フィジカル・ディスタンス

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過去に実施した「ウェブミーティング」というものを振り返ると、そのほとんどは時間の無駄だったと感じる。

これは業種やミーティングの内容にもよるので、あくまで「わたしの場合」であると念を押しておく。

 

その上で、ミーティングのほとんどはテキストでどうにかなる内容だったり、チャットでの意見交換でも十分だったり、わざわざ1時間拘束されてまで、カメラの前に座らされる必要性はなかった。

 

わたしが電話相談を嫌う理由の一つに、

「相談者の要件がまとまっていない」

ということが挙げられる。

 

相談者は得てして「とにかく不安だから」とか「話をきいてもらいたいから」といった理由で通話ボタンを押す。

その気持ちは分からなくもない。わたしも同じように思うことはあるからだ。

 

だがその度、電話を掛けようとしている相手の顔が浮かぶ。

(こんなことで作業を止めさせたり、相手の時間を奪うのは悪いな)

そう思い、スマホから手を放す。

 

しかし頭ごなしに「電話が悪い」というわけではない。

あらかじめ、テキストで要件を送ってくれればいいだけのことだ。

 

最低限の情報提供を文字で行った上で、最終的に口頭で確認するならば全く問題ない。

さらに、このような手段を取れる人は、突然の電話でも要件が明確で、5分とかからず通話が終わるのだ。

 

「誰もがスラスラと文章を書けるわけじゃない!」

 

たしかにその通りだ。だがそれは口頭でも同じことが言える。

文字でまとめられないものは、口頭ならば単なる愚痴になりかねない。

 

相談者自身、いったい何が不安で何を解決したいのか、頭の中で整理する必要がある。

そのためにも、思い立ったらすぐ通話ボタンを押すのではなく、一度、文字に起こすことをお勧めする。

 

どうすれば相手に伝わる文章が書けるのか。

箇条書きにしたり、番号を振ったりすれば分かりやすいのではないか。

 

この繰り返しが自身の作文能力を向上させる。

また、相手にとっても無駄な時間を奪われずに済むわけで、良好な関係が構築できるだろう。

 

 

ここまでの流れからすると、

「ウェブミーティングですら文句を垂れるんだから、フィジカル空間での会議など言語道断!」

と言いかねない。

だが一つだけ、直に会うべきケースがある。

 

それは、久々に会う友人と仕事の話をする時だ。

 

新卒入社の企業でかわいがってもらった、姉のような存在の女性がいる。

「社労士さんに教えてもらいたいことがあるんだけど」

と突然、連絡が来た。

 

彼女は気を遣って「ウェブでもいい」と言ったが、それこそ時間がもったいない。

「ランチしながら話そう」

と、逆に姉を誘った。

 

この場合、一石三鳥だ。

 

旧友に会える、飯が食える、仕事の話ができると、一気に3つを同時進行できる。

とは言え、話に夢中になってランチが伸び気味になるのはご愛敬。

 

こうして十何年ぶりに姉と意見交換をした。

 

恥ずかしながら、わたしはわずか3年で音を上げた「組織人」としての働き方。

一方、仲の良かった姉はなんだかんだで未だに立派に勤め続けている。

 

好奇心旺盛で合理的な考えを持つ彼女が、なぜ「生産性を必要としない組織」で勤務を続けられるのか、理由を考えてみた。

 

そしてたどり着いた答えは、

「彼女の仕事が一つではないから」

ということだった。

 

じつは姉、本職はフォトグラファーなのだ。

企業専属のカメラマンをしつつ、一般社員が従事する業務もこなす、言わば一人二役を担うトップキャリアウーマン。

役員随行や支援事業の視察など、訪れた国は100ヵ国を超える。

 

さらに観光地のような過ごしやすい土地とは違い、水や食べ物にも気を使う僻地を中心に出張するため、一般的には足を踏み入れることのできない場所や民族、社会事情についても心得ている。

 

そんな「ありえない非日常と、当たり前の日常とのミックス」が、彼女の仕事のバランスを保っているのではないかと思う。

 

写真撮影や編集は動きのあるクリエイティブな仕事。

対するデスクワークは典型的な単純作業。

 

どちらか一つに偏っても歪みが生じるが、ちょうどいいバランスで繰り返してきたのだろう。

その結果、二足の草鞋が「当たり前のキャリア」として身に付いたのかもしれない。

 

ーーなぜそう思ったのか。それは、彼女が生き生きと仕事の話をするからだ。

愚痴や不満も含めて生き生きと発言する姿に、この相反する業務内容が彼女のバランスを保つヒントとなっているんじゃないか、と思った。

 

 

表情ひとつ、息づかいひとつ、笑った時の目尻のシワひとつひとつが十数年の時を超えて、わたしたちの当時と今を結びつけてくれた。

 

ウェブやテキストではなく、今度もまた、こうして手の届く距離で会おう。

 

 

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