暖かな洗面所に立ち尽くす、顔面蒼白の私

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帰宅してすぐに、手を洗うべく洗面所へ向かったわたしは、恐ろしさのあまり倒れそうになった——なぜ、寒いはずの洗面所がこんなにも暖かいんだ。

 

外気温は一桁にもかかわらず、半袖でも十分なほどの暖かさは、どこか異様な熱気を帯びている。しかも、同じ空間に置かれた柔軟剤は容器に触れただけでも分かるほどの温かさで、中身の液体はいい湯加減に仕上がっていた。

(こ、これは・・・セラミックファンヒーターのせいだ)

なんと、電源をオフにしたはずのファンヒーターが、留守中もずっと稼働していたのだ。時間にして6時間超——洗面所という狭い空間は、当然ながらポッカポカに暖められていた。

 

そして、こうなると恐ろしいのは”今月の電気代”である。ここ最近は2万円をオーバーする月が続いており、原因はエアコンではなくセラミックファンヒーターだ・・と自覚しているわたしは、なるべくこまめにオン・オフを繰り返すことで、必要最小限の電気代に抑えるべく努力を重ねてきた。

なんせ、エアコンフル稼働で部屋を暖めているにもかかわらず、腰下あたりから急に空気が冷たくなり、足の裏など「外にいるんじゃないか」と思うほど冷え切ってしまうのだから、せめて足元だけでも暖をとるための措置をとらなければならない——。

その”措置”こそが、足元専用のセラミックファンヒーターを使用することだった。

 

しかもわが家のヒーターは、小型ながらもしっかりと温風を吐き出してくれるので、夜中に作業をする際にはとても重宝している。さらに、歯磨きをしたり着替えたりするときの暖かさを保つべく、洗面所にも中型のセラミックファンヒーターを設置しているのだが、こちらは縦長なので角度を上向きにしてやると、足元のみならず胸のあたりまで温風が届くという優れもの。

・・こうして、役に立たないエアコン(正確には、エアコンの機能を殺してしまっている内装に問題がある)との合わせ技で、”小さな巨人”ことセラミックファンヒーターが大活躍するわが家なのであった。

 

そんな功労者たるファンヒーターの唯一の欠点は、電気代がかかることだ。たしかに、スイッチをオンにした瞬間から温かい風が吹き出すし、オフにするまではずっと温風が出っぱなし・・というタフな作りゆえに、それなりの電気代を必要とすることは理解できる。

だが、いざ電気料金の請求額を目の当たりすると、さすがに冷静さを失ってしまうのだ。だって、一人暮らしの電気代が2万円って——。

 

真冬の寒さに見舞われるまでは、電気代は1万円を切っていた。たしかに、エアコンフル稼働・・という状況でもなかったし、単純に比較できないのは承知している。とはいえ、同じ部屋に住んで同じように生活しているにもかかわらず、電気代が二倍以上に跳ね上がるというのは、胸中穏やかではいられない。

無論、セラミックファンヒーターにはとても世話になっているし、ある種の生命維持装置といえる存在なわけで、断じてケチをつけるつもりはない。とはいえ、贅沢な暮らしを望んでいるわけではなく最低限の温もりを求めているだけなのに、この仕打ちはあまりに酷いではないか。

 

——などと頭を抱えていたところで、本日の大失態である。さすがに、一日6時間以上も温風を出し続けたことはない。しかも、洗面所のファンヒーターは中型であり、小型よりも電気代を食うのではなかろうか。

(あぁ、6時間ってなんだよ・・)

どれほど悔やんだところで、この6時間を巻き戻すことはできない。とはいえ、これが長期旅行で家を留守にしていた間、ずっと付けっぱなしだったことを考えると、まだまだ傷は浅い。——そうだ、わたしはラッキーだったのだ。たったの6時間で済んだのだから、考えようによっては安い代償じゃないか!!

 

そう自分に言い聞かせながらも、まるで温室のようにポカポカな洗面所で、温度とは裏腹に顔面蒼白のまま立ち尽くすわたしがいるのであった。

(今月の電気代は、いったいいくらになるんだろうか)

願わくば、ミスによる電気使用分は疎明書を提出することで減免できる・・というような寛大な措置を検討してもらえないだろうか——。

 

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