(4月からは、自己都合退職が増えるかもしれないな・・)
ふとそんなことを思う深夜二時。なぜなら、今年の4月に"雇用保険法等の一部を改正する法律等の施行"があるからだ。
中でも目玉となるのは、「自己都合退職者の給付制限が短縮、あるいは解除となる見直し」だろう。
そもそも令和2年10月よりも前は、自己都合退職の場合は3カ月の給付制限期間があった。そのため、退職するにしても再就職先が決まっていない場合、3か月間は無収入となる恐怖に怯える労働者が多かったのも事実。
ところがその後、給付制限期間が2カ月に短縮され、ついに今年の4月からは1カ月となるのだ。
たとえば、給与の締め日が月末で支払日が翌月末の会社で働いていた労働者が、3月末で退職したとしよう。そうすると、4月1日から無職となるためハローワークで求職の申し込みを行うこととなる(再就職先が決まっていない失業者のみ)。
その後7日間の待期期間を経て、五年前ならば3か月の給付制限期間を挟むため、ざっくり計算すると7月末あるいは8月上旬に失業の認定がされた後に、基本手当の受給となるスケジュールだった。
ところが令和2年10月からは、給付制限期間が2ヶ月に短縮されたため、6月末あるいは7月上旬に失業の認定と受給・・という流れになった。
それがいよいよ、今年の4月からは5月の末あるいは6月上旬に失業の認定&受給という、スピーディーな手続きが可能となるのだ。
この(通達の)改正のどこが素晴らしいかというと、末締め翌月末払いの会社の場合、退職した翌月・・つまり4月末日に3月分の給与が振り込まれるため、無収入の期間が一カ月も存在しなくなるわけだ。
これまでは、少なくとも一か月間は無収入状態が発生してしまうため、それを見込んで退職の計画を立てなければならなかった。だが、その不安が解消されるということは「いつでも気兼ねなく退職できる」と考える、退職希望者がいたとしても不思議ではない。
さらに、「離職期間中や離職日前一年以内に、自らの雇用の安定および就職の促進に資する教育訓練を行った場合」には、給付制限が解除されることとなったため、この条件に該当する求職者は、4月末あるいは5月上旬に失業の認定と受給が可能となるのだ。
となると、在職期間ラストとなる3月分の給与に加えて、待期期間終了後から数えて28日分の基本手当が同時期に振り込まれることから、本人の口座はホクホク状態となるのである。
(・・う、うらやましい)
その昔は「終身雇用こそ正義」という、洗脳に近い呪いが日本人にかけられていたため、転職するとなればその間の生活費に苦労したり中途採用枠は少なかったりと、レールから外れた脱落者にとっては生きにくい時代だった。
ところが今は、基本手当(失業給付)をもらうまでにたった一カ月我慢すればいいだけとなり、先にも述べた通り、最終月の給与と合わせるとほぼタイムラグなく収入を繋ぐことができる。
こうして家賃や光熱費、食費、スマホ代など最低限の支払いを確保できるとなれば、精神的にも安定するので求職活動にも身が入る。その結果、早期に内定をもらい再び職に就くことができるのだ。
——となると、労働者にとってはさらに転職しやすい環境が整うわけだが、企業側にとっては内心ドキドキの状況となるのではなかろうか。
給与締め日に退職すれば、少なくともそこまで働いた分の賃金を受け取ることができるため、すぐさまハローワークで求職の申し込みをすれば、今後の収入の心配をしなくて済む。そこからゆっくりと転職または独立について考えたって遅くはないし、むしろ在籍しながらの転職活動よりも気が楽かもしれない。
・・このように考える労働者が4月以降に増えるとすると、「私、今月末で辞めますね」と、カジュアルかつ強制的に去っていく人数も増える可能性がある。
無論、「退職届は二カ月前に提出すること」など、退職に関する事項が定められているはずだが、とはいえ法律上その効力は皆無に等しい。あくまで同僚や会社に対するマナーとして、「早めに退職の意思表示をして、業務の引継ぎを行うのが常識ある社会人」とされているだけで、実際に出社しなければ打つ手なし・・というのが現実なのだ。
ということは、なおさら労使間の信頼関係が重要となってくるわけで——。
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・・以上、なんとなく4月を迎えるのが億劫になりつつある社労士の独り言であった。
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