オトナの秘密基地「カプセルホテル」へたどり着くまでの障壁

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わたしは今、自宅にいる。それは当たり前のことだ。ところが、ややもするとわたしは成田空港のカプセルホテルに居たかもしれない——。そう考えただけで、後悔と憎悪が渦巻き、冷静さを失いそうになるのである。

(クソッ!!クソクソクソッ!!!)

 

 

8月21日の深夜、わたしは成田空港第二ターミナルに直結する、9h(ナインアワーズ)というカプセルホテル(革新的にオシャレ)を、格安価格で予約した。理由は、23日の早朝の飛行機に搭乗しなければならず、自宅から始発で向かっても間に合わないからだ。

成田空港周辺にはさまざまなホテルがあるが、早朝便に乗るためだけに前泊するのならば、限りなく安価で空港に近いホテルがいい。そしてどのホテルもリムジンバスで空港まで送迎してくれるらしいが、その送迎の時間すら無駄に感じる。

(羽田空港みたいに、空港内にホテルはないのか・・)

いろいろ検索するうちに、成田空港の第二ターミナルに、シャレたカプセルホテルが存在することを突き止めた。・・もはやこれ以外に選択肢はない、ここへ泊まろう!

 

ナインアワーズ成田空港は、宿泊だけでなく仮眠やシャワーだけの利用も可能の様子。これは、乗り継ぎの合間のリフレッシュとしても最適なサービスといえる。

そもそもカプセルホテルというのは、男性しか利用することができないと思っていたが、最近では女性専用が人気らしい。建物すべてが女性専用であったり、フロアごとに女性と男性に分かれていたりと、女性にとっても安心して利用できる設計となっている。

さらに、寝床であるカプセルは当然ながら狭い空間なのだが、たとえば大浴場や高級カフェ、専用ラウンジなどを自由に利用できるのだ。つまり、寝る時にベッドへ潜り込む要領でカプセルに滑り込めばいいわけで、これはわたしの日常と同じ環境ではないか!

 

さらに、ナインアワーズ成田空港は宿泊料金の中にシャワーやタオル、歯ブラシ、スリッパ、館内着などの料金が含まれている。しかも料金は6~7千円なので、飛行機に乗り遅れることなくギリギリまで朝寝坊ができる贅沢を、この程度の金額で買えると思ったら安いものだ。

今までは、自宅から成田空港まで一時間半もかけて向かうのならば、40分でたどり着く羽田空港以外に選択肢などありえないと思っていた。だが、このようなシャレたカプセルホテルが併設されているのならば、豪華な夕飯を食べたと思って前泊するのも、わるくはないだろう。

 

そもそも、カプセルホテルのコンセプトは「秘密基地」をイメージしているに違いない。夢も希望も失ったわれわれ中年の荒んだ心を、子どもの頃のようなキラキラ輝く状態に引き戻してくれるはずである。

・・あぁ、なんというラッキーだ。成田空港万歳!

 

 

いくらナインアワーズの宿泊料金が安いからといって、可能な限り最安値で落札するのが礼儀というもの。そこでわたしは、複数のサイトを同時に開くと料金と内容を比較した。

料金の違いは朝食付きか否かの差なので、「そんなものは不要である」と、バッサリ斬り捨てた結果、残ったのはスタンダードプランのみ。どこのサイトでも数円から数十円の差しかない。

(この程度ならば、どこで予約しても同じか・・)

とはいえ、よく読んでみると「キャッシュバック」なるサービスにより、最終的に安値で宿泊できるサービスも混じっていた。つまり、今回の宿泊は普通の値段を払い、次回以降でキャッシュバック分を利用できるというものだ。

 

出張などでしょっちゅうホテルを予約する人間ならばまだしも、滅多に遠出などしないわたしにとっては、未来のキャッシュバックなど当てにならない。だが如何せん、このキャッシュバックプランが最安値なのだ。

(目先の損得ではなく、もっと長い目で人生を見つめるべきか・・)

そう言い聞かせると、わたしは最安値の呪力に引き寄せられるかのように「予約する」のボタンをクリックした。

 

この最安値には「キャンセル不可」という条件もついている。とくに、当日キャンセルはノーショウ同様に、全額支払いが必要とのこと。これは格安ホテルや格安航空券あるあるで、一発勝負だからこそサイト側も料金を下げるのだ。

(うん、問題ない。なんせわたしは、成田空港の早朝便に乗るのだから)

そしてわたしは、自信を持ってクリックすると予約を完了させた。

 

 

まだ見ぬ秘密基地を想像しながらウキウキするわたしは、予約完了メールを開いた。なんの問題もない。22日の夜、成田空港第二ターミナルへ行けばそれで・・・。

その瞬間、わたしは青ざめた。それどころか心臓が止まりそうになった。

なぜなら、チェックインが8月21日、つまり「今日」になっていたのだ。いやいや、搭乗するのは23日の早朝であり、ナインアワーズに泊まるのはその前日である22日のはず。そう予約したはず——。

 

わたしはハッとした。複数のサイトを開いていたことから、実際に予約をしたAgodaで日付を入力した記憶がないのだ。そして、なぜAgodaが最安値だったのかと冷静に考えると、「当日の直前予約だったからではなかろうか」という答えにたどり着いた。

(し、しまった・・・)

すぐさまキャンセルポリシーを読み返すも、やはり「キャンセル不可」としか書かれていない。それでもなんとかならないかと、夜中の3時半にAgodaのカスタマーセンターへ電話をかけた。

「Hello. How can I help you?」

あぁ、ダメだ——。

 

 

こうしてわたしは、立派なホテルに宿泊したかのような金額を支払い、カプセルホテルに泊まることとなったのだ。

こうなったらとにかく、ナインアワーズ成田空港を使い倒すしかない。だがその結果、寝坊でもすればそれこそ事件なので、ただひたすら地団太を踏んで悔しがるしかないのである。

 

サムネイル/9h nine hours

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