ハズレ建築士とアタリ占い師

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占い師、やれるかもしれないーー。

友人が広げる家の設計図を見ながら、わたしは思った。

相談者が求めるものは「安心」でしかないのだから、どれか一つを選択しなければならない場合、常識的に考えて「損」が少なく、皆が平和になれる選択肢を推すのが、占い師の役目ではなかろうか。

 

 

友人の実家は今、建て直しをしている。

しかし、その図面を引いた設計者(建築士)が相当な無能で、ハズレくじを引かされた友人のご両親は被害者となりかけた。大手住宅メーカーという肩書など、なんの担保にもならないことが改めて分かる。

 

施主も業者もそれぞれの言い分はあるにせよ、プロが素人に対して提供すべきは「求められる以上の成果」だ。それを、素人に指摘されて「あぁ、たしかに」などというお粗末は断じて許されない。

さらに今回の設計において、最終的に友人家族をキレさせたポイントがなんとも情けない。

 

「ドンピシャの鬼門に風呂場がある」

 

まぁ、四角い敷地内のどこかにトイレや風呂場は設置しなければならないわけで、ましてや玄関の位置は自ずと絞られてくるから、家相など気にしていたらまともに家は建てられない。

とはいえ、

「鬼門に風呂場を置きますが、日当たりや風通しからいってもここがベストなので、快適な自宅空間をお約束します」

くらいの口上が言えれば上等だ。

なぜなら相手は素人ゆえ、不安要素についてはプロが思うよりも敏感に反応する。そして何らかの安心が確保できない限り、不安は消えないからだ。

 

ましてや友人もご両親もバカじゃない。そこまで家相だの方位学だのに振り回されるつもりもないわけで、とにかく、ここまでの対応の悪さと杜撰(ずさん)な仕事ぶりに堪忍袋の緒が切れたのだ。

 

この「風呂場鬼門事件」が解決されない限り、工事は中断となる。だからといって、こんな複雑な気持ちのまま進めたくはないーー。

 

そんな中、業者は設計者を交代し、代替案を提示してきた。鬼門に置かれた風呂場が、壁を挟んで隣りのウォークインクローゼットと入れ替わっている。

たしかに鬼門から風呂場は外れたが、なぜか、ウォークインクローゼットと風呂場がつながっているではないか。

(これって、洋服カビるんじゃ・・・)

素人のわたしですら予測できる状況を、プロが気付かないものなのか。もしくは湿度のコントロールができる仕組みにでもなっているのか。

 

「鬼門に風呂場」の旧案と、「湿気がダイレクトにクローゼット」の新案と、どちらのほうがマシなのか。考えあぐねたご両親は、占い師へと助けを求めた。

 

 

その占い師の答えを聞く前に、URABE占い師の意見はこうだ。

「お家の南側、全面的に採光が確保されており、開放的でとても明るいつくりですね。そこへ広々としたリビングにベッドルーム。一年を通して快適に過ごせます」

(一呼吸おく)

「その上で、お風呂場は元の位置が良いでしょう。たしかに鬼門ですが、南側から降りそそぐたっぷりの日差しが幸いして、鬼門の影響を封じ込めてくれますから問題ありません」

(キリッ)

これでご両親は、安心して工事を進められるのではないだろうか。

 

そして本物の占い師も、ほぼ同じような内容でご両親を納得させたのだそう。

多分わたしも占い師も、設計図を見せられた時点で「アワワ・・・」と焦ったはず。ーーこれはヒドイ。ヒドイけど、今さら大幅な変更などできるはずがない。この状況を踏まえて、今後の方向性としてベストなのは、せめて生活しやすい家にすることだ。ということは、鬼門は無視して湿気からクローゼットを守ろう。

 

本業の占い師に失礼なので、これはあくまでわたしの予想だが。

 

 

最後に友人が、不敵な笑みを浮かべてこう話す。

「ウチの親がね、ついでにアタシのことも聞いたんだって。そしたらその占い師、ナイスな発言したみたい」

 

どうやらお母さん、年頃の娘が結婚もせず、都内でのびのびと暮らしていることに気を揉んでいる様子。しかし占い師はこんな結果発表をした。

 

「娘さんは過去に2度、結婚の機会がありました。しかしそこで結婚していたら、間違いなく不幸になっていました」

 

それを聞いたお母さん、安堵の表情で娘に向かって一言。

「これで良かったみたいよ。あー、よかった!」

娘は複雑な心境だが、とりあえず母親が嬉しそうに安心する姿には、ホッとしたことだろう。

 

よって、占い師とは「究極にポジティブな現実を与えてくれる職業」だといえる。

 

 

Illustrated by 希鳳

 

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