どうやらブロッコリーが「指定野菜」とやらに選ばれたらしい。指定野菜とは、野菜生産出荷安定法第二条によると
「この法律において『指定野菜』とは、消費量が相対的に多く又は多くなることが見込まれる野菜であつて、その種類、通常の出荷時期等により政令で定める種別に属するものをいう。」
と定義されている。今現在、指定野菜は14種類あり、日本人が好んで食べるものばかりが並んでいる。キャベツ、さといも、だいこん、たまねぎ、にんじん、ねぎ、はくさい、ばれいしょ、ほうれんそう、レタス、きゅうり、トマト、なす、ピーマン。
(ば、ばれいしょ?・・・あぁジャガイモのことか)
それにしても、さといもがランクインしているのにブロッコリーが選外とは、ちょっと意外である。
ちなみに、指定野菜の価格が下落した場合には国から補助金が交付されるため、生産者の生活保障と市場への安定した供給が可能となる。それならば、指定野菜に選ばれたほうが生産者も野菜自身も幸せだろう。
なお、「指定野菜に準ずる野菜」として、特定野菜というものが定められている。野菜生産出荷安定法施行規則第八条によると、アスパラガスやえだまめ、カボチャ、すいかなどに交じってブロッコリーが名を連ねている。つまり、あと一歩で指定野菜になれる者たちの中で、満を持してブロッコリーが王手をかけた形になるわけだ。
今回、2年後にブロッコリーが指定野菜に追加されれば、直近で指定されたジャガイモ(ばれいしょ)から数えて52年ぶりの追加となる。昨今の筋肉ブーム(?)が功を奏したのか、ブロッコリーが昇進したのはいいことだが、それにしても納得いかないことがある。
(・・・なぜ、さつまいもが指定野菜に入っていないのだ)
わたしは自他共に認めるさつまいもフリークである。これを言うと「さつまいもなら何でも好き」だと勘違いされるので、念のため補足しておくが、わたしは「干し芋」は好きではない。
厳密には「焼き芋」「スイートポテト」「大学芋」は好きだが、その他のさつまいも料理は・・といっても、結局のところは干し芋だけが好きではないのかもしれないが、とにかく"さつまいも大使"に選ばれたら立派に役割を果たす自信しかないほど、さつまいもが好きなのだ。
そして、貧しい土壌でも立派に身を実らせるさつまいもは、人間の命を救う"奇跡の野菜"といっても過言ではない。
そんな「みんな大好きさつまいも」が、指定野菜に選ばれていないとは由々しき事態である。最初は、特定野菜にも「さつまいも」の文字は見られなかったが、どうやら「かんしょ」がさつまいものことらしい。つまり、35品目ある特定野菜の一つではあるが、指定野菜ではないということだ。
(なぜブロッコリーが指定野菜に格上げされて、さつまいもが現状維持なのだ・・)
寒い季節にドン・キホーテの前を通れば、そこから漂う焼き芋の匂いに誘われて、ついつい店内へ迷い込んでしまう経験は誰しも一度はあるだろう。ほかにも、季節によってはスイートポテト本体だけでなく、ラテやパイとしてさつまいもが重宝されるのも事実。
少なくとも、ブロッコリーよりは日本人に愛されているのではなかろうか——。
なんせさつまいもは、皮をむくことも味付けをする必要もない。ただただレンジで加熱するだけで、信じられないほど甘くて美味な食べ物へと変身するわけで。
それに比べてブロッコリーは、塩やマヨネーズで味付けをして食べるのが一般的。無論、そのまま食べてもブロッコリーの味を満喫できるが、より美味く食べるには味付けをするほうがベター。
つまり、さつまいものほうが何かと優位に立つ野菜といえるではないか。それなのになぜ——。
*
悶々とする気持ちを抑えながら、焼き芋メーカーからさつまいもを取り出すと、おもむろに口へと運んだ。
(あぁ、やはり美味・・・)
いつしか、さつまいもが指定野菜に名を連ねる日がくることを、切に願うのであった。
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