マルイノロッコ

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たまたま通りかかったサーティワンアイスクリームへ、吸い込まれるように入店したわたしは、すかさず店員からアイスが載った試食用のスプーンを手渡された。

この店のいいところは、希望すればアイスを一口食べさせてくれるところである。見た目やネーミングに騙されないよう、まずは味見をした上で購入・・という理想的なショッピングが可能であるため、顧客は安心して「食べ物とは思えないほどカラフルなフレーバー」を選ぶことができるのだ。

 

ショーケースに目を落としながら、わたしは脳内でアイスの「玉」の数を数えた。

(まずは期間限定フレーバーだろう。抹茶とキャラメルにマシュマロが混ぜ込まれた「ティーイットアップ!」に、名前からしてドイツの焼き菓子であろう「メルティシュトーレン」、そしてアイスなのにパイの味は試す価値ありの「カラメルアップルパイ」あたりか。そして定番フレーバーでは、お決まりの「ロッキード」と「抹茶」と・・あぁ、もう一つは何にしよう)

5玉のフレーバーを選んだわたしは、「どうせなら収まりのいい6個にしたい」と考え、改めて隅から隅まで目を走らせた・・うーん、ここは店側のイチオシである「ゴディバ監修・マリアージュデュショコラ」あたりで手を打つか——。

 

正しい注文の仕方が分からないわたしは、とりあえず脳内に並んだ「6種類のアイス」が食べたい・・つまり、コーンではなくカップでアイスの「玉」のみを購入したい・・という思いから、

「アイス、丸いの6個カップで」

と、目の前で待ち構える店員に向かって笑顔で告げた。すると彼女が「サイズ」について確認してきたので、

「レギュラーで、3つずつ(カップに)入れて」

と答えた。

 

若干、ダイレクト過ぎるワードチョイスだったかもしれないが、脳内のイメージを優先した結果であり、発音もイントネーションも当然ながら”流暢な日本語”である——いや、そのはずだったのだが、なぜかサイズ表を取り出した店員は、アイスの画像を指で示しながらこう言ったのだ。

「ディス イズ レギュラーサイズ。キッズサイズ イズ スモール」

・・・え?!

 

どうやら彼女は、わたしのことを外国人だと思った様子——ていうか、なんで???

入店から注文までのやり取りを通じて、わたしが日本人であることなど百も承知のはず。それなのになぜ、急にここへきてわざわざ英語・・しかも、使い慣れてないであろう英語をあえて引っ張り出してきたのか。

 

この話を友人にしたところ、なんとも秀逸なメッセージが返ってきた。

「アイス マルイノロッコ カップデ」

・・うぅむ。たしかにこれでは”拙い日本語の外国人”だと思われても仕方がない。しかも、一般的な女性が食べるアイスの量として「レギュラーシングル6個」は、さすがに多すぎると眉をひそめるのも当然。だからこそ、正確なサイズの確認をするべく、画像付きのサイズ表に加えて万国共通の英語で説明してくれたわけだ。

 

とはいえわたしは、店員の心配などよそに「レギュラーシングル6個」のフレーバーを注文したが、そこでもまた「テイクアウト オッケー?」と謎の英語で尋ねられたので、「ここで食べる」と明確な日本語で返してやった。

(あぁ・・もしかすると、これもまた「ココデ タベル」に聞こえてしまったのかもしれないな)

 

そんなわけで、「こんな大量のアイス、一人で食べきれるはずがない」という、明らかに疑いの眼を向ける店員をギャフンと言わせるためにも、わたしは全速力でレギュラーサイズのアイス6玉を胃袋へと搔っ込んだ。

その結果、ものの5分で店を後にすることとなったのである——。

 

 

あの後、休憩に入った店員たちは「結局、あれって日本人なのかな?それとも外国人だったのかな?」という話題で持ち切りだったに違いない。

 

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