るろうに剣心、横顔編

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男は横顔で決まる。

これはもう間違いないと断言する。とにもかくにも男は横顔が美しければ、女の心をグッと掴んではなさない。

男性はぜひともメモしておいてほしい。

 

 

世の中のあらゆる出来事をバカにし、見下す傾向にあるわたしは、アニメの実写版など問答無用でクソだと決めつけている。

百歩譲ってギャグアニメで、あえての実写化ならば甘んじて許そう。だが感動系のアニメを実写化することだけは、作者の威厳と読者の夢のためにも、ぜひともご遠慮願いたい。

この掟を破ったせいで、どれほど多くの読者が怒りと失望を味わわされてきたことか。

 

しかし、だ。

 

わたしが唯一許せる、そして涙するアニメの実写版というものが存在する。それは「るろうに剣心」というアニメだ。明治前半の日本を舞台にした、人斬り改め浪人が主人公の話である。

これはぜひとも、騙されたつもりで映画館へ足を運んでもらいたい。原作のアニメを知らなくても十分楽しめる作り、というよりこれで一つの作品として仕上がっている。

もしもイマイチだったら、映画代を返金してやってもいい。

 

ストーリーは原作に忠実で、アニメも映画もいずれも高評価。しかし観客が最も恐れる「キャスティング」について、ここが有無を言わさず完璧なのだ。

 

所詮、アニメの実写版。どんな俳優を持ってこようが原作を超えることなど無いーー。

 

多くの「るろ剣ファン」がそう思っていただろう。だがその蔑んだ思惑を、見事に裏切る演技派俳優が勢ぞろいしたのだ。

主人公の佐藤健、ヒロインの武井咲、重要人物である江口洋介に続き、蒼井優、青木崇高、伊勢谷友介。これらおなじみのメンバーに加え、敵役として新田真剣佑が抜擢された。

 

さらに特筆すべきは、見事な殺陣(たて)ではなく男性陣の横顔の美しさだ。

 

目が隠れるほどの長い前髪から、筋の通った美しい鼻がスッと現れる。さらに視線を下げると、無意味な言葉すら艶やかにしてしまう魅惑の唇が。その下唇から続くは、ツンと鋭い曲線を描く華奢なアゴ。

これらの要素が、どの俳優からも放たれているのだ。

 

ーー男は横顔だ。

 

今日ほど強く思ったことはない。横顔というのは、正面から見るよりも想像力をかき立てられる。

片側しか与えられない不安定な条件と、そこから膨らむ妄想とが、その男をより美しく妖艶に「美の象徴」へと導くのだろう。

 

正面から顔を見てしまえば、いわずもがなほぼ全てを把握できる。輪郭、大きさ、目や鼻などパーツの配置、バランス。これらを一目でインプットすることとなる。

 

だが横顔は、それを許さない。

 

ーーこの男は、正面から見るとどんな表情をしているのだろう。

ーーまつ毛の長さや鼻の高さ、口の尖り方は、横顔からしか得られない貴重な情報源。

ーーあぁ、いつまでもこの角度から眺めていたい。

 

女にこう思わせる魅力、もとい魔力が、男の横顔にはある。

ただし気を付けなければならないのは、この魔力を使える横顔は美しい横顔に限るということだ。

むやみやたらに横顔を誇示したところで、ダメなものはダメ。ビリケンの横顔は、いつまでたってもビリケンでしかない。

 

 

結局、人は完璧な美しさよりやや欠けた美しさを好むのかもしれない。

世の女は、不完全な描写に想像力をプラスすることで、現実には存在しない美しい男をイメージし、荒んだ心を潤しているのかもしれない。

 

そういえば過去に一人だけ、横顔の美しい男がいた。

日本人にしては珍しく凹凸のハッキリした横顔は、ギリシャ彫刻を彷彿とさせる。そして存在感のある整った鼻と薄情そうな薄い唇が、淫靡な魅力を醸し出していた。年相応にたるんだアゴですら、逆に愛おしさを感じる。

 

そんな横顔に見とれながらも、ついと正面に立った時。わたしは現実へと引き戻された。

 

ーーうん、リアルとはこんなもんだ。

 

 

Illustrated by オリカ

 

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