財布を持ち歩かないわたしは、現金が必要なときはポケットにダイレクトに突っ込んで外出している。
とはいえ、ここ最近は現金が必要な状況に遭遇しないため、財布というアイテムの必要性からはかなり遠ざかっているわけだが。
ところが、ごくたまに「カネメのモノ」を持参しなければならない時がある。たとえば500円引きのスタンプカードや、割引券付きのレシートなどだ。
この二つならば、スタンプカードのほうがマシである。なぜなら、カードの素材が厚紙だったり磁気カードやICカードだったりするので、ポケットに入れておいても手触りで判断できるからだ。
さらに、スマホをポケットに入れていると、取り出す際にスタンプカードも一緒に引っ張り出してしまうことがあるが、それでもほぼ間違いなく気付くので紛失する確率は少ない。
このように、スタンプカード系ならばまだ許せるが、問題はレシートバージョンだ。
レシートの場合、折りたたんでも紙が薄いため、スマホを取り出すのと同時にハラリと落ちる確率が高い。さらに、小さく折りたたまれたレシートがポケットからこぼれ落ちたとしても、それに気づく人も少なければ、気付いたとしてもわざわざ「落ちましたよ」と声をかける人もいない。
なんなら、ポケットからこぼれ落ちたと見せかけて、わざと捨てたんじゃないか?と、わたしなら疑うわけで。
そんなことからも、レシートバージョンの割引券というのは、あまりありがたくない存在といえる。
とはいえ、スタバの「ワンモアコーヒー」やコンビニ各社の「無料引換券」など、捨てるに捨てられないお宝レシートもあるため、とりあえずポケットに突っ込んでは、そのうち失くしてしまうのである。
だがわたしもバカじゃない。折りたたんだレシートが失くなりやすいことくらい、知っている。だからこそ、たたみ方を工夫したりポケットの場所を選んだりしているのだ。
たとえばたたみ方について、細かくしてしまうと落とした時に気が付かない可能性があるので、あえて半分にたたんだだけの「大きな状態」にする。
よって、ジャケットのポケットに手を突っ込むと、無駄に大きなレシートがガサガサと気になるが、それでも失くす確率は低くなるので我慢するしかない。
そして「どのポケットにしまうか」の場所選びは、すぐさま使うであろうコンビニの無料引換券ならば、ジャケットの外ポケットに入れておく。それこそ、コンビニさえ見つかればすぐさま交換するつもりなので、分かりにくいポケットにしまうと失念する恐れがあり逆効果なのだ。
反対に、指定の場所まで行かなければ使用できない引換券の場合、簡単にポロリをする可能性のある「ジャケットの外ポケット」は避けるべき。代わりに、たとえばジーパンの尻のポケットや、ジャケットの内側にあるポケットなど、そう簡単には逃げ出すことのできないポケットへしまうようにしている。
このように、明確な基準をもってレシートと対峙しているにもかかわらず、洗濯物を干す際にジーパンのポケットから印字の消えたレシートらしき残骸が出てきたり、冬物をクリーニングに出す際に内側ポケットの奥底から期限切れの引換券が出てきたりと、もはやレシートを落としたのと同じ結果となるのであった。
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そして今日、わたしはとあるレシートをジャケットの外ポケットに忍ばせて外出した。そのレシートとは、近所のスーパーで利用できる「期間限定全商品30%オフ」の、会員優待割引レシートだ。
果物やサツマイモを大量に買い込むわたしにとって、30%オフはデカい。その分、いつもより多めに買うことができるからだ。さらに今日が最終日ということで、なんとしても使わなければならない。
だが今日は午前中から外出の予定があり、スーパーへ寄れるのは夜になってしまう。このような事情から、レシートを保管するポケットの場所に迷いはあったが、それでも「気を付けていれば問題ないだろう」ということで、ジャケットの外ポケットを選んだのだ。
午前中、ポケットに手を入れるたびにレシートの存在を確認する。よし、問題ない。
昼過ぎ、スマホと一緒にレシートを引っ張り出してしまい、慌てて逆のポケットへしまう。
夕方、レシートの存在を忘れていたが、少なくともポケットから落とした気配はないので、大丈夫だろう。
こうして夜、近所のスーパーへとやって来たわたしは、ポケットに何度も手を突っ込んでは、この世を去ったレシートの手触りを求めているのである。
(そ、そんなはずはない。スマホを取り出すときは十分気を付けていたし、途中まではちゃんと手触りを確認できていたわけで・・・)
何度も何度も手探りでレシートを探すが、指に触れるのはポケットの裏地素材だけ。どんなにつまもうが引っ張ろうが、レシートが出てくることはなかった。
あぁ、どうしたら割引券付きレシートをなくさずに持ち歩くことができるのだろうか――。
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