恋人つなぎのオジサンオバサンカップル、ほぼ不倫説

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本人たちに確認したわけではないので、もしかすると違う可能性もあるのだが、およそ間違いなく"ビンゴ!"だと思われる現象として、こんな事実が挙げられる。それは、「人前で手を繋いだり、イチャイチャしたりするオジサンオバサンカップルは、ほとんどが不倫」である。

 

 

(中高生じゃあるまいし、よくもまぁ白昼堂々と手をつないで・・しかも恋人つなぎで電車に乗るよなぁ)

有楽町線でわたしの正面に座っている、推定40代後半から50代前半と思われる男女が、比較的空いている車内で執拗にイチャイチャしていた。運悪く(?)目の前に座ってしまったわたしは、見たくもないオジサンとオバサンの乳繰り合いを、しばらく鑑賞させられることとなったのだ。

それにしてもこの夫婦は、よくもまぁ人目もはばからずにあんなことするなぁ——ハッ!もしやこれは、夫婦ではなく不倫!?

 

互いの指に指輪はない。結婚しているからといって、必ずしも指輪をはめているわけではないが、それでもあの年くらいのカップルといえば、一般的には結婚している可能性が高い。無論、交際を始めたばかりの熟年カップルの可能性もあるが、どうもそうではない"淫靡なニオイ"をわたしの嗅覚が捉えているのである。

しかも、オンナのほうがかなり積極的にオトコへ接近しているのだ。うわっ、オッサンの首にキスをした!!キモッ!!

一挙手一投足を見逃すまいと、デカい目を見開いて二人の様子を観察しているわたしに、オトコのほうが気がついた。そして瞬間的に、つないでいた手というか指先を緩めたのだ。指先が離れたことを不満に思ったオンナ(いや・・もうすでにメスの顔を露わにした動物、と言うべきか)が、オトコの耳元でなにかを囁いた後に、首へとキスをしたのである。

 

痩せても枯れても、彼ら彼女らはいい年をした社会人。それなのに、公衆の面前でフェロモン全開の性欲を爆発させるなど、通常では考えられない。しかも見た目はごくごく普通の中年男女であり、どちらかと言うとパッとしない地味なタイプなのだ。

見た目で判断してはいけないが、統計的にみても積極的に感情表現をする部類ではないにもかかわらず、あれほどまでに密着し愛情表現を行うことには理由があるはず——そう、この二人は不倫なのだ。

 

あくまでわたしの個人的な嗅覚による判断なので、必ずしもそうであるという確証はない。だが会話を聞いていると、ここ最近の仕事での出来事や共通の知人についての話題など、他愛もない内容ばかり。要するに、普通のカップルならばサラッと交わすであろう会話を、わざわざ恋人つなぎをしたり膝と膝をこすり合わせたりしながら話すことに、妙な違和感を抱いたわけだ。

しかも、脳が未発達の若者ならばまだしも、人生後半に差し掛かっているオトナ・オブ・オトナが、恥じらいもなく昼ドラの再現をするなど尋常ではない。つまり、彼ら彼女らの・・特にオンナ側の脳がバグっているのである。その理由こそが、"健全な付き合いではないから"だと推測できるのである。

 

若い頃はわりと美人だったのではなかろうか・・と思われる、メンヘラっぽさを助長する内斜視のオンナ。事務員が着用しそうな黒いタイトスカートから、艶の消えたカサカサの生足をむき出しにして、オトコにナニかをせがむその姿は、控えめに言ってもメスそのもの。

電車の座席から崩れ落ちるかのように、オトコにしな垂れながら甘い声を囁き続けるわけで、「なにも今、あえてする必要はないだろう!」とツッコみたくなるわけだが、あえて今でなければならない理由がある——そう、彼ら彼女らには"帰る場所"があるからだ。

それぞれには互いの家族や生活があり、現世では叶わぬ恋だった。それでもこうして、どうにかやりくりをしながら逢瀬を重ねているのだと思えば、なんとも哀れじゃないか。そしてこれまた勝手な妄想だが、オトコのほうは既婚者だが、オンナは独身である。なぜなら、染みついた家庭臭というよりも、長年培ってきた独身臭が漂うからだ——わたし自身がそうだから、なにか共通する感覚とでも言おうか——。

 

それに比べてオトコのほうは、性格の良さがにじみ出る笑顔に性欲の強そうな脂ぎった額と薄い頭髪、そして極度な日焼けは家族サービスで海か山へ行った時の名残りだろう。

ちなみに、このオッサンがモテるのには頷ける。カネがあるというより、話が面白いのだろう。おまけに、アウトドアブランドで身を固めているあたりも、変に気取っていなくて好印象。加えて、隣のメス猫よりも明らかに周りが見えている。これはすなわち、「理性を失ってまで盲愛することができない理由が、俺にはある」という表れなのだ。

だからこそ、ゲテモノショーのような"中年不倫カップル白昼堂々のイチャイチャ劇"を見入るわたしに、彼だけは気がついたのである。

 

——それにしても、やはりオンナのほうが性欲が強い生き物なのだろう。性欲というより、本能的に子どもを作る行為としての「欲」なのかもしれないが、公衆の面前でああも堂々と身をよじらせるオバサンというのは、見ていて痛々しい。

やはり男女の逢瀬というのは・・しかも禁断の恋であるならばなおさら、人目を憚るべきなのだと、他人の横恋慕を観察しながら学ぶのであった。

 

Illustrated by 希鳳

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