よくよく考えると「確かにそうだな」ということは多い。
だが、なんとなく解決できたことについて、科学的根拠を求められると困る。
とはいえ、とにかくそれで上手くいくのだからしょうがないわけで。
そんな「なんとなく解決できたこと」の一つに「シール剥がし」が挙げられる。シールというより、粘着性の強いベタベタを取り除く方法とでもいおうか。
たとえばテーピングを剥がしたときに、種類によってはやたらとベタベタ跡が皮膚に残ることがある。
最初のうちは爪でカリカリやって取り除こうとしたが、さすがに相手もバカじゃない。8割程度は除去できるが、毎回、汚らしい残骸がまばらにこびりついており、イライラが募る。
そのうち気がついたのは、ハンドクリームだった。じつはこれ、テーピングの残骸のために塗ったのではなく、指が痛くてグーが握れなくなったため、マッサージの意味も込めてハンドクリームを擦り込んでみたのだ。
時間をかけて念入りに指をマッサージしていると、あら不思議。黒くこびりついていた粘着質な残骸が、クリームと一緒に消え去っているではないか。
これは、クリームに含まれる油分が原因なのではないかと思うが、きちんと調べたことはないので断言できない。
だがとにかく、手足に残るテーピングの粘着剤にはハンドクリームがオススメである。マッサージと合わせてダブルの効果が期待できるとあり、やらない手はない。
そして今日、漆喰の壁に「クッション付き強力粘着テープ」を誤って貼ってしまったわたし。
さぁ困った。慌てて剥がすも、クッションのみがポロポロと取れるばかりで、肝心の粘着部分は壁にベタっと貼りついたままである。
急いで爪による剥離を試みるが、取れるのはやはり表面のみで、粘着面はびくともしない。
賃貸マンションゆえに、無駄な痕跡は残したくないわたしは、慌ててネット検索をした。
ドライヤーで温めるといい、マニキュアの除光液を塗るといい、シール剥がしを使うといい。・・・いずれも準備に時間がかかるか、物理的に無理な方法ばかりである。
とそこへ、魅力的な回答が飛び込んできた。
「中性洗剤をぶっかけて、サランラップでフタをして10分待つ」
おぉ、これならば今すぐできる!
わたしは早速、サランラップにJOYを垂らし、壁にこびりついた残骸へと押し当てた。
――そして待つこと10分。
サランラップ越しにカリカリ引っ掻いてみると、固くこびりついていた粘着部分がフニャフニャになっており、いとも簡単に剥がれ落ちたのだ。
これはどんなカラクリかと、再度ネット検索する。どうやら中性洗剤に含まれる界面活性剤が、剥離剤の役割を果たしたらしい。
いわれてみればその通りだ。どんな事象にも理由や原因があり、根拠が存在するもの。それとなく習慣化されている行為も、深堀りすればちゃんとした理由に行きつくのだ。
おまけにもう一つ。先日、我が家の立派なガラスドアが外れた。
重さ30キロ以上はあると思われる、長身のガラスドアにもかかわらず、両面テープをかませた吊り具でぶら下げているだけなので、そりゃ外れるに決まっている。
見栄っ張りなオシャレマンションにありがちな、設計ミスである。
そのガラスドアを何とか取り付けようと、「一人工務店」のような器用な友人を招いて、作業を依頼した。
しかし、これだけの重さの一枚ガラスを上部からちょこんとつまむ程度で持ち上げておくことは、物理的に不可能とのこと。
それは素人のわたしにも分かる。
そこで友人は、そもそもガラスドアが落ちることを想定して、地面にレールを敷いたのだ。最悪、これならば自力で引きずって開閉できるから、と。
そして取り付けから30分ほど経つと、案の定、ガラスドアが落ちはじめた。だがレールのおかげでなんとか開閉はできるものの、やはりかなりのパワーが必要なため、日常生活においては不便でしかない。
ぶつくさ文句を言うわたしを尻目に、友人が何かをレールに垂らした。そしてガラスドアをスライドさせると、なんと、スムーズに動くではないか!
「なにしたの?!」
「潤滑油をくれてみた」
「そんなもの、持ってきてたの?」
「いや。ここにあったから」
そんなはずはない。我が家に潤滑油など置いてないぞ――。
不審に思ったわたしは、友人が使った「潤滑油」とやらを確認しに行った。するとそれは、メイク落としだった。
「パーフェクトオイルって書いてあるから、万能なオイルなんでしょ?」
――ビオレ・パーフェクトオイル。
一周回ってそうかもしれない。現に潤滑油として機能しているのだから。
さらに友人は感心しながらこう言った。
「このオイルいいよね。デフオイルと違って臭いがしない」
なるほど。室内における潤滑油として、メイク落としは優秀なオイルなのだということを学んだ。
潤滑油といえば、CRCスプレー!などとこだわっているうちは、まだまだ半人前。そこにあるもので代用できてこそ、本物の職人を名乗ることができるのだ。
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