独特な私の太もも

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電車に乗っていて感じることは、太ももが細い人がうらやましいということ。

 

足が細くてスラっとした女性はみな、優雅に足を組み、はばを取らずに着座している。

 

とくに、上の足が下へ垂れ下がり、くたっとしおらしくぶら下がっている、あの儚い感じへの憧れを隠せない。

 

もし私があれを再現すると、ユニコーンの角か、わざと足で通せんぼしてるかのように正面に突き出てしまい、足が下へ垂れ下がらないのだ。

 

なぜそうなるのか、それは私の足が太いからだ。

 

私が足を組むには、両手で片足を持ちあげて逆の足に乗せてやらなければ、足を組むことができない。

 

一般的な女性を見ていると、手で足をサポートすることなどせず、足のみで足を組んでいる。

 

ーーなぜあのようなことができるのだろう

 

私も、自力で足を組むことに挑戦してきた。

何年も挑戦してきた。

 

その結果、

 

「内転筋とハムストリングが肥大している」

 

という事実にたどり着いた。

 

 

自力で足を組むとき、途中まで足のみで運ぶことができる。

しかし、片方の内転筋もしくはハムストリングが、逆の大腿四頭筋と接触することで、片足を乗せた瞬間に足が滑り落ちてしまうのだ。

 

これを回避するには、手の力を借りるしかない。

 

両手で片方の太ももを持ちあげ、さらに勢いをつけながら逆足の上に放り投げる。

すると、勢い余って足と足がきっちりジョイントされ、無事に足が組まれる。

 

それ以来、なんとかこの方法で足を組むことができるようになった。

 

 

電車で足を組んでいて困ることが一つだけある。

それは、一度足を組んだら降りるまで組み続ける(足をほどくのにも一苦労だから)ため、上の足がしびれて立てなくなることだ。

 

私の太ももがきっちりと組み重なっているということは、血管もきっちりと締め付けられているわけで、上に乗っかってるほうの膝裏の血管と、下の足の膝頭が強く密着し続けた結果、極度のうっ血状態となる。

 

そのため、下車しようと組んでいた足をほどくと、足がしびれて動けない。

さらにしばらくすると、強烈な痛みで歩くことができない。

 

 

そもそもなぜ、足がしびれたあとに痛みを感じるのかということだが、このメカニズム、実は未だ解明されていないらしい。

 

諸説あるうちの一つに、活性酸素に反応するタンパク質の作用が考えられる。

 

足を組むことで阻害されていた血流が、足をほどいたことで再開し、細胞から大量の活性酸素が発生する。

この活性酸素に反応して痛みを引き起こす、感覚神経のタンパク質 ”TRPA1” という物質があるらしく、血流低下による低酸素状態がTRPA1の過敏化を誘発し、血流が再開することで発生した活性酸素がTRPA1を刺激した結果、痛みの情報が脳に伝わる、というものだ。

 

小難しい話は置いといて、とにかく、足のしびれと痛みで電車を降り過ごしたことは何度もある。

 

そのくらい、私にとって優雅に足を組むことの代償は大きい。

 

 

いま、正面の女性は、組んだ足をさらに逆の足首に巻きつけている。

 

私は、大腿部が太いだけでなく、ふくらはぎやヒラメ筋も分厚い。

 

足首に絡めようにも、逆足に触れることすら不可能なため、あんなツタが巻きついているような状況にはならない。

 

必死につま先を足首に巻きつけようと試みたが、足の指が攣って終わった。

 

 

このように足や尻が太い(デカい)ゆえの惨めな経験は、過去にいくつもある。

 

オシャレな店で細身のデニムを試着したら、デニムのウエスト部分が太ももで止まり、上げることも下すこともできなくなった。

その結果、店員が必死に引きずり下ろしてくれた。

 

オシャレな店で流行りのスカートを試着したら、お尻の出っ張りにスカートが乗っかる感じになり、ずいぶんと後ろの丈が短い、前下がりのミニスカートになったことがある。

店員は必死に、何度もスカートの裾を引っ張っていた。

 

タイツを履けば、足の体積にタイツが持っていかれるため、ウエストまで引っ張り上げるには長さが足りなくなる。

つまり、私はいつも、お尻の半分くらいまでしかタイツを履いていない。

 

 

こんなことが私の下半身では起きているのだ。

 

人間の体とは不思議なものだ。

 

 

Illustrated by 希鳳

 

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