自称・ポテトヘッドの伝道師

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突然だが、わたしはディズニーやサンリオといった、有名どころのキャラクターに興味がない。その道のファンには申し訳ないが、一ミリもかわいいと思わないし、あんなもののために大枚をはたく神経が理解できないのである。

 

ちなみに、ディズニーといえばミッキー&ミニーにドナルド、プーなど誰もが知っている王道キャラクターをはじめ、どこをどう見ても単なるクマのぬいぐるみでしかないダッフィーや、その正体はエイリアンというスティッチなど、なぜこのキャラクターが人気なのか分からないものたくさん存在する。

中でも理解に苦しむのは、ミシュランマンの親戚といっても過言ではない容姿の「ベイマックス」だ。

全身真っ白でふくよかなボディに、花園神社の境内にある「鈴」をモチーフにした、二つの点と一本の線でできた簡易的な顔を持つベイマックスは、誤解を恐れずにいうと「ディズニーキャラクターでなければ、絶対に人気のないキャラ」である。

 

だって、よく考えてみてほしい。リアルに一筆書きでで仕上がる顔である上に、それ以外は白一色という単純なカラーリングのキャラが、「キャー!カワイイ!」などと騒がれるはずもないからだ。

むしろ、その辺の暗闇からベイマックスが現れたら、それはもう大事件なわけで、誰もが泣き叫び逃げ惑うこと間違いなし。

そんな"白い謎グッズ"が、事もあろうにディズニーリゾートの至る所で売られているのだ。

 

(こんなもののどこがカワイイんだろうか・・・)

ベイマックスのぬいぐるみに一瞥をくれながら、わたしは内心忌々しい気持ちで一杯だった。なぜなら、何を隠そうこのわたし、見た目からは想像もつかないだろうが、唯一無二の"推しキャラ"がいるのだ。しかも、ディズニーのキャラクター・・・。

 

推しの名は「ミスター・ポテトヘッド(略称:ポテト)」、ジャガイモのおもちゃであるポテトは、目や口、鼻、ヒゲといったパーツが着脱可能で、ひょうきんな見た目がチャームポイントのキャラクター。

ポテトを初めてみた瞬間、シュールな見た目と鮮やかなカラーリングの虜となったわたしは、手当たり次第にポテトグッズを買い漁るようになった。そのため、わが家に調味料は存在しないが、ポテト夫妻の塩コショウ入れが飾られているなど、ポテトを愛しポテトと共に暮らしているのである。

 

せっかくの機会なので、"ポテトヘッドに関する重要な小ネタ"をひとつ披露しておこう。あの愛らしい見た目が特徴のポテトヘッドは、誰もが「トイ・ストーリーから誕生したキャラ」だと思っているが、じつは違う。

ポテトの生みの親はアメリカの玩具メーカーハズブロ社で、"目や耳など、顔のパーツを集めてジャガイモに突き刺すと、ジャガイモ人形ができあがる"という朝食シリアルのおまけとして、1940年から50年にかけて全米各地で大人気となった、有名な子ども用おもちゃなのだ。

 

さらに1985年には、アメリカ最大のジャガイモ生産地であるアイダホ州のボイシ市長選挙で、「ミスター・ポテトヘッド」が4票を獲得するなど、政治の世界からも熱烈なラブコールを受けたポテトヘッド。

その後、1995年に映画「トイ・ストーリー」で、ミスター&ミセス・ポテトヘッドとして登場し、わが国・日本における知名度を上げるなど、アメリカ生まれの人気キャラクターとして世界進出を果たしたのである。

 

そのため、稀に「ニセモノポテト」なるものがネットで晒されるが、あれはニセモノではなくホンモノだ。ディズニーキャラクターとしてのポテトヘッドではなく、ハズブロ社を代表する「元祖・ポテトヘッド」こそが、偽ポテトの正体なのだから。

このような裏事情も含めて、わたしはあらゆるポテトを収集している。ニセモノでもホンモノでも、ポテトはポテト。胡散臭い表情やフォルムも含めて、ポテトを愛しているのだから——。

 

 

——おっと、話をベイマックスに戻そう。ポテトヘッド愛にあふれるわたしは、必死になってディズニーシーの敷地内でポテトグッズを探した。それなのになぜか、どれほどキョロキョロしてもポテトの姿が見当たらないのだ。

そしてポテトの代わりに視界に入ってくるのは、あのホワイトふくよかボディのベイマックスだった。

(なぜだ・・なぜこんな地味で単調なキャラに、カラフルでチャーミングなポテトが負けるんだ)

 

改めて周囲を見渡すも、ポテトヘッドのグッズを身に着けている者はおらず、必然的にわたしは"ポテトヘッドの伝道師"という地位を確立することとなった。

(仕方ない、布教活動でもするか・・)

たった一つのポテトヘッド関連商品——ギャグだろうが、ポテトチップス——の売れ行きが芳しくないことを察知したわたしは、店員の目を盗みながら棚の奥に放置された在庫を手前に引き出した。並列された菓子よりも手前に並べることで、顧客の目に留まりやすくしてやったのだ。

(・・・これでよし、と!)

 

その後、グッズの売れ行きがベイマックスを上回ったかどうかは不明だが、今後もポテトヘッドの布教活動に尽力することを、密かに誓うのであった。

 

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