頚椎ノビルヤ

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人間の頭は思っている以上に重い。

どうやら頭部だけで4~6kg、そしてうつむくことで頭の重さの数倍の負荷が首にかかるとのこと。前傾が60度だと、なんと27kgもの負荷となり、これは小学3年生の児童の平均体重に相当する負荷なのだそう。(参考:日本生活習慣病予防協会

 

そりゃ重いわ。そして頭部と比べて明らかに太さが足りない首は、起きている間は常に頭を支えているわけで、むやみやたらに頭を下げられたらたまったもんじゃない。

直立の姿勢で首が支える重さが4~6kg、本来このくらいの重さを支持すればいい役割のはずが、スマホが浸透したせいでその5~6倍もの重さに耐えなければならないなんて、首からしたら「聞いてないよ!」となる。

つまり労働契約違反にもほどがある。

 

そしてブラック企業で飼い殺しにされた結果、頸椎ヘルニアや頚椎症を発症する。いわゆる労災だ。

 

まぁこうなってしまえば、雇用主である自分自身がわるい。頚椎は文句も言わずに全力で頭部を支えてくれていたのに、それをいいことにどんどん猫背となり、どんどんスマホを覗きこんだ「ブラック人間」の自業自得だからだ。

そんなブラックなわたしの症状は日に日に悪化し、今日は、左手のしびれが指先から三頭筋まで広がった。さらに首から肩甲骨にかけての疼痛も強さを増し、冷静に座り続けることが困難となってきた。

 

(なんかマズイぞ・・・)

 

しかし先日、整形外科で門前払いを食らったわたしは、検査をすることも薬をもらうこともできない。ただただ痛みとしびれに耐えるしかないのだ。

しかし、こんなことで諦めるような潔さは持ち合わせていない。今こそ人間らしく頭を使って考えよう。まず、頭部の重さが首に影響をおよぼすわけで、その負担を少しでも軽くしてあげることが重要。ということは、頭の位置が上ではなく下にあれば良いのではないか――。

 

わたしは早速、壁に向かって逆立ちをした。

(おぉ、たしかに首がラクだ!)

だがこれは長続きしない。おまけに体重を支え切れない手首が悲鳴をあげる。――ダメだ、これじゃ怪我が増える。

 

つぎに椅子へ腹ばいになり、頭をだらんと下げてみる。これならば手首への負担もなく、首もラクだしいい感じだ。とはいえ、1分もしないうちに頭へ血がのぼり始める。おまけに眼圧が上がる気配もあり、これはまったく良くない。

 

そして思いついたのは、物理的に頭を持ち上げて首への負担を減らすことだ。パートナーがいれば、その人に頭を持ち上げてもらえばいい。だが軟禁状態で他人との接触を禁じられているわたしは、それを一人で行わなければならない。

しばらく考えた末に、ある方法を思いついた。

(柔術の帯を使えばいい!)

帯というものはかなり丈夫にできている。どこかにくくりつけて体重を乗せたところで、切れることもなければ伸びることもない。これこそがわたしの頚椎を解放させる唯一の道具といえる。

 

そして上から引っ張るということは、高所にくくりつける必要があるのだが、あいにくツルンとしたコンクリートでできた我が家には、高所にフックなど存在しない。

ではどこに引っ掛けたらいいのか――。

 

狭い部屋をウロウロした結果、ここしかない!というベストポジションを発見した。それは、玄関のドアハンドルだ。我が家のドアハンドルは四角い鉄板でできている。よって、帯を引っかけたらしっかりと食い込んで抜けない。

さっそく帯で輪っかをつくり、ドアハンドルに引っ掛ける。そして輪っかの端っこに首を通す。最後にドアへもたれかかるように首にかけると・・・まるで自殺志願者じゃないか!!

(ダメダメ、これじゃ方向性が違ってくる)

続いて、ドアにおでこをつけて下向きに輪っかを引っかけてみる。これならばなんとなく人間に頭を引っ張られるのと体勢が似ている・・・いやいや、全然ダメだ!アゴの裏側から頸動脈を圧迫されて、首が伸びるどころか息の根が止まる。

 

こうなると、物理的に頭を持ち上げて首を伸ばす行為は、一人ではかなり難しいことが分かる。だがこんなくだらない実験をしている間も、首の痛みと左手のしびれは増すばかり。

(しょうがない、ポチるしかないか)

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――最初からこうすればよかったのかもしれない。

 

首の痛み、腕のしびれとの戦いは、まだまだ続きそうだ。

 

サムネイル by 希鳳

 

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