レストランやカフェで、一つのトイレを男女共用としている場合はさほど気にならないが、男女それぞれのトイレがある場合で、女子トイレの便座が上がっていると複雑な気持ち・・というか、不快な気分になるのはなぜだろう。
そもそも、女子トイレを男子が使うこと自体想定外だが、とはいえ”のっぴきならぬ事情”があるのも理解できる。かくいうわたしも、「開かずの扉か?!」とツッコみたくなるほど、固く閉ざされた女子トイレに見切りをつけて、男子トイレに忍び込んだ経験が何度もあるわけで。
また、コンビニや商業施設では「男性スタッフが女子トイレを使用する旨」が掲示されていることもあり、女子トイレだからといって男性が使用しないとは限らないのである。
それにしても・・だ。諸事情により女性専用のトイレを使ったならば、「せめて便座は下ろして出ていけ」——と、声を大にして言いたい。
しつこいようだが、ここは女子トイレである。女性がこのトイレを使用する際に、便座を上げることなどありえない。しかも、女性が”便座の裏側”と対面するのはトイレ掃除のときくらいで、ドアを開けた途端にむき出しの便器と便座の裏が待ち構えていたら、それはある種のホラーである。
そもそも、便座を上げるということは「立って排尿をする」ということだろうが、男性諸君は「プラトー・レイリー不安定性」という理論をご存じだろうか。
簡単に説明すると、「液体が細長い円柱状で流れる際に、途中で分裂して小さなしずくになる現象」のことで、身近な例として”シャワーや水道の蛇口から垂れる水が、下にいくほど水滴になる”というのが、これにあたる。
ちなみに、10年以上前にBBCニュースで取り上げられた記事では、
ブリガム・ヤング大学の研究チームは、高速カメラを用いて、どのように尿が飛沫へと変わるのかを観察した。彼らは、液体の流れが不安定になって小さな液滴へと分裂する現象、「レイリー・プラトー不安定性」が関係していると指摘した。
研究者らによれば、尿が便器に当たる前に分裂してしまうと、見えない微細なしぶきが周囲に飛び散ることになるという。この現象は、液体がある一定の距離を進むと、自然に細かく分裂するという物理法則に従っており、スプリンクラーの水流や蛇口の水と同じ原理だ。
というように、物理学者たちが「尿の飛び散り問題」に挑んだことが紹介されている。さらに「飛び散りを抑えるには?」の回答として、研究チームはいくつかの方法を提案している。
・便器の表面に沿って角度をつけて当てることで、跳ね返りを大幅に減らせる。
・尿が飛沫に分裂する前に着地するよう、高さを下げるのが効果的。
また、排尿の初期には勢いが強く飛び散りやすいため、最初の1秒間は特に注意が必要であるとも述べている。
これらは「犬の排尿行動」から着想を得たもので、この研究は当初、犬がなぜ特定の角度で排尿するのかを調べるために始まったのだ。結果的に、犬の排尿行動には飛び散りを最小限に抑える「自然な工夫」があることがわかり、人間の排尿動作にも応用が可能だと考えられるようになった。
そして、研究者たちはユーモアを交えてこう語っている。
「飛び散りはあなたのせいではありません、物理のせいなのです」
しかし、「その物理を理解すれば、もっと清潔で効率的な排尿方法を選ぶことができる」と、彼らは強調しているのである。
・・というわけで、男性諸君が洋式トイレで排尿する際は、便座を上げて起立した状態で行うのではなく、便座に腰を下ろした状態で静かに放尿することが、正義であり義務であるということを、強く脳に刻み込んでもらいたい。
なぜなら今、目の前の床にあるいくつかの水滴・・その色が「黄色い」のは見間違いではあるまい。そして、便器の周りに落ちている黄色の水滴の正体が、「尿」意外になんだというのか。おまけに、それを拭き取るどころか汚すだけ汚してこの場を立ち去るとは、いったいどういう神経をしているのか。
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ブツブツと文句を垂れながらも、自宅でもないのに床と便器をきれいに掃除するわたしなのであった。
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