この世に不思議なことはたくさんあるが、基本的に目に見えないものは信じられないのがニンゲンというもの。そのため、一般的に目視することが容易ではない幽霊やUFOという存在は、見える者にとっては当たり前でも、見えない者——わたしを筆頭にほとんどの凡人にとっては、その存在を否定せざるを得ないのである。
そんな前置きをした上で、先日、わたしは一風変わった整体を訪れた。予てから友人に勧められていたのだが、行動を起こす前に怪我や体の不調が治ってしまい、行くに行けない「行く行く詐欺」状態だった。
ところが今回、頸椎ヘルニアという重症を負ったため、ついに治療を受けることが叶ったのだ。ちなみにその治療院は、整体と鍼灸のほかに「波動」という文字があり、この目に見えない怪しげな項目が一般的には敬遠されがちなところ。
だがわたしは、科学技術の結晶であるMRI画像を元に、優秀な整形外科医の診断と、攻めの医療たる西洋医学による処置を施された身であり、誰がどう考えても「3か月の療養(安静)が必要」であることに異論はない。だからこそ、その”一風変わった治療院”へ足を運ぶ気になったのである。
とはいえ、そもそも鍼灸院なので、施術者は「はり師・きゅう師」の国家資格者であることは確実だし、高田馬場という一等地で治療院を長年経営してきた実績からも、信頼に足る施術を提供してきたのは間違いない。
そんなわけで、いそいそとドアを開けると治療の順番を待ったのである。
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結果として、指先まで轟いていた痺れが消えた。なお、肩甲骨まわりの疼痛は緩和したものの、痛みとして「まったくなくなった」という状態にはならなかったが、明らかに変わったことがある。それは「なんか健康になった」という感覚だった。
そもそも最初に、施術をしてくれる先生へMRI画像を見せたところ、「これはひどい・・安静にしておくべきでしょう」とさじを投げられたわけで、誰も「治してあげる」とか「痛みを消してあげる」などと言われたわけではない。
ならば彼は何をしたのか——全身の状態を整えてくれたのだ。
首や肩回りに何かをするのかと思えば、むしろ胸や腹、骨盤、足の指など、今のわたしに関係なさそうな箇所へ圧力をかけて、内臓の位置を整えたり全身の巡りをよくしてくれりした様子。
ちなみにだが、首の可動域が広がったのは事実。神経根症の部位を刺激しない手技で、その他の骨のバランスを整えてくれたのだろう。とにかく、見えなかった天井の照明が見えるようになったので間違いない。
そんなこんなで、不思議な・・というか丁寧な施術を受けた後に、今度は主治医たる整形外科医の診察を迎えたわたしは、ふとその話をしてみた。するとドクターは、
「正直、どれの効果があった・・という話ではないと思うんです。その施術が奏効したのかもしれないし、一週間という時間経過がそうさせたのかもしれないし、神経ブロックの注射が効いてきたのかもしれない。特定のどれかが良かった、というわけではないと思うんです」
と、なるほど納得の意見を述べてくれたのだ。
そしてわたしも、それ以上食い下がることはしなかった。「じゃあ、完全に痛みやしびれが消えたのか?」と聞かれればそんなことはないし、再度MRIを撮ったところで大きな変化はないだろう。なによりも、実際に彼の言うとおりだと思ったからだ。
ただ一つだけ、わたしが得た「なんか健康になった」という漲(みなぎ)る感覚は紛れもない事実であり、他人に理解および共感してもらう必要はない。とにかく、全身のバランスが取れたとでもいおうか、あぁなんかラッキーだな・・と思うのであった。
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この世にはまだまだたくさんの不思議なことが存在する。その中のひとつに「波動」や「生体エネルギー」といった、一般的にはオカルトチックな響きのワードが控えているのだが、わたしはそれらを否定しない。それどころか、ぜひとも体感したいし操ってみたい・・と願うのである。
なんせ、量子力学において「波動」は重要な現象であり、この世の全てを解き明かすカギとなるのだから。




















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