脆弱なデジタル化、侮るなアナログ派

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デジタル化、AI導入、業務における電子申請の活用。

政府が推し進めるこれらの方向性は、決して間違っていないし我々もそれを望んでいる。

だとしたら、こういう対応はいかがなものかと思う。

 

・山﨑、川﨑など”﨑”のつくりが「立」の場合、電子申請ではエラーとなる

・マイナンバーで確認できるにもかかわらず、「名字のフリガナが”ナカジマ”ではなく”ナカシマ”なので返戻します」

・電子申請にもかかわらず「36協定の原本を確認させてください」

 

こんなことをされれば「いじわる」としか思えない。

戸籍上の氏名を入力したら「エラー」となり申請できない。ならばと旧字や俗字、略字などの環境依存文字を使わずに申請すれば、「戸籍上の漢字と異なるので返戻します」と一蹴される。

おいおい、どうすりゃいいんだよ。

 

これが「紙の書類」で提出した場合、ちゃんと通ってしまうのだからやりきれない。

手書きの場合、クセのある字や乱れた字で読みにくいことがある。よって、﨑の字がどう書かれていようが、フリガナの濁点があろうがなかろうが、なんならフリガナが抜けていようが、申請は通る。

数字が読みにくいとき(0と6、1と7など)には、役所側で確認できる部分はよしなに取り計らわれる。そうでなくても電話で確認するなどして、切手代をかけてまでわざわざ突っ返されることはない。

 

ところが電子申請の場合、AIの自動判定や担当者が返戻ボタンをクリックすることにより、一方的に戻される。

 

こちらからすれば「こんなことなら紙で申請するほうが楽じゃないか!」と愚痴らずにはいられない。

 

とはいえ策はある。

わたしの場合、環境依存文字を使用した氏名や企業名の申請は常用漢字で行い、正しい漢字について「手紙」を添付することで補う。

 

この方法はとても便利で、わたしの文面はこうだ。

「以上について疑問点や不備がございましたら、返戻前に必ず、URABEまでご連絡いただきたく存じます。090-****-****」

 

手紙を添付して無言で突っ返されたことは一度もない。だが結局、これも人間へ訴えかける手段であり、機械相手には通用しない。

 

業務処理においてAIを活用することは、ミスの削減やスピードアップなど、メリットが多い。

しかしAI側で判別できるはずの「濁点の有無」や「数字の誤記」といったケアレスミスの度に返戻されては、業務の効率化は望めない。

 

さらに追及すると、

「じゃあ何のためにマイナンバーを入力するんですか?」

となる。

 

マイナンバーといえば新たに法律まで作り上げ、その取扱いは過去に例を見ないほど複雑かつ厳重に行うよう言い渡されている。

 

にもかかわらず、なぜ、マイナンバーで紐づけされた情報を優先せずに、申請者の「誤記」を優先するのか。

そこまでして人間の「ミス」を取り上げ、非難したいのか。

そうでなければ何のための電子化、簡素化、効率化なのか。

 

ーー全くもって謎だ。少なくともわたしには理解できない。

 

 

先日の友人との会話が面白かった。

システム関連企業の代表を務める彼は、大企業ならではの嫌がらせに遭う。

ある日、こんな手紙が会社へ届いたのだそう。

 

「社長が不倫している」

 

それを聞いたわたしは「バレないようにやらなきゃダメじゃん」と助言するも、友人は否定。その後、さらに別の手紙が。

 

「社長が経費を不正使用している」

 

またもやわたしが「ダメじゃん、ちゃんとしなよ」と咎めるも、友人は否定。さらに別の手紙が。

 

「社長が仕事をさぼって会議室で寝ている」

 

いやいやこのくらいはいいでしょ、と思うが、彼にとってはどれも身に覚えのない話だそう。

しかし、上場企業のトップが起こした不祥事を見逃すわけにはいかず、調査委員会を設けて徹底的に調べた。

 

結果は言うまでもなく「シロ」。

だがこの事件、怪文書が手紙だったからこそ成し得た業だといえる。これがメールならば足がつく可能性があり、迂闊に怪文書など送れない。しかし郵便ならば、このあたりを煙に巻くことが可能。

 

うーん。

デジタルとアナログの使い分けは、今後も継続的に必要なのかもしれない。

 

 

Illustrated by 希鳳

 

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