋に「尻周り」だけフィットしていればよかったのだ。

ところが今回、まさかの長ズボンを購入したことで、尻のみならず丈や幅などにも配慮が必要となった。そうなると、やはり部分的なサイズ感のみではフィットせず、全体的なバランスを考慮しなければならない——というカラクリだったわけだ。

 

またもやパンツ選びに失敗したわたしは、「次こそは!」とH&Mオンラインを開くと、36と38をクリックした。

今回はどちらか一方を確実に返品するため、H&Mの倉庫をはじめ配送業者や地球環境に対して無駄に迷惑をかけて申し訳ない・・という気持ちはある。だが、今のわたしにとって36か38のいずれかを選ぶことはできない。おそらく、選んだ商品を再び返品する未来しか浮かんでこないからだ。

 

(今度こそ、この不毛な戦いに終止符を打つぞ・・)

 

 

そして本日、コーデュロイパンツの変がようやく幕を閉じるのである。

 

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