突然だが、BEST BODY JAPAN(ベストボディ・ジャパン)という、フィットネスのコンテストをご存じだろうか。
協会サイトによると、
「コンテストの審査では、外見と共に内面も重視している」
「知性・品格・誠実さを兼ね備えていることが、理想の人物像といえる」
という文言があり、単に筋肉美を競うだけではないということが明確に示されている。
そんな、ベストボディ略して「ベスボ」のステージで活躍する友人が何名かいるのだが、偶然にも本日、その中の二人に餌付けをされるという幸運に恵まれた。
しかも餌の中身は、わたしの大好物である「おむすび」だった。
(さすがはベスボ。外見の仕上がりだけでなく、料理の腕前までもが堅実かつ一流ときたか!)
まず一人目は、流山の高島礼子(仮名)だ。
何年も前から「おむすびを食べさせてあげる」と言われながらも、なかなかその機会が訪れなかった。
そして長いこと「おあずけ状態」だったわたしは、礼子のおむすびは幻想だったのではないか?と思い始めていた。
だが、夢の実現は唐突に起きた。
「今日、湿度が高いからちょっと心配なんだけど・・」
そう言いながら、礼子は茶色い紙袋を差し出してきた。ズッシリと重みのある袋の持ち手は、台風による豪雨のせいで湿っている。
こんな悪天候にもかかわらず、わたしのために食べ物を運んできてくれるとは、なんと内面が充実した女性だろうか。
さっそく中身を確認すると、アルミホイルに包まれた丸太が目に飛び込んできた。そう、手作りチャーシューだ。
さらにチャーシューを漬けたタレまでも、瓶に入れて同梱してある。
その横に、白い柔肌のおむすびが3つ横たわっていた。
(おぉ!!肉の塊におむすびとは、最高級のご馳走じゃないか!!)
手の込んだ料理もいいが、こういった単純な料理はもっといい。ほぼ原材料でできているからこそ、なんというか満足度も高いのだ。
結局のところ、おむすびに関しては主婦の作品こそが最高傑作である。
料理のプロが握るおむすびは、当然ながら美味い。だが寿司と違っておむすびは、あまりに完璧では美味しくないのだ。
形など歪でいい。塩も濃かったり薄かったり適当でいい。米も、時間が経って硬くなったりパサパサだったりしてもいい。
それらすべての要素が「おむすび」を形成しているわけで、なぜかさらなる美味さを引き立てるのだ。
帰宅途中の電車内。空腹の頂点に達したわたしは、思わずおむすびに手を伸ばした。
しかしすぐにハッとなり、引っ込めた。
――高島礼子のおむすびを食べるなら、もっといいシチュエーションで食べよう。
こうしてわたしは帰宅と同時に、礼子お手製のおむすびとチャーシューにかぶりついたのであった。
*
ピンポーン
おむすびとチャーシューで満腹になったわたしは、グーグーと昼寝をしていた。そこへ突如、チャイムが鳴った。
モニターを覗くと、なんとそこにはもう一人のベスボが立っていた。
そう、白金の松田聖子(仮名)だ。
近所に住んでいることもあり、わたしは彼女から定期的に餌付けされるのである。
「酵素玄米のおむすび、食べる?」
そう言いながら、まだ温かいおむすびの入ったビニール袋を手渡された。マクロビオティックの乾燥わかめのふりかけまで、サランラップに包んで添えられている。
「パリコレモデルの冨永愛ちゃんは、酵素玄米しか食べないんだって」
さすがはベスボ、健康美に対する意識の高さが半端ない。股下92センチのトップモデルの食生活など、今回を逃したら一生知ることはなかっただろう。
「酵素玄米はね、炊きたてよりも一週間くらい寝かせたほうが美味しいの」
そうなのか?そんなに寝かせて腐らないのか?
「それでずっと保温してるんだけど、一番美味しくなった頃に電気代がもったいなくて、餌付けに来るんだ。私たちって、サスティナブルな関係だよね」
彼女の良さは天然なところにある。
「白金の松田聖子」といえば、性格に難がありそうな印象を抱くかもしれない。だが彼女に関しては、それが一切ない。
(サスティナブルな関係・・?)
まぁいい。おいしいおむすびが手に入るのだから、何ティナブルでも構わない。
*
こうして、まさかのベスボ二人からおむすびをもらえるという、奇跡的な幸運を堪能したわけだ。
ベスボで活躍する女性は、間違いなく内面も立派で美しいのである。
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