「イマドキの高校生は、スタバなんだねぇ」
レジに並ぶ制服姿の女子高生たちを見ながら、友人がそう呟いた。
これといって珍しい光景ではないが、我々の高校時代と比べると大きな差がある。
わたしの高校時代における「寄り道の定番」といえば、ミスタードーナツかマクドナルドの二択。
とくに当時のミスドは、コーヒーおかわりし放題のため、一杯のコーヒーとホームカット(最安値のドーナツ)で長時間粘ったものだ。
(そういえばホームカット、最近見ないな・・・)
たまにミスドへ入っても、ホームカットに出会うことがない。一抹の不安を覚えたわたしは、ホームカットの安否について調べてみた。
――懸念は的中。ホームカットはもはや販売されていなかった。
「ホームカット」は、いわゆるオーソドックスなリング状のドーナツで、ケーキタイプのフワフワな生地を揚げたプレーンドーナツ。
さらに当時、値段も100円ほどだったので、高校生の財布事情でも食べられる「最高のおやつ」だった。
そして高校生の後半ともなると、やや背伸びをして大人ぶる時期を迎える。その象徴こそがコーヒーである。
まだまだお子ちゃまの味覚ゆえ、あんな苦くて熱い飲み物、断じて美味いとは思わなかった。
だが、「ブラックコーヒーを飲むわたし、カッコいい!」という、理想のオトナ像を確立するためにも、わざわざコーヒーをおかわりしては大人ぶっていた記憶がよみがえる。
そして当時、ミスドに入り浸っていたわたしが思い出す、夏の思い出といえばこれだ。
「夏期講習代で、人生初となる機械式時計を買ってしまったわたしは、毎日、夏期講習へ行くフリをしてミスドで時間をつぶしていた」
今でこそ笑い話になるが、当時はとてもじゃないが誰にも言えなかった。
そもそも、夏期講習会に参加する目的が「友達と会うため」だったにもかかわらず、高級時計の頭金として全額投入してしまったのだから、予備校の校舎内に侵入することすらかなわない。
そこでわたしは、大学受験をしない女子高の友人を誘っては、朝から夕方までミスドでおしゃべりをして過ごしたのだった。
「店の人さぁ、ぜったい迷惑な客だと思ってるよね、うちらのこと」
生意気な高校生がミスドに入り浸り、分不相応な高級時計をちらつかせながら、一杯のコーヒーを10回おかわりすることで居座る日々。
さらに単なる暇つぶしだけでなく、真夏の暑さまでをも快適に凌ぐべく、ミスドをフル活用。
・・これぞわたしの、高校時代のカフェ事情である。
それに比べて、イマドキの女子高生たちはリッチでスマート。
「ジンジャーブレッドラテのトールサイズ、ミルクを豆乳にしてください。あと、ホイップ追加でお願いします。それと・・・」
こじゃれたカスタマイズを、飄々と伝える制服女子。しかも結構な金額にもかかわらず、躊躇する素振りも見えない。
スタバといえばわたしのオフィス(?)でもある。つまり、大人がくつろぐスペースだと思っていたが、昨今では、子どもも当たり前に利用する場所なのだ。
――ミスドにマック、そしてちょっと豪華なガスト。
この辺りが、高校生のわたしにとって最高にオシャレで贅沢な「会議室」だった。
あれから随分と時が経つ。我らがミスドやマックに加えて、スタバやタリーズといった新進気鋭のカフェこそが、現代の女子高生たちの新たな会議室となった模様。
(ていうか、カネあるよなぁ・・・)
バイトをしているのか、はたまたお小遣いなのか。一杯600円もするドリンクを、臆することなく毎日注文できるとは、羨ましい限りである。
まぁ、夏季講習代を高級腕時計にぶち込んだわたしが言うのも、おかしな話ではあるが・・・。
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