黄信号

Pocket

 

黄信号の捉え方というのは、法律上の話と現実的な話とで異なる。道路交通法施行令第二条の「信号の意味等」によると、黄色の灯火は、

一 歩行者は、道路の横断を始めてはならず、また、道路を横断している歩行者は、すみやかに、その横断を終わるか、又は横断をやめて引き返さなければならないこと。

二 車両及び路面電車(以下この表において「車両等」という。)は、停止位置をこえて進行してはならないこと。ただし、黄色の灯火の信号が表示された時において当該停止位置に近接しているため安全に停止することができない場合を除く。

ということで、進んではならないと定められている。

「急いで進め」

「注意して進め」

ではない。止まらなければならないのだ。

 

とは言え、歩行者がすでに横断を始めている場合や、車が安全に停止することができない場合は、止まらなくてもいいとされる。

たとえば車を運転中、信号が黄色になったからと急ブレーキを踏んだら、後続車が追突する可能性がある。普通に減速して停止できないならば、逆に事故を招きかねないわけで、そこは状況次第で判断しろというわけだ。

 

これを逆手にとって、停止線のかなり手前で黄色になったにもかかわらず、スピードを上げて信号機を通過しようとするのは違反となる。また、別の信号は青になるわけで、交通事故を引き起こす可能性が高くなる。

 

このように、法律上は禁止されていても現実的に弊害が発生する場合に、ある程度の猶予を与えることは「本音と建前」に似ている。

 

社労士の仕事をしていると、このジレンマに遭遇する機会は多い。法律上はこうなので、そうしなければならない。しかし現実的に無理なケースはよくある。そしてこの辺りのさじ加減こそが、専門家が関与する意味であり価値が求められる部分なのだと考える。

 

「黄信号を進んだのだから、事故が起きようが起きまいが違反だ!」

と信号無視による違反を取締るのは、法律上は正しい。だがこのような(小さな)ことに随時目を光らせるわけにもいかず、歩行者やドライバーの良識に委ねられるのが現状。

また、実際に交通の安全を害するかどうかの判断も確定的なものではない。どこまでがセーフでどこからがアウトなのか、状況にもよるし人にもよるだろう。

 

それを踏まえて、「どこまでならセーフなのか」ではなく、「どういう場合はやむをえないのか」という本質を理解してもらうことが、士業者の役割なのではないかと思う。

法律の話しならば条文を読めば書いてある。ネットを漁れば事例も出てくる。だが、果たしてその事例が今起きている案件に適用できるのかどうかは、ネットでは決して分からない。

 

ちなみに、創業(新規開業)を除く関与先で、従前から労働法を遵守していたところはほぼ皆無。

「うちの会社は労働法の違反はありません!」

と胸を張る会社で、本当に違反のない会社は一つもなかった。些末なことではあるが、社労士から見た法律上の不備や不足は必ずあるのだ。

だがこれはある意味当然のこと。

事業主はある程度の予備知識を入れた上で雇用を行うが、それは表面上の知識であり、実際にその会社に当てはまる内容かどうかの判断をすることは難しい。言うまでもないが、事業主は事業についてはプロだが、労働者を雇用することについては素人なのだから。

 

そこで我々社労士の出番となる。

雇用に関する最低限のルールを知ってもらった上で、法律上違反のない状態に持っていくのが社労士の仕事。そしてそれは、法律をガチガチに守らせることではなく、法律の範囲内でいくつかの方法を提案することにほかならない。

 

「一日8時間、週40時間以上働かせてはならない」

そう労基法で定められているが、社労士ならばこれらの時間を超えて働かせる合法的な方法を知っている。しかもパターンはいくつも考えられる。

 

本音と建前ではないが、法律と事業主をつなぐ道路に設置された信号機が、社労士なのだ。

 

 

サムネイル by 希鳳

 

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です