おれはトウモロコシの皮、穀物界のウォール・マリアだ! URABE/著

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おれはトウモロコシの皮だ。しかも一番外側の!

なにが言いたいのかというと、おれを、いや、おれたちを甘く見るな!ということだ。トウモロコシの皮なんて、大した存在価値もないと思っているだろう?これだから人間は・・・まぁいいや。

そもそも、おれたちを食することができない時点で、生き物としてのレベルが低い。たとえば草食動物、そうだな、カピバラを見てみろ。皮つきのトウモロコシをドサッと積んでやったら、トウモロコシの粒よりも皮を貪り食うじゃないか。ちなみに、おれたちの次は芯が好みのようだから、あの黄色い実はオマケもいいところ。

そのくらい、野生を生き抜いてきた草食動物にとっては、甘くてジューシーな実なんかよりも、それらを包み込んでいる「おれたち」の存在のほうがデカいんだ。

 

トウモロコシの実を守ってやってるおれたちの中でも、最も外側を防御しているおれは、弟たちからの信頼も絶大である。なんせおれは分厚いジャケットだから、他の弟らと比べても圧倒的な頑丈さを兼ね備えているのだ。

さらに外表面には細かな毛が生えていて、ちょっとしたクッションの役割も果たしている。それゆえ、ガサガサに乾いたおれの外側は潤ってないし手触りもわるい。だが、かわいい弟たちをまもるべく外壁として君臨するプライドこそが、このガサガサの皮膚なんだ!

 

・・おっと、感傷的になっちまったな。話を戻そう。

おれはいま、おかしな人間によって一皮剥かれたところだ。おれたちの特技は実を守ることだが、同時に、水分の蒸発を防ぐ役割も果たしている。言うなれば「自然界のサランラップ」さ。

つまり、人間がトウモロコシを食べようとしたとき、おれたちを剥がすことなくそのままレンジへ放り込んで4分待てば、最高にフレッシュでジューシーな「食べ頃のトウモロコシ」が誕生するんだ。

それなのに、そんなおれたちの特徴を知らないバカな人間は、レンチンする前におれたちを引っぺがして、わざわざサランラップに包むんだから笑っちゃうね。もったいないにもほどがある。

 

ところが本日の人間は、おれたちもヒゲもむしり取ることなく、そのままレンチンした。これはなかなかのやり手と見た。

少し蒸らした後で、いよいよ大外のおれを剥がしにかかった。あぁ、いい人生だったな——。

 

そのままゴミ箱へ放り投げると思っていたら、なんと、おれをテーブルに置くと丸まっていた端っこを手で押さえて、シワを伸ばし始めたのだ。確かにおれの内側は柔らかくて初々しい。だがなぜ、今さらおれを丁重に扱っているのだ?

 

次の瞬間、人間はおれの上に弾丸を撃ちこんだ。そう、散弾をぶちまけたのだ。漆黒の禍々しい弾がおれの上に次々と並べられていく。

(こ、これは・・・)

漆黒の散弾はスイカの種だった。人間はスイカを頬張りながら、プッププップとおれに向かって種を放出してきたのだ。なるほど、おれを器に見立てたのか!

 

今までおれは、草食動物に食べられるか、レンチンした後にゴミ箱へ葬られるかの二択しかなかった。ところが今日、おれは器としての役割を果たしている。

言われてみればおれはタフガイだ。ちょっとやそっとの力では引き裂くことすらできない。なんせ「穀物界のウォール・マリア」と称賛されるほど、外皮の域を超えた強度を誇るわけで。

そんなおれ様を、この人間は器として再利用したのだ。なんという見識を備えているんだ!

 

こうしておれは、大量のスイカの種を抱きしめながらゴミ箱へと沈んでいった。

今回は、いつものように干からびた屍にはならない。新たな仲間、そう、スイカの種たちを守ってやらなきゃならねーからな。

 

おれはトウモロコシの皮。しかも一番外側を守る、鉄壁のウォール・マリアだ。

 

Illustrated by 希鳳

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