カレンダーはもう9月だ。外では雨の音がする。
部屋から一歩も出ないわたしは、警戒心を強めながら外部の様子を探る。
雨の音、エレベーターが行き来する音、水道メーターの検針員がメーターボックスが設置されているドアを開ける音。
これといって特別な気配は感じない。
玄関のドアレンズから外を見るも、女性の検針員がウロウロするだけで事件性は感じられない。監視するだけ時間の無駄だ。
ということで、夏はもう終わる。履き物も夏から秋へと変化させなければならない。
せっかく玄関まで来たついでに下駄箱を開けてみる。
(あれ?秋冬のサンダルが一足もない)
夏場はクロックスにビルケンシュトック、たまにキーンのサンダルをとっかえひっかえ履いていた。ビルケンシュトックなど、同じ形を色違いで3足揃える熱の入れようだ。
しかし秋はオシャレな季節。ゴムやビニール、合成樹脂素材のサンダルではなく、革や毛の生えた高級サンダルに切り替えなければならない。
となると、UGG(アグ)の出番だ。
わたしは基本的に、かかとを包み込む形状の履き物を持っていない。いわゆる「靴」というものは履かない主義。
主義というより、足の幅が広かったり独特なフォルムだったりで、スニーカーやランシューですら合わないのだ。
そのため、年間を通して常にサンダルで生活している。
クライアントやお偉いさんに会う際もサンダルのため、フォーマルなサンダルと普段履きのサンダルと、2パターンの用意がある。
中でもUGG(アグ)のサンダルは、一張羅の部類に入る。
そのUGGが消えたのだ。
ーー誰かに盗まれたのか?どこか別の場所に保管したのか?
フル回転で記憶をたどった結果、正解となる「場所」を思い出した。
(・・靴専科だ)
靴専科は、靴専門のクリーニング店。わたしはシーズンが終わると、すべてのサンダルを靴専科へ持っていく。
それがたとえクロックスのような樹脂素材であっても、ペラペラのビーチサンダルであっても、すべてイオンシャワーで洗浄してもらうのだ。
そして昨シーズン活躍した「毛の生えたサンダルたち」を、春先に靴専科へ出したまま、取りに行っていないことに気が付いたわけだ。
(まずいな・・)
さすがに毎シーズン、これをやってはいけない。初回は見逃してもらえるだろうが、2回目以降は確信犯と思われる。ましてや2回目どころか10回目くらいなのだから、弁解の余地もない。
(どのみち今日は雨だから、晴れた日に取りに行こう)
とりあえず秋冬サンダルの行方が分かりホッとしたところで、部屋にもどりベッドを見ると、ニトリの毛布がドサッと投げ捨ててある。
数か月前、ちょうど今くらいの気温のとき、この毛布の扱いに困った記憶が思い出される。
あの時はタオルケットを引っ張り出そうか、毛布で乗り切ろうか迷っていた。だが今は、エアコンと毛布が完璧にマッチしている。
ここ数日、気温が低いためエアコンを使わずに過ごす人もいるだろう。しかし外は雨。えげつない湿度となっているはず。
ただでさえ保湿力の高いコンクリートの我が家は、年中無休でエアコンと除湿器がフル稼働。そのため、エアコンと毛布の最強コンビで快適さを保っているのだ。
(この毛布をクリーニングに出すのは、いつにすれば・・)
わたしはハッとなった。
そうだ。掛布団もクリーニングに出しているではないか。掛布団どころか、秋冬の服もすべてクリーニングに出している。
狭いクローゼットを開けるも、冬に着れそうな上着は見当たらない。そして毎年、秋冬に着る服がないからと新たに購入した結果、後からクリーニングに出していることを思い出し、同じような服がペアで並ぶハメになるのだ。
(布団の保管料とか、請求されたらどうしよう)
何か月も預けっぱなしで、かつ容量もデカいものばかり。小さな町のクリーニング屋にとったら、かなり迷惑な預かり物だろう。
わたしはとりあえず、クリーニング屋へ電話をかけてみた。店主が怒っていたら、雨の中すぐさま取りに行こうと覚悟を決めて。
「あー、URABEさんね。えーっとね、まだできてないんだ。ごめんね、もう少し待ってもらえるかな」
なんと、5カ月ほど経過するが、布団や衣服のクリーニングは終わっていなかった。
どんだけのんびりしてるんだ、店主。
しかしこのおかげで保管料を取られずに済みそうだ。残暑というやつはこれからだろうし、あと2か月くらいはこのままでどうにかなりそうだ。
というわけで、これがズボラでだらしないわたしの、季節の変わり目である。
サムネイル by 希鳳
私と同じような人がいました(笑)
私は冬物のコートを一年間クリーニング屋さんに保管してもらってる状態です(笑)
怒られたことないからあまえてまーす
大手だと保管料取られるらしいよ笑。
地域密着でよかった~