朝倉兄弟の弟、RIZINチャンピオン「朝倉海」

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RIZIN.23で、ついに我がジムの選手がチャンピオンベルトを巻いた。

 

朝倉海(アサクラ カイ)

 

巷で有名な「朝倉兄弟」の、弟のほう。

 

 

兄は別の意味でも有名な、朝倉未来(アサクラ ミクル)。

「路上の伝説」と呼ばれ、喧嘩は2,000戦2,000勝という、嘘のようなホントの話。

 

私は柔術しかしないが、たまに未来くんにスパーをお願いすると、ものの見事にあしらわれる。

 

あの人に喧嘩を売ろうとか、戦いを挑もうなどという気持ちは毛頭起きない。

 

死をまったく恐れていない。

ヤバい、という言葉を地で行く男だ。

 

 

 

弟の海くんは、本当に「いい奴」という言葉が似合う。

過去のブイ(VTR)で、おじいちゃんとおばあちゃんが出演されたとき、

 

「みっくん(未来くん)は大変やったけど、カイはええ子でなぁ」

 

と、お二人が目を細めていた映像が、忘れられない。

 

 

海くんは、細い。

クローズドガードに入れた時(もちろん、わざと入ってくれるのだが)、そのウエストの細さを、内転筋を通じて感じる。

 

しかし、恐ろしく硬い。

私のような見るからにムキムキのフォルムではないが、スリムな身体に十二分な筋肉が備わっており、骨格も太くずっしりしていることが、同じく内転筋から伝わってきた。

 

そのフレキシブルでソリッドな、相反するフィジカルを駆使して、海くんは柔術の相手をしてくれる。

 

 

彼はMMA(総合格闘技)の選手なので、道着を着ての柔術は、本来必要ないだろう。

 

しかし、そんな素振りを微塵も見せず、他の生徒とともに柔術のテクニックを学んでいる。

そして万能な運動神経に頼ることなく、学んだテクニックを活かしながらスパーをする。

 

頂点に立つプロ格闘家なのに、誰のことも見下さず、笑顔でみんなとスパーをする男なのだ。

 

 

印象的だったのは、白帯の女性が隅っこに座り、みんなのスパーを見ていたときのこと。

 

白帯だから、まだ、スパーに参加するのは気が引けたのだろう。

私が声をかければよかったのに、自分の練習に夢中でそんなことも気がつかなかった。

 

そこへ、海くんが現れた。

 

「●●さん、俺とスパーしよっか!」

 

ジムのインストラクターという立場も考慮すれば、当然と言う人もいるだろう。

しかし海くんは、一人で寂しそうにしている人がいたら、老若男女問わず声をかけ「格闘技」へと誘ってくれるのだ。

 

誘われた人は、嬉しかっただろう。

きっと一生、忘れないだろう。

 

あれから半年が過ぎるが、あの光景のまぶしさをいまだに覚えている。

 

そんな優しい海くんが、ついに、チャンピオンベルトを巻いた。

 

 

 

私は、今年1月に開催されたブラジリアン柔術ヨーロピアン選手権で、青帯だが優勝させてもらった。

その後、紫帯に昇格。

 

しかし、コロナによりその後の試合はすべて白紙。

 

コロナのせいかどうか不明だが、いま柔術にかける想い、というかやる気が失せている。

言葉に出してしまうくらい明らかに。

この先、試合なんてなくてもいい、と本気で思っているしそう願っている。

 

そんななか、昨日のRIZIN.23は私の心を揺さぶった。

 

 

ジムメイトがチャンピオンになったことは当然だが、リングに上がったすべての選手が、言葉では言い表せないほどの苦しい道のりを歩んで、あの場に立ったことを考えると、感無量だった。

 

まず、格闘技につきものの「減量」。

私の競技(ブラジリアン柔術)は、試合直前に計量するため、過度な水抜きはできない(私はするが、すべきではない)。

 

しかし、試合の前日に計量が行われる総合格闘技の場合、すべての選手が無理を承知のキツイ減量をこなしてあの舞台に立っている。

 

海くんなど、このとおりだ。

これで61㎏だそう。

172㎝の総合格闘家が、61㎏だ。

見てのとおり、ここからすでに命がけの戦いが始まっている。

 

対戦相手の扇久保選手だって同じだ。

みんな、表には出さないが何かを背負い、大舞台に立っている。

 

さらに選手は、どこかに怪我を負った状態で参戦する。

骨折、靭帯断裂、そんなの当たり前。

そのくらい壮絶な練習を積み、リングで死んでもいい覚悟で試合に臨むのだ。

 

 

私はプロではないが、海外で体格差のある外国人選手と試合をするとき、いつだって怖い。

減量もシビアだし、常にどこか怪我をしている。

 

それでも、そんな思いをしてまでも、立ちたい舞台があることは幸せなことだ、と。

 

そんな感覚がうっすらとよみがえった

 

 

先週の土曜日、海くんにスパーをお願いしたときのこと。

異常に腫れあがる海くんの右こぶしに、目が釘付けになった。

普通なら、骨折を疑うほどの腫れ方だ。

 

一瞬、聞くのをためらったが、それでも、

 

「その右手、大丈夫なの?」

 

と尋ねると、

 

「全然平気っすよこんなの、なんともない」

 

と、おどけて右手を振りながら、笑顔で答えてくれた。

 

 

――当然だ

 

仮に、骨折していようがいまいが、試合には何の関係もない。

相手だって、きっとどこか怪我をしている。

のたうち回るほどの痛みを抱える大怪我かもしれない。

 

――だからなんだ?

 

それが選手で、それがプロなのだ。

 

 

海くんは若くして、RIZINのバンタム級チャンピオンの座に就いた。

そのうち、兄の未来くんもフェザー級チャンピオンとなるだろう(タイトルマッチさえあれば)。

 

海くんは、RIZINで初勝利したとき、試合後のマイクでこう言った。

 

「みなさん、僕より強い兄貴がいるんで、楽しみに待っててください!」

 

こんな時まで、兄の存在と感謝を忘れない弟だった。

 

 

朝倉兄弟は、強い。

生物として強く、故に優しい。

 

改めて、

海くん、チャンピオンおめでとう。

未来くん、つぎ頼むね。

 

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2件のコメント

海くんから毎回学ぶことばかりです。
ウチのジムは昇格に練習回数の基準があるため、たとえ世界チャンピオンでも規定をクリアしない限り、帯は上がりません。
ですので、海くんのグラップリングや寝技の上手さ強さは、帯色とは当然一致していません。

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