マイナポータルのログインパスワードを3回連続で間違えると・・・

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「そういえば来年、二回目の更新だわ」

そう言いながらマイナンバーカードを取り出す友人。この制度が始まった頃には、やれ資産をすべて持っていかれるだの、数字で個人を管理するなど言語道断だの、日本全国が陰謀論でうごめいていた。加えて、立派な法律まで制定され企業側に厳重なマイナンバー管理を強いるなど、表面上は「情報漏洩対策は万全」という茶番を演じてきたわけだ。

そしていよいよ、来月からは健康保険証の新規発行が廃止され、マイナ保険証という形でマイナンバーカードで受診することになり、来年には運転免許証もマイナンバーカードと一体化させるなど、任意のはずのマイナンバーカードは半強制的にわれわれの社会生活を囲みつつある。

・・などど、マイナンバーカードを持っていないわたしはため息をつくのであった。

 

そうこうするうちに、友人は二度目更新を迎えているのだから、時が経つのは本当に早いものだ。そして今回、果たして友人は"マイナ保険証への連携を済ませているのかどうかが分からない"というので、マイナンバーカード未所持のわたしがマイナポータルへアクセスし、彼女のマイナンバーカードの現状を確認することになった。

(もしもわたしが悪者だったら、個人情報ダダ洩れということか・・)

当然ながら、まずはマイナポータルへログインする必要があるので、4桁のパスワードを入力してマイナンバーカードの上へスマホをかざすと——パスワードが間違っています。

 

「えー、それじゃあ1234かなぁ」

言われた通りに改めて数字を入力し直すと、再度、マイナンバーカードの上にスマホかざす——パスワードが間違っています。おまけに「あと一回でパスワードはロックされます」という、恐ろしいメッセージが現れた。

ちなみに、パスワードがロックされたらどうすればいいのかというと「住民票がある市区町村の窓口へ出向き、パスワードのロック解除の手続きを行う」という、非常に面倒くさい手段を強制される。となると、実質的に次がラストチャンスとなるわけだが、友人は「んー、じゃあ9876かな。いや、1357? あ、0123かも!」などと、いくつものパスワード候補を挙げるので不安は拭えない。

とはいえ、こうなったら覚悟を決めて挑むしかないので、三つの候補番号から一つを彼女に選んでもらった。

「ファイナルアンサーでいいね?」

「・・フ、ファイナルアンサー!」

某司会者の気持ちを噛みしめながら、わたしは最後の数字を入力すると、スマホをマイナンバーカードの上にかざして祈った——たのむ、どうかこれで正解にしてくれ。わざわざ役所へ出向くなどという手間をとらせないでくれ。

 

すると、今までよりも少し時間をかけて考えていたスマホの画面が、何事もなかったかのように次へと進んだ——正解だ!!

 

友人とガッチリ握手を交わしたわたしは、その先に表示されたマイナ保険証の情報を彼女に見せた。結局のところすでに連携済みで、新たに何かをする必要はなかったのだ。おまけに「とりあえず病院で、マイナンバーカードを出してみればよかったんじゃ・・」と、今さらながら気づくのであった。

とはいえ、ログインパスワードは今後も必須のアイテムなので、今回の件で再確認できてよかった。延べ五つの候補番号を持つ彼女は、ビンゴの番号に丸をすると大切に保管することを誓った——こうしてパスワードは、前回と同様に深い階層で眠りにつくのだろう。

 

それにしても、パスワードがロックされたら役所の窓口へ出向かなければならない・・というのは、どう考えてもわたしには耐えられない。なんせ、マイナンバーカードを作っていない理由が"役所へ取りに行くのが面倒だから"というだけの理由なのだから。

来春からはiPhoneで、マイナンバーカードのサービスがすべて使える機能が搭載されるが、その時点で「マイナンバーカードを持っていなければ、ウォレット機能も使えない」となれば詰みである。・・政府も、そこまでしてマイナンバーカードを持たせたいならば、強制的に送り付けてくれればいいじゃないか。任意といっておきながら、健康保険証にしても運転免許証にしても、マイナンバーカードと連携させたほうが診療報酬や更新手数料が安くなるわけで、これはいわば"脅し"と同じである。

(・・きっといつか、強制的に送りつけてくる日が来ると願いたい)

 

ちなみに、運転免許証は"マイナ免許証と既存の免許証との複数所持"が可能。だが、二つの保険証を所持する場合は更新手数料も余計にかかるので注意が必要。とはいえ、既存の免許証だけならば2,850円のところをマイナ保険証の更新ならば2,100円、両方を更新する場合は2,950円という微々たる負担ではあるが。

それと、マイナ免許証しか持っていない人がマイナンバーカードを紛失すると、無免許運転となることを覚えておいてほしい。このリスクを考えると、どのみち既存の運転免許証も所持しておかないと安心できないだろう。

 

 

まだまだ手探り状態のマイナンバーカードの運用だろうが、将来的には税情報から社会保障関連まですべての個人情報がクラウド上で連携されて、非フィジカル環境でもう一人の「自分」が存在することになる。物理的な自分とデータ的な自分と、果たしてどちらが世界にとって必要な"自分"になるのだろうか。

・・なんていう都市伝説めいた未来を想像するのであった。

 

Illustrated by 希鳳

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