他人と自分の評価、というか、客観的な見方と主観的な見方との温度差は激しいもの。
自分で「これはいいぞ!」と思ったものは、他人からの評価は低かったりする。
まぁ、他人の評価のためにやってるわけではないので、べつに構わないのだが。
天邪鬼な私は、他人から褒められると、
「これは罠に違いない」
と、思う。
――持ち上げといて落とすつもりだ
――高いところから突き落とされるんだ
そんなことをぐるぐると考えていたら、実際に「高いところから落ちるにまつわる光景」を思い出した。
いずれも海外でのできごとである。
*
新型コロナウイルスの対応について、悪い意味で、世界的に注目を集めることとなったブラジル。
8月19日現在の累計感染者数は345万6652人、死者は11万1100人まで増加した。この数字は、米国に次いで世界で2番目に多い。
そんな、感染拡大が深刻なブラジルだが、Bolsonaro大統領の支持率は上昇している。最新の世論調査によると、支持率は37%と、不支持率の34%を上回った。
経済政策を優先するBolsonaro大統領の姿勢が見直されつつあり、低所得者や失業者向けの現金給付の実施も、支持率の上昇に寄与したとみられる。
そんな、お騒がせの国ブラジル。
2016年には、リオデジャネイロでオリンピックが開催された。
私は、友人の応援も兼ねて現地参戦した。
「高いところから落ちるにまつわる光景」の一つ目は、リオの道路だ。
現地で驚いたことの一つに、オリンピックが終盤に差し掛かろうとしているにも関わらず、道路工事は途中でほったらかしにされ、道路の真ん中にデカイ穴が空いていたことだ。
穴を除くと、奥底に車が落ちていた。
日本でこんなことが起きれば、大変な騒ぎになるだろう。
後続車も、そのデカい穴に突っ込みそうな勢いで、直前にブレーキを踏んで回避していく。
しかし、リオではこんなことでは誰も騒がない。
観光客も物珍しげに穴をのぞき込んでは、写真を撮って通過していく。他人の不幸に付き合ってる暇などない、と言わんばかりに。
なぜなら、車道の真ん中に空いたデカい穴より、自分たちが歩く歩道に空いている中くらいの穴や、なぜか道から噴き出る「下水」に気を付けなければならないからだ。
そのくらい、リオ市内を歩くことは危険と隣り合わせなのだ。
メイン会場をぐるっと一周してみた。
メインストリート側はまだいい。しかし、コの字型で例えると左側(正面の裏側)が、かなりのハリボテだった。
アスファルトは途切れ、砂利と土の道(?)になる。
道、というか、自然あふれる大地が広がっているという感じ。
――これでもオリンピックが開催できるんだから、やったもん勝ちだな
なんて考えながら、ビーチサンダルが汚れるので、アスファルトで舗装された道へと引き返した。
道路事情といえば、友人が乗っていた選手送迎バスの、前に停車していた一般車両が襲撃された。日本ではありえないレベルの、危険と無法地帯がリオデジャネイロ、という印象でしかない。
だからこそ、新型コロナウイルスなど大した脅威ではない。
「死者が10万人に達しても人生は続く」 By. Bolsonaro大統領
*
もう一つの「高いところから落ちるにまつわる光景」は、カザフスタンの空港でのできごとだ。
「クレー射撃アジア選手権大会」参加のため訪れた国、カザフスタン。成績も悪く、暗い気持ちで帰国の手続きをしていた。
ショットガン(散弾銃)は、当然のことだが、空港職員の手で運ばれる。一般のスーツケースなどと一緒に運ばれることは、ぜったいにない。
チェックインを済ませ、カウンターで銃を預けた。
すると、通常必要な「銃に関する書類」も書かずに、ひょいっとベルトコンベアに乗せられた。
「いやいや、それ、ショットガンだよ」
「もちろん、わかってる」
いま、空港職員が乗せたベルトコンベアは、一般のスーツケースなどを流す、あのベルトだ。
その先には、着地点が見えないほどの急激な下り坂が待っている。
「わかってない。ショットガンはこのベルトには乗せない!」
「いつもこうしてるから、問題ない!」
空港職員と口論になった。
口論している間にも、私の銃はジェットコースターの頂上に向かって、ゆっくりと流れていく。
私の銃の、前の前のスーツケースが、忽然と消えた。
数秒後、
ドカーーン!
衝撃音とともに、数メートル下のフロアへ叩きつけられた。
――いったん、整理しよう。
ベルトコンベアに乗せられた誰かのスーツケースが、断崖絶壁からものすごいスピードで落下し、割れただろ?!と思われるほどの衝撃音とともに、多分、ご臨終となったのだ。
私のキャリーケースの中には、Beretta DT11 (200万円相当)が眠っている。
キャリーケースが割れるのも困るが、銃に何かあったら、どうしてくれるのだ。
(どうもしてくれないだろう)
私は、口論していた職員をどかし、カウンター内に踏み込んだ。
私の銃の直前のスーツケースが、死刑台から突き落とされた。
ドカーーン!!
カウンターに侵入した私を取り押さえる職員を振りほどき、ありったけの声で叫んだ。
「STOOOOOOOOOOOOOOOOOOOP!!!
It’s my GUUUUUUUN!!!
Not baggage!!!」
その叫び声に、別の職員が足元のボタンを踏んだ。
すると、ベルトコンベアが止まった。
私の銃は、一命をとりとめた。
*
お気づきのように、私の脳内は、非常にゆるくて広大だ。
よって、
「おだてられ(褒められ)持ち上げられ、落とされる」
から、
「車がデカい穴に落とされる」
と、
「銃がベルトコンベアから突き落とされる」
にまで、発展した。
以上。
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