知っているかどうかで、リアルに命が助かるか否かが決まることがあるとすれば・・それは"車ごと水中に放り込まれた時"だろう。
映画などで車ごと海へ突っ込むシーンがあるが、登場する俳優の大部分はハリウッドスターであり、当然ながら確実に生還するシナリオとなっている。よって、アレを鵜呑みにしては人生の幕が閉じてしまうから注意しなければならない。
かといって、仮に海へ落ちたならば恐怖のあまり半狂乱となり、ドアも開けられず窓も下げられず、スマホで110番通報しながら水没していく——というストーリーが、ないとも言い切れないから恐ろしいわけで。
では実際に、運転を誤って車ごと海へ飛び込んでしまった場合、どうやって脱出するのが正しい・・いや、現実的なのだろうか。あくまで素人の考えではあるが、わたしなりの知識と見解を紹介しよう。
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まずは、海水面に着水した瞬間にドアを開ける・・という"心の準備"をしておくことが重要。さすがに着水の衝撃は相当なものだろうから、瞬間的にドアを開けることなど不可能だろうが、それでも「気持ちを準備しておくこと」は絶対に必要である。
(あぁぁ、どうしよう!海に落ちる!もうダメだ・・・)
そんな無意味なことを考えるようでは、まだまだひよっこ。崖から突っ込もうが斜面を転がり落ちようが、気持ちは常に「ドアを開けること」に集中しておかなければならない。
それと同時に、シートベルトを外す準備も忘れてはならない。人はパニックになると視野が狭くなるため、ちょっとしたことでも失念しがち。「や、ヤバイ・・体が動かない!」と大騒ぎする当人の上半身は、シートベルトでガッチリと固定されていた・・なんてミスで命を落としたのでは浮かばれないわけで。
とはいえ、落下する高さにもよるが、アスファルトに叩きつけられたかのような衝撃を受けながら、冷静にシートベルトを外して速やかにドアを開ける・・などという芸当をこなせる人間が、果たしてどのくらいいるのだろうか。
結局のところ、"ある程度の落ち着きを取り戻した頃には、車は何十センチか沈んでいる"と考えるのが無難だとすると、その時点で車のドアは開かない可能性が高い——そう、車内外の水圧差が発生することで、外側からの強い圧力によりドアが開かないのだ。
・・おっと、ここでパニックに陥ってはならない。もしも窓を開けられるようならば窓から脱出すればいいし、それが叶わないからといって家族へダイイング・メッセージを送るのはまだ早い。なぜなら、車内と車外の水圧差・・つまり「水圧の差が小さくなればドアは開けられる」という点に気づかなければならないからだ。
JAFによる、「水深何cmまでドアは開くのか?」のテスト結果によると、セダン車もミニバン(スライドドア)も、完全に水没していれば水深30センチからドアを開けられて、(水深120センチまで実験が行われたが)いずれも1分以内に成功した。しかし、後輪が浮いている状態だと水深60センチの時点でドアは開かなかった。
要するに、車のケツが浮いている状態だと運転席のドアは開かないので、その場合は後部座席へ移動するなりして、水圧の影響を受けていないリアドアを開ける必要がある。もしくは、完全に水没するのを待って水圧差を少なくしてからドアを開ける・・の二択となるわけだ。
なお、「水圧だのなんだの言ってるうちに、パニックで死んでしまうかもしれないじゃないか!」という人で、武闘派またはパワー系であることを自負するタイプには、ヘッドレストを用いてサイドガラスを破壊する方法をオススメしたい。
ヘッドレストを持ち上げてみると、芯の部分に2本の金属棒が現れるだろう。こいつを使って"テコの原理"で割るのだ。
金属棒の一方をサイドガラスと車体の隙間に差し込み、ヘッドレストをトントン叩きながらある程度の深さまで突き刺し、勢いよく真下へ押し込む・・するとテコの働きにより強い力が加わり、サイドガラスが割れるという仕組みである。わたし自身が試したことではないので、果たしてどのくらいの力で破壊できるのかは不明だが、検証系の動画を見るとかなりの確率で割れているので、とりあえず試す価値はあるだろう。
そして、この動画を見ていて思い出したことがある。わたしの愛車であるダミ(スカイラインHR30)は、気まぐれにサイドガラスが落ちるのだ。
真冬の東北道を走行中に、ゴトン!という音とともにサイドガラスが消えたときには驚いたが、「老体のダミならば、サイドガラスくらい落ちてもおかしくない」と、ある程度の想定範囲内の出来事だったため取り乱すことはなかった。
ダミは1982年生まれのおばあちゃん(車の年齢としては)だが、一丁前にパワーウインドウなので、ガラスが落ちた原因はレギュレーターの破損かワイヤーが切れたことによるものだろう。しかし、このとき以外にも、落ちかけたサイドガラスを指でつまんで持ち上げたこともあるので、もしもダミに乗りながら海へと落ちたならば、ダミには申し訳ないが窓ガラスを叩くなりして衝撃を与えたら、すんなり落ちてくれそうな気がする——。
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とにかく、自分が運転しなくても誰かの車の助手席だったりタクシーだったり、いつ海やダムに突っ込むかは分からない。だからこそ、まさかの緊急事態でも生き残る術を身につけておくべきなのだ。
・・ていうか、教習所や免許更新の際に、こういうことを教えたほうがいいのではなかろうか。
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