(・・アレ? Wordってこんなマークだったっけ)
わたしは、パソコンのデスクトップに未処理のファイルを並べている。本来、デスクトップは簡潔にスッキリさせておくのがベストだろう。最低でも、一つのフォルダにまとめておくくらいが最大限の譲歩といったところ。
そのくらい、デスクトップがごちゃごちゃしていることを忌み嫌うわたしだが、あえて未処理ファイルを並べている理由は、パソコンを開いた瞬間に「すぐさまどうにかしなければ!」という気にさせるためだ。
なんでもすぐに片付けなければ気の済まないわたしは、「後でやろう」とか「明日にしよう」という選択肢が存在しない。その性質を逆手に利用し、すぐさま着手すべき案件は、あえてデスクトップに広げておくのだ。
そして、常にイライラしながら一秒でも早く片付けたい衝動を胸に、クライアントからのゴーサインを待つのである。
そんなわたしのデスクトップに、見たことのない白いファイルがズラリと並んでいた。ファイル名からして、昨日まではWordだったものが、いつの間にか「.docs」という拡張子に変更されているではないか。
(ど、どういうことだ・・・?)
昨日までWordだった書類を開こうと「プログラムから開く」を選んだはいいが、「Word」の文字が見当たらない。「別のプログラムを選択」の先にも、Wordの文字は見当たらない。
(まずい、これは圧倒的にマズい・・)
なにがマズいって、わたしが使用している社労士ソフトはExcelでできているため、パソコン上からofficeが消失したとなると天地がひっくり返る大事件となるのだ。あと少しで半狂乱になりそうな精神を理性で抑えつけながら、恐る恐る社労士ソフトのショートカットをダブルクリックしてみた。
(ひ、開かない・・・・・・)
心拍数が急上昇し鼻息が荒くなる。——マズいマズいマズいマズい、ひっじょ――にマズいっ!!!!!!
システム管理者の友人にLINEをしながら、プログラム一覧を確認すると、officeの文字がない。どういうことだ、プログラムにofficeが入っていないということは、WordもExcelも開けるわけがないが、いったいいつ、アンインストールしたというのだ・・。
「Windowsのアップデートした?その時に消えちゃう現象、たまに聞くよ」
なるほど・・そういう可能性もあるのかもしれないが、アップデートの更新履歴を見るも、ここ数日に実行された形跡はない。もちろん、わたしが率先してアンインストールなどするはずもない。
おまけに、昨日までは普通にofficeは存在していたのだ。それなのになぜ、今日、突如消えてしまったのか——。
とりあえず、officeが消えたのならば再インストールすればいいが、アナログなわたしとしては「なぜ勝手にアンインストールされたのか」が気になって仕方がない。さらに、自発的に再インストールすることでなんらかの弊害が発生したら、それこそ確実に発狂するだろう。
そこでわたしはMicrosoftのサポートセンターにアクセスした。すると「私たちがお手伝いいたします。」というメッセージとともに検索窓が現れた。そこで「office365が消えた」と入力したところ、ニンゲンかAIか分からないがわたしの担当者が登場した。
Microsoftアカウントにサインインしていたため、「サインインありがとうございます、おかげで先に情報確認ができます」というような礼を言われた。——なるほど、こういう時にアカウントを持っていると、向こう側で全てが把握できるわけだ。
続いて「画面を共有し、こちらで操作を行ってもよろしいでしょうか?」と尋ねられたため、「もちろん、喜んで!」と答えると、専用画面を表示させる暗号が伝えられた。さらに指示通りに進めていくと、わたしが見ているデスクトップ画面で、見知らぬカーソルがカサカサと動き始めたのだ。
「それでは、こちらで少し確認させてもらいます」
担当者はそう告げると、サクサクとわたしのパソコンをいじりはじめた。コントロールパネルからプログラムの一覧を開くと、Microsoftの文字をさまよい・・見当たらないことを確認してから、office2019の再インストールページへと飛んだ。そしてさっさと再インストールの手順を踏むと、いよいよ見覚えのあるカラフルな画面が登場した。
青—Word、緑—Excel、赤—PowerPoint、水色—Outlook、紫—OneNote。Microsoft365が誇る錚々(そうそう)たるメンバーが、再びわたしの目の前に現れたのだ!
・・こうして、わたしは画面の前でカーソルが動くのをボーっと見ていただけで、あっという間に再インストールが終了した。もちろん、社労士ソフトも見事に起動できるし、Wordもどきの白アイコンも、あの誇らしい「白青のダブリュー」が戻っていたわけで。
それと同時に、わたしは、Microsoftのサポートセンターに心の底から謝罪した。なぜなら、「どうせ、時間がかかった上にたらい回しされて、なにも解決せずに今日が終わるんだろ」と、大した期待はしていなかったのだ。もしくは、「サポートセンターへお電話ください」で、電話が一生繋がらないパターンだと思っていたのだ。
ところがどうだ。遠隔操作のサポートもあり、あっという間に再インストールを果たしたのだからあっぱれである。
——都市伝説や陰謀論界隈で常に名前が挙がるオトコ、ビル・ゲイツ。今日ばかりは彼のことが好きになった。
コメントを残す