マイナ保険証を有しないすべての民に告ぐ

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(・・まぁ、そうなるよな)

社労士界のジャンプ、いや、モーニングともいえる「月刊社労士9月号」に目を通しながら、わたしは思わず呟いた。

なんのことかというと、令和6年秋に健康保険証が廃止され、マイナ保険証に一本化されるという方針をゴリ押ししようとした政府だが、当分の間はマイナ保険証を保有しないすべての人に、「資格確認書」を交付することにした・・という件だ。

 

今までの流れでは、

「健康保険証は廃止するから、医療機関を受診したければマイナ保険証に変えろ!」

という乱暴なものだった。もちろん、医療DXを推し進めるためにはマイナ保険証の導入は必須である。だが、電子マネーやクレジット決済へのポイント還元などというカネのバラマキで、マイナンバーカードの交付を強制するやり方は、どうもキナ臭くて乗れなかった。

結局、そのポイント還元に使われるカネはどこから出ているのか、そして誰が儲けているのか——。見えないところで金儲けをした企業やヒトがいる、というだけのことだからだ。

 

そしてとうとう、国民皆保険制度をウリにしている日本において、健康保険証を廃止してマイナ保険証に一本化するという、かなり強烈なゴリ押しが表明された。保険料を徴収する形で医療制度が成り立っているにもかかわらず、マイナ保険証がなければ健康保険制度を利用できないというのは、どう考えてもおかしな話である。

そんな雲行きの怪しいマイナ保険証の行方を傍観していたところ、政府は8月24日、社会保障審議会医療保険部会にて、「マイナ保険証によるオンライン資格確認を基本とするが、当分の間は、マイナ保険証を保有しないすべての人を対象に、資格確認書を申請によらず交付する」という最終決定を下した。

さらに、資格確認書の有効期間の上限についても、これまでは1年としていたものを5年以内で保険者が設定することとなった。

 

しかもこの「資格確認書」は、無料で発行される上に申請がなくても交付されるとのこと。つまり、放っておいても手元に届くというわけだ。

(あぁ、やっぱり・・)

どうせならば、マイナンバーカードを強制的に交付してしまえばいいのに。むしろそこへ公費を投入するべきではないのか——。

申請主義を貫く以上、人々は自ら申請しなければその恩恵を受けることができない。年金も生活保護もすべて、本人からの申請が必要となり、「知らなかった」では済まされないわけで。

 

だがこれをやっていると、利用資格を有するにもかかわらず、サービス自体に手が届かない現実が待っている。たとえば障害者や高齢者・児童など、社会的弱者とされる人々は、申請自体がハードルとなる場合もあるからだ。

わたしの父がそうだった。全盲の父は凹凸のないスマホの操作はできないが、ガラケーならばボタンが独立しているため可能。だが、ガラケーからではマイナンバーカードの申請はできず、結局、誰かのサポートを受けたり役所へ出向いたりしなければならなかった。

 

とはいえ、全国の郵便局でマイナンバーカードの申請サポートが実施されており、役所の窓口へ行くよりは便利になったかもしれない。個人的には、受け取りが簡単ならばいくらでも申請する気になるのだが・・。

まぁ、そんなこんなでマイナンバーカード未申請のわたしだが、このままでも健康保険証に代わる「資格確認書」が自動的に届くということで、とりあえずは一安心である。

 

ひねくれ者のわたしは、最後の最後でマイナンバーカード交付のハードルがどこまで下がるのか、もう少し静観を続けようと思うのだ。

 

Illustrated by 希鳳

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