映画館の醍醐味

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本日は、巷で話題の「THE FIRST SLAM DUNK」を鑑賞してきた。

「スラムダンク」といえばバスケットボールのバイブル。この漫画を読んで、そしてアニメを観て、何千人いや何万人の子どもがバスケ部へ入部したことか。

部活系のアニメはだいたいどれも面白いが、スラムダンクほど幅広い年齢層で愛されている作品は、タッチとキャプテン翼の他にはないだろう。

 

映画館は満員御礼。最前列から最後列まで老若男女で埋め尽くされている。

とくに30~40代あたりの年齢層が多く見受けられることからも、ミニバス、あるいは中高バスケ部で活躍していた頃に、スラムダンクを読みながら自身と照らし合わせていたのかもしれない。

 

映画スラムダンクの素晴らしさは「音」にある。

映画の冒頭、宮城リョータが兄・ソータと1on1をする場面でのこと。目を閉じていても明らかにわかる、空気がパンパンに詰まったバスケットボールを、アスファルトの上でつく「あの音」に驚かされた。

さらに、バックボード(バスケットゴールの後ろにあるボード)にボールが当たる音や、ボールが地面をテンテンテン…と転がっていく音、砂利まじりのアスファルトをシューズで踏み込んだ時の音など、映像を見なくてもその光景が浮かんでくるほどに、リアルな音が使用されているのだ。

 

もう一つの素晴らしさは「漫画のアニメーション化」であること。

表現が難しいが、パラパラ漫画の質感を保ったアニメーションという感じである。たとえば、遠くにいる人物の顔がのっぺらぼうだったり、動作がなめらか過ぎずに紙ベースの動きを活かしていたりと、漫画派の人間にとっては非常に嬉しいビジュアルに仕上げられていたのだ。

今までのアニメ映画で、このような技法(?)を使った作品は、あっただろうか。そこまで詳しくはないが、少なくともわたしは初めての出会いだった。

 

そしてもう一つ、このような素晴らしい感想を口にすることができた「理由」がある。

 

それは、満員の映画館という極度の緊張状態下で、身動き一つせずに映画を鑑賞したため、必然的にスクリーンに集中させられた結果、細かな部分にまで神経が張り巡らされたからである。

 

右隣は見ず知らずの男性だった。わたしは、コーヒー2つとプレミアムポップコーンを専用トレーに載せて、男性と私の間にある所定の位置に設置した。

だが、コーヒーを取るときにどうしても男性の左腕に触れそうになるのだ。トレーのくぼみが深いせいで、真上にしっかりと持ち上げなければ取れないため、必要以上に男性の近くをコーヒーが通るのである。

(これは絶対に気にしてるはずだ・・・)

申し訳なさそうな表情でコーヒーを取り上げるわたし。だが、そんな表情など伝わるはずもない。

 

さらにポップコーンを食べるにも、紙の袋をガサガサしなければならないため、右側の男性からしたら気が散るし確実に迷惑である。

さらにニオイも気になるだろうから、迂闊につまむことができない。

(ポップコーン、買わなくてもよかったか・・・)

 

さらに、左右前後に人がいるため、足をあげたり伸ばしたりすることはできない。首を左右に倒すことさえ憚られる。

そのうち尻や腰が痛くなってくるが、上半身を動かすことで変に目立ってはいけないため、ジッと我慢するしかない。

 

飲食はしづらい、ストレッチはできない、鼻水をすすることも呼吸をすることも難しい――。

こうなったら、もはや映画に集中する以外にすることがないのである。

 

その結果、わたしは完璧に「映画スラムダンク」を楽しむことができた。

どの場面も鮮明に覚えている。とくに山王戦のラスト5秒(実際には1分くらい)は無音状態となったため、わたしも思わず息を止めてしまった。

会場内が静寂に包まれ、誰一人として雑音をたてる者はいない。そして全員が呼吸を止めて、こう祈っていたはずだ。

 

(は、はやく試合終了してくれ!!!!)

 

そして、桜木花道と流川楓の「パァン!」というタッチ音とともに、観客らは慌てて空気を吸いこんだ、あるいは吐き出したのである。

 

 

満員の映画館というのは、必然的に緊張状態を強いられるからこそ、鑑賞する映画を隅々まで堪能することができる。

そういうことを抜きにしても、スラムダンクは素晴らしい映画だった。

 

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